第74回 (2009年05月) 「国境を越えて・・・」

  

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こんにちは! 柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。新緑が鮮やかな季節となりましたが、皆様はいかがお過ごしでしょうか? 私は4月は、中国は内モンゴルから来たSちゃんを連れて、久しぶりに芦屋までお花見に行ってきました。Sちゃんが「日本ノ桜、トテモ有名。デモマダ見タコトガナイ!」と言うので・・・。芦屋の桜と言えば、阪急芦屋川から南側の川沿いが有名ですが、実は南側より北側の方が綺麗なんですよね~。人も少ないし、穴場なのです。Sちゃんは初めて桜並木を見て大はしゃぎ。「ワ~、トテモ綺麗!! 写真イッパイ撮って、オ母サンニ送リマス!」と写真を撮りまくっています。芦屋川の北側は、川沿いに大きなお屋敷が並んでいます。Sちゃんはそれにも驚いたようで、「スゴク綺麗ナオ家!ココノ家ノ人ハ、毎年桜見レル! コンナ家ニ住ミタ~イ!! ・・・私ノ目標!!」と一人でうなずくのでした。桜を見ながら南へ下り、お目当ての小さなイタリアンレストランへ。実は私は震災まで芦屋に住んでいたので、その頃にちょくちょく行っていたお店です。先日10年ぶりに行きましたが、料理の味はほぼ変わらず、美味しくてCP良し! だったので、お花見がてらにSちゃんも連れて行ったという訳です。蛍烏賊のサラダや桜海老のパスタに、「美味シイ!!」とSちゃんは大喜び。しかしご機嫌でワインをお代わりしていたら、「先生ノ好キナノハ桜ジャナクテ、オ店!?」とSちゃんに見抜かれてしまいました。

 

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さて、春といえば学会シーズン到来です。毎年春から秋までは毎月のように学会があり、先月も横浜で開催された形成外科学会に参加してきました。横浜に住むいとこと久しぶりに食事でもしようかと思って電話すると、「横浜ってたいしたお店ないのよね~。東京まで行く?」と言うので、それなら・・・とグルメを優先して(?)東京に泊まったのが失敗の元。横浜と東京って、近そうに思えるのですが結構遠かった。しかも3日目は朝早くにセミナーがあったため前日横浜に移動したので余計大変。やっぱり学会の時はグルメに走ってはいけない・・・と反省したのでした。(と言いつつも毎回走ってしまうのが現状ではあるが。)
 

学会会場ではPRP友達のM先生と会って、久しぶりにPRP談議に花が咲きました。今までは、PRP作製中に血小板を壊れないようにするというのが通説でしたが、血小板は成長因子を作っているのではなくて取り込んでいるだけだということが解ってきたので、PRPの作製過程で血小板が壊れても、成長因子はPRP中に放出されるので良いのではないか・・・という話になってきました。そうなると今まで遠心分離の際にあまり回転数を上げると血小板の膜が壊れないか心配だったのが、回転数を上げられるので血小板濃度さえ維持できれば作製時間を短くできるかもしれません。M先生はまた、赤血球の入りにくいPRP用の採血管の開発を手がけておられました。M先生が以前使われていたPRP用のキットの採血管はPRPに赤血球が入りやすく、注入時に青タンができてしまうから・・・ということです。時々他院でPRPを注入して2週間ほど青タンが消えずに困ったという話を聞きますが、それはPRPに赤血球が入りすぎるからだと思います。PRPに赤血球が入りやすいかどうかはPRPの作製方法によりますが、現在の柴田式の作製方法だと赤血球はほとんど入らないので青タンはできません。そのためダウンタイムが短く、また赤血球が入らない方が注入後の痛みも少なく効果も良いようです。

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また、最近はFGF(線維芽細胞増殖因子)をPRPに混ぜて使う事をマニュアル化した市販のPRP作製用キットが出回っていますが、これには私もM先生も反対です。そもそもPRPは自分の血小板を使うから安全だという価値があるのに、薬品であるFGFを混ぜるとその価値がなくなってしまいますし、FGFを入れ過ぎて何ヶ月も注入部が盛り上がったままになるという問題があちこちで起こっているからです。うちに来られた患者様からも「友達がFGF入りのPRPを打たれて、打ったところが盛り上がった」という話も聞きましたし、M先生のクリニックにも他院でそうなって「何とかして欲しい」という患者様が時々来られているそうです。FGFは確かに良く効く薬なのですが、こういう薬品を使う時は、濃度や量には非常に慎重にならなければいけません。うちでもメソカクテルやエセリスカクテル、メソリフトの薬剤にごく微量のFGFを添加していますが、これは何回もテストを重ねて安全性を確認した量しか使っていません。ですから始めてから約3年、延べ1000人近くの方に使いましたがFGFによる副作用は1例もありません。ところが他院でFGFを添加したPRPで注入部位が膨らんだ例を追及してみると、うちでメソカクテルに使う量の10倍から50倍、もしくはそれ以上入れたところもあるようです。ただでさえ血小板は多量の成長因子を放出するのに、それに多量のFGFを添加するのは非常に危険です。逆にFGF単独使用の発表もあり、それだとうちの10倍の濃度でも副作用は起きていないようで、やはりPRPに添加すると過剰になるようです。実は私もPRPにごく微量のFGFを添加して自分で試してみたことがあるのですが、ごく微量でも2週間ほど注入部が膨らみました。これがこの10倍以上のFGFを添加するとどうなるか・・・。なんとかこの危険性を回避するよう皆に呼びかけ、安全なはずのPRPで副作用が出るような事態を防ぎたいものだ・・・とM先生と話し合いました。

 

さて今回の学会では、「イデバエ」というたるみを取る新しい注射の情報を仕入れました。「イデバエ」とは「イデベノン」という強力な抗酸化物質と「DMAE」というアセチルコリンの前駆物質を主成分とした注射で、イタリアで開発されたものだそうです。アセチルコリンという物質は、神経から筋肉に向かって放出されて筋肉を収縮させる物質です。皆様お馴染みのボトックスは、神経からのアセチルコリンの放出を妨げて筋肉を動かしにくくし、筋肉が収縮してできる表情ジワを改善する薬剤ですから、イデバエはボトックスと逆の働きをする訳ですね。「逆に働くのにどうして両方共若返りに効くの??」と思われるかもしれませんが、ボトックスは筋肉の収縮を緩めて表情ジワを改善する薬で、DMAEは筋肉の緊張を高めてたるみを改善する薬・・・と言えば解り易いかも知れません。DMAEは、シワ治療にαリポ酸を推奨した米国の皮膚科医ぺリコーン博士の著書「リンクルキュア」(2002年発行)で「瞬時にたるみを引き締めてくれるローション」の成分として紹介されており、臨床試験で塗って30分でたるみが改善され、24時間持続したとあったので、開業当時にそれを読んでDMAEを探したことがありました。しかし当時はどこを探しても全く手に入らず、諦めてしまったのですが、それが注射薬として手に入るようになったとは嬉しい限りです。

そして「イデベノン」というのはコエンザイムQ10の3倍以上の抗酸化力を持つ、コエンザイムQ10から合成された物質です。「世界で一番強力な抗酸化物質」とメーカーは謳っており、注射薬ではイデバエのみ、化粧品ではプリベージという日本未発売の物にしか含まれていないそうです。しかし面白いのは、イデベノンを開発したのは日本のT薬品で、その昔「Aバン」という名前で販売されていた薬だったのです。Aバンって、知ってる知ってる。私も勤務医時代に処方したことがある脳循環・代謝改善薬です。ボケ防止薬・・・とでも言うのでしょうか。再評価で効果が認められなかったとのことで1998年に医薬品の承認を取り消されてしまったのですが、2007年にまた筋ジストロフィーという筋肉が壊れていく病気に効果があると再認識されて欧州向けに販売されているそうです。イデベノンはコエンザイムQ10よりも強力に細胞のエネルギー産生を増やし、特に脳や心臓・筋肉の細胞を活性化して老化を防止するとのことで最近海外ではサプリメントも出ているようですが、筋ジストロフィーに効くということは本当に効果があるのかもしれません。(T薬品に働きかければ日本でも手に入るようになるかも??)

 

 

「イデバエ」は2007年に発売されたそうで、移転前に新しい治療を検索していた時に見かけて一時調べようとしたのですが、移転のバタバタでそのままになっていました。ところが最近M先生が移られたクリニックで始めるという事だったので学会の少し前からその効果などを聞いていたのです。最初はM先生も「まだよく解らない」という事だったのですが、学会場では「あれはいいよ! 先生もしてみたら?」とのこと。真面目で研究熱心なM先生のお勧めなら・・・と、早速資料を取り寄せました。ガチミシュランじゃないけど、お店も治療も誰が勧めるかによって信用できるかどうかが決まると思うのです。新しいものなら何でも飛びつく・・・というのではなく、慎重に検討して本当に良いものを見極める目を持った人が勧めるものは信用できると思ったのです。資料を取り寄せていろいろ調べると、成分は良さそうなのですが、難点はすごく痛いらしい・・・という事。M先生も「痛いんですよね」と言われてましたし、自分で注射した女医さんのブログでも「痛いのなんのって!」とあります。それと、薬剤が高価なこと。同じような成分の原料は手に入らないかな・・・といろいろ探していると、全く同じと思われる写真の薬剤が、正規輸入代理店の半額で売っていました。しかしサイトがめちゃ怪しそう・・・。ブレインK氏が以前「海外では時々日本では考えられない事が起こりますからねえ。プラセンタなんかも、そっくりのばちもんが出回ってますから・・・」と言われていたのを思い出し、やはり正規の輸入代理店から薬剤を取り寄せました。痛みについては、PH(酸性度)が低いのか?と思ってPHを測ってみたら6と少し低めです。PHを上げる薬剤を混合しても効果に差はないのか、麻酔薬を混合したらどうなのか・・・など、いつもの如く輸入代理店に質問を浴びせると、麻酔薬の混合は1%までOKとのこと。「PHについてはメーカーに問い合わせてみますが、イタリアの会社って結構いい加減というか大雑把で、『効けばいいじゃん』ってな感じで詳しい理論とか説明してくれない事が多いんですよね・・・」と担当者君。まあ、お国柄なんでしょうけど、なんだかちょっと心配になってきました。(そう言えば昔イタリアを旅行した時、電車が3時間遅れるなんてことはザラでした・・・。)

 

 しかしせっかく薬剤を取り寄せたので、試してみることにしました。麻酔を貼ってから、「痛いかなあ・・・」とビビりながら打ちましたが、皮膚をつまんで打つとそれほどでもありません。注射の麻酔薬を混ぜて打ってみましたがそう変わらず、麻酔薬なしでも大丈夫でした。これで最大の難関はクリア! しかし術後のダウンタイムは・・・イデバエをメニューにしている東京のクリニックでは、「術後のダウンタイムが全くなく、すぐにメイクもできるのでランチタイムにできる!」と謳っている所もありましたが、私は左頬に20箇所打って2個所ほど少し内出血し、若干の腫れと赤みが所々出ました。カクテル注射やメソリフト・PRPと比べると全然たいしたことはなく、2時間ほどでだいぶ引いてきましたが、「ダウンタイムが全くなく、誰にも気付かれない」というのは言い過ぎだと思います。それに注射の後にメイクをするのはお肌の健康上、論外です。
表皮には外界から細菌や異物の進入を防いで生体を守るというバリア機能がありますが、表皮の厚さは平均わずか0.2mmなので、それを超えた深さまで針を刺した場合はバリア機能が失われて細菌や異物が進入する可能性があるということなのです。皮膚に30Gの太さの針を刺した場合、傷がふさがるには4時間はかかると言われていますので、当院ではメソリフトやPRPの後は感染を予防するために4時間は針を刺した部分は触らないようにしていただいています。32Gの太さの針(30Gより細い)だと3時間触らないようにしていただいて、どちらもメイクは翌日にしていただきます。先日の学会でも、「メイクのパフは汚れていて多量の細菌が繁殖していることが多いので、注射後のメイクは避けるべき」と言われていましたが全く同感です。お肌を良くするための治療なのですから、その後メイクを針穴に塗りこんでいては何をしているのか解りません。雑菌が入って顔が腫れ上がってしまうこともあるのですから。・・・と話がそれてしまいましたが、肝腎の効果は・・・う~ん、良く判らん。「瞬時に引き締まる・・・」とまではいきません。腫れてるから当たり前か。打つ場所が浅すぎたのかな?期待しすぎたのか、ちょっとがっかり。まあ、週1回で4回続けるというのがプロトコールなので、1回で引き締まるのは無理なんでしょうけど。

 

学会から戻った時、「学会で新しい注射の情報仕入れたよ!」と報告するとSちゃんもパスツールK君も興味津々。試し打ちの日は術前の写真を撮ったり麻酔を貼ったりイデバエのPHを測ったり、いろいろと手伝ってくれました。注入方法などの説明用DVDも一緒に見たり・・・。メソセラピーの他の注射も一緒に載ったDVDだったので、途中からSちゃんの興味はお腹の脂肪を減らす注射に向けられていましたが・・・。でもSちゃんは患者様が綺麗になっていくのを見るのがいつもとても嬉しそうで、ダイエットだけではなくお肌のことにも興味はすごくある様子。やはり美を追求する気持ちに国境はないようです。

 

さて、そんなSちゃんに、新しい仲間ができました。まず、青島ビールで有名な山東省から来たK君です。パスツールK君と区別するために、ここでは青島K君と呼ばせてもらいましょう。人手不足のため、Sちゃんを紹介してくれたRさんに「もう一人くらいバイトに来てくれる子いない?」と聞くと、「男の子でも大丈夫ですか? 私のいとこが最近神戸に来たので、聞いてみます」と言ってくれました。話を聞けば中国の医学部を出て、福岡にある日本語学校で1年日本語を勉強してから神戸に来たのだとか。1年日本にいたのならSちゃんくらいは日本語ができるはず。早速面接に来てもらったのですが・・・あれ?? 日本語が全然通じない!! 面接もほとんどSちゃんが通訳です。困ったな。しかしその時期は超人手不足だったため、取り合えず来てもらってSちゃんに通訳してもらう事に。青島K君はとてもおとなしくてシャイな感じ。今流行の「草食系男子」といった雰囲気です。肉食系のSちゃんとは正反対。Sちゃんより3つも年上なのに、Sちゃんにいろいろ言われて「ハイ、ハイ」(実際には中国語)と言うこと聞いてる様子はSちゃんの弟みたいです。Sちゃんの指導はなかなか厳しそうで、中国語なんで良く解らないんですが、「何回おんなじこと言わすの??」というような雰囲気をかもし出していて、パスツールK君もハラハラ。ところがSちゃんはそんなつもりは全然ないようで、「K君、Sちゃんのこと恐いって思ってるんちゃう?」と言うと「エー?? ナンデデスカー??」

 

そんなSちゃんの厳しい(?)指導のおかげか、医学部で実習していたこともあって青島K君は、点滴介助や消毒はすぐに出来るようになりました。しかしシャイで自分からあまり話さないせいか、日本語がなかなかうまくなりません。Sちゃんの通訳によると、「福岡ト神戸ハ日本語全然違ウ!」らしい。そらそうか。私の大阪弁があかんのかな・・・。しかしこの1ヶ月で青島K君が自分から話した日本語は、私が山東省のことをいろいろ聞いた時、すごく考えてから「・・・山東省デ一番有名ナノハ・・・青島ビール・・・」と蚊の鳴くような声で言ったことのみ。(それで青島K君と呼ばれる羽目に。)パスツールK君が体調を崩して休んだ日などは、Sちゃんが学校へ行っている間、青島K君と私だけになってしまい、青島K君が言える日本語は「失礼いたします」だけだったので、受付も会計も案内も全部私がする羽目に・・・。初めてカードも切りました。
 

疲れ果ててRさんに「もうちょっと日本語できる子いないかなあ?」と泣きつくと、「すみません。私もK君があまりにも日本語できないのにびっくりしたんですよ・・・」と、今度は日本に3年いて、日本語ペラペラのNさんを紹介してくれました。Nさんは中国の医学部に通っていたのですが物足りなくなって途中で日本に来てしまったのだとか。もちろん、すぐに採用です。Nさんの志望動機は、「Rさんがあそこの先生は優しいから行ってみて、と言ってたから」・・・面接での優等生の回答ではありませんが、とても正直な感じがしました。しかし私は恐いとはよく言われますが、優しいと言われることはあまりないので、次にRさんに会った時に「Rさんとはそんなに会わないのになんで優しいって思ったの?」と聞いてみました。すると「SちゃんやK君からいつも話聞いてますから」「え、そう? Sちゃん、いつも『センセー、厳シイナ~』って言ってるんじゃない?」「そりゃあ、仕事の時は厳しくて当たり前ですよ。でも、仕事終わったら優しいって言ってますよ」・・・「仕事の時は厳しくて当たり前」なんて、最近日本の若者からはなかなか聞けない言葉なので、ちょっと嬉しくなってしまいました。

また、ちょうどその頃、友人の知り合いの鍼灸学校の先生がクリニックに来られる機会があったので、併設の日本語学校に留学生の募集を頼んだら、すぐに紹介がありました。韓国から来たB君で、これまた日本語ペラペラ。Sちゃんの苦手な敬語まで完璧です。韓国語って日本語に一番似ていて、敬語や丁寧語もあるらしいですが・・・。それにしても去年の7月に日本に来たばかりなのに、今年の1月に日本語検定1級を取ったとか。今年の6月には神戸大学を受験する予定という優秀な学生です。韓国の大学はIT学部コンピューター学科、パソコンはめちゃくちゃ得意そう。「診療補助とか、ITと全然関係ない仕事も多いけど大丈夫?」と聞くと、「前向きに学びたいです」と高度な日本語の回答が返ってきてびっくり。日本人の面接よりできてるで、こりゃ・・・。ということで、こちらも採用です。

 

そんなこんなで、一気に留学生が4人になり、3人が中国人なので研究室では中国語が飛び交う国際的な職場になってしまいました。中国人向けのサイトでも作ろうかな。皆、名前が難しいので名札も作りました。

 

しかし、日本語ペラペラの2人が入って来て、Sちゃんはちょっとあせっているようです。「そやけどあせらなあかんのは君やで、青島K君。早よ日本語できるようにならな、いらんようになるで・・・」と言っていたのですが、青島K君は思わぬところで実力発揮。今まで良く解らなかったPRPが、Nさんの通訳のおかげで解るようになり、がぜん興味が湧いてきたらしく、パスツールK君のように血小板を数えたい、と言い出しました。後進ができたパスツールK君は大喜び。いろいろと丁寧に教えています。そうすると今度は土日は他のバイトをしていてすぐには辞められないと言っていたB君が、「来週から土日も来れます。もう辞めると言ってきました」「え? 1ヶ月は辞められへんって言ってたんちゃうの?」「僕だけ遅れてるんで、頑張りたくなって・・・」とやる気満々。いい人材にも国境はないようです。

 

さて、イデバエを注射してがっかりした翌日。朝シャワーを浴びると、あれ? 左の頬がツルツルです。韓国で初めてメソリフトをした後みたい。少なくともお肌には良いようです。クリニックに出勤すると、皆が「どうですか!?」と寄ってきます。さすがに皆興味津々なんですね。「あ、左がちょっと上がってる・・・!」と言われ、Sちゃんに「効果出てる?」と聞くと「ウン、ウン、ウン・・・」と5回くらいうなずいています。Sちゃんはいつも朝私の顔を見ると体調が判るらしいのですが、「今日ハチョト違ウ、ト思ッタ!」写真を撮って比べると、左が少しリフトアップして口角のたるみが少し改善し、法令線も若干浅くなっています。打つ深さやデザインなど研究すべき点はいろいろありますが、これは続けてみる価値はありそうです。イタリアらしい大雑把なものかも・・・と少し心配しましたが、やはり本当に良いものは国は関係なく良いのかも知れません。

 

イタリアと言えば面白い話を知人から聞いた事があります。その知人はプロのミュージシャンなのですが、一昔前にシンセサイザーが流行ったころにイタリアでナンバーワンと言われている楽器(シンセサイザー)を取り寄せた事があります。当時にあっては目玉が飛び出るほど高価な機械だったとの事です。船便で待つ事1ヶ月。ようやく届いた楽器に狂喜乱舞の気持ちで電源を入れて弾いてみます。ところが・・・72の鍵盤のうち低音域の16鍵盤の音がでません。もちろん、イタリアのメーカーにクレームの電話をいれます。当時はEメールなどもないし、お互いにつたない英語でやり取りが始まります。その時の彼らの反応が凄くイタリアらしいのです。「もちろん返品してもらえば交換はしますが、2ヶ月以上かかるし送料も大変なので、16鍵以外のところが使えるのだったら、とりあえずそこだけ使っておいたらどうですか? それでもやっぱり気に入らないと思えば返品してください。」

 まぁ・・・日本では考えられない回答です。さすがにこの回答にはこのミュージシャン氏もあきれて一旦引き下がったそうです。ただ、最終的には驚きの結末になります。結局、彼はこの楽器を返品したのか・・・という事ですが、答えはNOです。彼曰く「そりゃ最初は頭に来ましたよ。でもね・・・使える56鍵の音色の美しさといったらそりゃ・・・すばらしいんですよ。もう感激なんです。日本の製品だったら音が鳴らないというようなものはないです。製品管理と言う意味では世界一です。でも、僕は日本の楽器でこんな感動を覚えた事はないんです。このイタリアの楽器はポンコツかもしれないけど、人を感動させる魂があるように思います。シンセサイザーって機械と思っていたんですが、そうじゃない。やっぱり楽器なんだ・・・って初めて思いました。すばらしい楽器なんで返品はできません。だって、返品して次に来た楽器がこれほど感動する音が出るって保証がないじゃないですか。彼らはシンセサイザーって言っても一台ずつ職人が手作りしているんですよ。だから良い職人の作品でなければこんなに感動する音に出会う事はないはずです。これは日本とイタリアの文化の違いを見せつけられた思いですね・・・残念ながら大人と子供ほどレベルが違います・・・」

文化って奥が深いんですね。海外製品だからいいとか、悪いとかじゃないんですね。どこの国にも根強い文化があり、得意不得意があるので、得意なものは遙かに日本より優れているし、日本も得意な分野では圧倒的に強みがあるんだなと思いました。重要な事は自分の目で見て確かめて自分達より優れているものはドンドン取り込み、そうでないものは排除するという事なんだと思っています。治療も人員も国にこだわらず、本当に良いものを取り入れて、これからも研究に励んで行こうと思っておりますので、皆様宜しくお願い致します。