第73回 (2009年04月) 「ガチミシュラン検証記」

  

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こんにちは! 柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。暖かくなったり寒くなったりですが、皆様はいかがお過ごしでしょうか? 3月と言えばホワイトデーがありましたが、こちらはバレンタインほど盛んではありませんよね。バレンタインにチョコをたくさん配っても返ってくるのはわずかだったりして、損した気分になる方もおられるのではないでしょうか? 私もたいていその部類なので、ホワイトデーこそお菓子屋さんの陰謀を頑張って欲しい・・・なんて考えてしまいます。日本の男性は多くの人が仕事で忙しいので、ホワイトデーなんて忘れてしまうんでしょうね。バレンタインのチョコはお返しを期待してあげるわけではないのですが、やっぱり少しでもお返しがあると嬉しいものです。ごく稀に優しい男性もいて、きちんとお返しをくださったりしますが、稀に贈ったものよりはるかに豪華なお返しをいただいて恐縮してしまう事もあります。かなり昔ですが、後輩と一緒に後輩の科の部長先生にチョコを贈ったら、ホワイトデーにフグ料理をご馳走してくださったことがありました。2人にフグを奢るなんて結構な額ですから申し訳なく思いましたが、あの頃は私達もまだ若かったので、部長先生もチョコをだいぶ喜んでくださったのかもしれません。最近ではクリニック通信でもよく登場していただいているK王のKさんです。いつも研究面でお世話になっているのでチョコを贈ったら、たいしたチョコを贈った訳ではではなかったのに、ホワイトデーに東京は白金台の有名なパティスリーのケーキをたくさん贈ってくださいました。恐縮しつつも喜んでクリニックの皆でいただいたのですが、おそらく東京のセレブなパティスリーのケーキなどは口にした事がないであろうのび太君を初め、みんな「美味しいですねえ・・・ 」と唸っていました。

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さて、東京と言えばクリニック通信を読み込んでいる皆様にはお馴染みの、東京のグルメリアK氏。(K氏については詳しくはクリニック通信第 21・22・33回をご覧ください。)甘いものは苦手でワインは3000本もお家のワイン庫にストックされているので、バレンタインにはいつも何を贈るか迷うのですが、今年は迷わず贈ったものがあります。それは・・・クリニック通信第69回で紹介したグルメ本、「ガチミシュラン」。「ミシュラン東京」の星付きレストランを著者が自腹で食べ歩いて検証したという辛口評価本です。これはK氏の好みにバッチリはまったようで、先日電話したらもう3回も熟読したと言われていました。しかしガチミシュランにはK氏が2006年の「鮨対決」の際に連れて行ってくださった「Sだ」も載っていて、「昔はずば抜けていたタネ質が他店のレベル向上で今は凡庸に。再訪する度に感激は薄れ、満足感は減り、逆に支払額は増え続ける鮨屋であります」と結構ボロクソに書かれていたので、K氏は「でも難しいよねえ。Sだなんかも、最初すごく良くても常に向上し続けるっていうのは大変だよね」とかばいつつも、それだけ辛口評価のガチミシュランで褒めている店にはK氏も興味津々の様子。折しも東京で学会があり、「それならガチミシュラン検証ツアーを組もう!」と話はトントン拍子に進んだ訳であります。K氏は仕事(他の飲み会?)のため、3日間ある学会の1日しか合流できないとのことだったので、ミシュラン東京が発売された頃に「ミシュラン検証本を発行しよう」なんて妄想をいだいていたグルメ友達NとMがちょうどその時期東京出張が重なった(重ねた?)こともあり、両者も参加してのグルメツアーとなりました。もちろんNとMはガチミシュランも熟読しています。

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当日、クリニックの午前診終了後、大慌てで新幹線に乗り込むと、後ろの座席にはなんとミシュラン捜査員かと思われるようなフランス人男性の2人連れが・・・(考えすぎ?)。NとMは東京で仕事があるので、私が泊まるホテルのサロンで待ち合わせです。ホテルをネットで申し込むとサロンのシャンパン飲み放題が付いていたので、NとMの仕事が済むまで・・・とつい一杯(正確には2 杯)飲んでしまったのが失敗のもと。NとMが到着時にも「シャンパン飲み放題なら1杯」というのに付き合ったので合計3杯。朝から何も食べていなかったので、結構まわってしまいました。
1件目のガチミシュラン検証店は、ミシュランでは星なしだが、ガチミシュランでは「東京で最もCPの良い和食店」として挙げられていた「Iそくた」。ガチミシュランの記載には「締めに肉の焼き物まで食べて、フルコースに酒類を入れても1万円以下でおさまるとは、何かの間違いかと思ったほどです」とあります。店に入ると、雰囲気はちょっとこましな居酒屋風のカウンターです。付出しから肉のたたき、お刺身などが少しずつ、次々と出てきますが、さすがガチミシュラン推奨店、どれもこれもがうまい!! おまかせ1本なので選ぶ楽しみはありませんが、任せておけば旨いものが食べられる典型的なお店。「これはうまい、うまい」とNもMもご機嫌です。たくさんの種類のあての後、スープや炊き合わせなども出て、もう終わりだろうと思っていたら、「肉の焼き物とかきフライとどちらにします?」と聞かれてびっくり。「両方でもいいですよ」と言われて「じゃあ、少しずつ・・・」とお願いすると山盛りの盛り合わせが。お腹いっぱいになったのとサロンのシャンパンが効きすぎてフラフラになり、ガチミシュラン検証の検討会は当日はできずじまいでしたが、次回東京に来たらぜひ再訪したいお店でした。

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2日目はK氏の登場と共に、グレードアップして銀座のお鮨屋さん「H空」へ。あの世界一時間単価の高い「Sばし次郎」から独立し、「次郎」の数少ない良い点を残した良店だとか。ミシュランでは一つ星、ガチミシュランでは二つ星です。
「まあ先生、お久しぶりです!」K氏は相変わらずお元気です。K氏と久しぶりに盛り上がりつつ銀座の一角にある小さな鮨屋へ・・・。ガチミシュランによると、「3つ星鮨屋『Sばし次郎』で12年修行したにもかかわらず、『次郎』の高飛車な営業を捨ててわずかな良い点だけを継承したこの店は、数ある銀座鮨屋の中でもお勧めの一店」とあります。超辛口ガチミシュランの著者がここまで褒めるのなら行かないわけにはいかない・・・と、K氏とも面識のあるMも同席の予定だったのですが、仕事が長引いてなかなか到着しません。先にK氏とあてをつまみ始めましたが、お刺身から始まって蛍烏賊を叩いたもの、子持ちのイカ、カラスミなど珍しくて美味しいあて(東京では「あて」とは言わず「つまみ」って言うんですね)が次々出てきます。K氏得意のシャンパーニュまであけてしまって二人ともMが来るまでにすっかり出来上がってしまいました。K氏はいい気分になり、次の予約まで入れています。
K氏:「まあ、美味しい。なんて幸せなんでしょう。もう次の予約入れちゃおっと。
    大将、この子持ちのイカはいつまでございますか?」
大将:「それは3月いっぱいくらいですねえ」
え?大将? カウンターの二人のうち、若い方に見えたお兄さんが答えています。「えらい若いお兄さんが握ってるなあ」と思ってたんですが、実はその人が「H空」さんだったのです。
K氏:「じゃあ、3月31日に予約をお願いします」
大将:「ありがとうございます!」

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確かに全然威圧感のない、感じのいい大将です。Mが来る握りに移るのを待ってくれていたK氏ですが、Mがあまりに遅いのでお酒も回って待ちきれなくなってきました。「もう握りにいっちゃいましょうか」と言い出した頃になんと2時間遅れでNが到着。

M :「す、すいませーん!! 打ち合わせが長引いてしまって・・・」
K氏:「もう、遅いんだから! 完全にできあがってしまいましたよ。
    つまみがすごく美味しかったけど、君にはあげなーい! 大将、この人に
    はつまみは出さなくていいからね。子持ちのイカは美味しかったね~。
    でもあげなーい」

K氏はいたずらっ子のようにMをいじめにかかります。(でも優しいK氏は後でこっそり一番おいしいつまみは出してあげてね・・・って大将に頼んでいました。)そしてお鮨に移ると、すごく美味しいのですがNやのお鮨の方がちょっと好きかも? ネタはめちゃくちゃ良くてNやにも勝るのですが、シャリが東京風で少し硬め。酢もしっかりめな感じです。
柴田:「大将、酢は何を使われてるんですか?」
大将:「○菊っていう米酢です」(○菊というのは鮨業界でのトップブランドらしい。)
柴田:「赤酢は使われないんですか? 江戸前鮨って赤酢から始まったんでしょう?」
大将:「赤酢はちょっと癖があるんですよね。うちは江戸前にこだわらず、美味しけりゃいいって
    思ってますんで」

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赤酢というのは酒粕を原料に3年以上熟成させて造るもので、香りやうま味とコクが強く、鮨のシャリに合う酢と言われています。その赤味は酒粕に含まれるアミノ酸と糖分が反応してできた色で、その色が赤酢特有の甘味と旨味を示すらしい。200年程前にミツカンの中野又座衛門が酒粕を原料とした赤酢を発明し、それが江戸に流通し鮨に使われるようになったのが江戸前鮨の始まりだそうです。
そう言えば美容の世界でも昔からあったのがピーリングやプエラリアミリフィカです。ピーリングはクレオパトラが乳酸のお風呂に入ってお肌をツルツルにしたと言いますから、2000年の昔からあったことになります。プエラリアミリフィカもタイで2000年前から美肌や若返りに使われていたそうです。やはり昔から人間の生活の知恵と言うのは侮れないですね。

そんなことを考えながら、シャリは関西風の方が好みだけど、これはこれで美味しいや・・・とお鮨をつまんで、K氏のMいじめを楽しみながら夜は更けてゆきました。そしてK氏は「バレンタインのお礼に・・・」と、この高級鮨屋でご馳走してくださったのです。その昔、部長先生にご馳走してもらったフグ以来の、何十年ぶりかの豪華なお返しでした。まあ、K氏は東京で会った時はいつもご馳走してくださるのですが、「バレンタインのお礼」と言われると何か特別な感じがして嬉しいですよね。ああ、バレンタインにガチミシュランを贈って良かった・・・! と改めて思ってしまいました。

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さて3日目です。こう美食が続くとウェイトオーバーが気になり、帰ったらダイエットに励まなきゃ・・・と思いつつ3件目のガチ店へ。3件目はミシュランでは星なしだが、ガチミシュランでは星2つのイタリアン、「トラットリア・Tルナヴェント」です。K氏が一番行きたがってたお店ですが、K氏と会う日は予約が取れなかったので、我々がK氏の代わりに(?)行くことになりました。「T ルナヴェント」は北イタリア・ピエモンテ州の料理とワインが中心だとか。黒板メニューから、旬のホワイトアスパラの炭火焼や野菜のムース、パスタとシェフのスペシャリテという’パニッシャ’(赤ワインで作る野菜リゾット)を頼みました。北イタリア地方ではリゾットがよく食べられるそうです。メインは羊ときじのロースト、牛ほほ肉のバローロ煮込みを。しかし、運ばれてきた前菜を見てびっくり! ホワイトアスパラは直径3cmはある太いのがごろごろと。「ありゃ・・・食べきれるかな?」一皿で結構おなかいっぱいに。スペシャリテのリゾットは美味しかったのですが、メインがすごい量で食べきれず、残念・・・。でもグラスワインがすごく美味しく、神戸ではそんな店はあまりないのでちょっと感激。「しかし・・・ガチミシュランの著者は相当な大食漢だねえ・・・」その量の多さには3人とも参ってしまい、店の好みはいろいろあるということが解りました。

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神戸に帰ってしばしダイエットに励んでから、NとMと集まってツアー後の検討会を開きました。検討会の場所はクリニック通信第37回「平成お好み談義」に登場したお好み焼きの店、「A」。クリニックを移転してからバタバタで久しく行ってなかったので、超久しぶりです。ガラガラと引き戸を開けると、「あら! 久しぶりやねえ!!」お母さんと娘さんは健在でした。お店は相変わらずの賑わいです。「いっぱいですか?」「いやいや、もうそろそろ空くと思いますよー!」と客をせかすトークも健在。ほどなく席が空くと、大忙しのお母さんと娘さんを助けて横のお客さんがテーブルを拭いています。この風景も懐かしい。そうして小エビやホルモンの鉄板焼き、お好みとビールでグルメ談議が始まりました。「やっぱりAはいいねえ・・・」と言いながら・・・。?

まず話題になったのは、星の付け方です。「ガチミシュラン」では三つ星は「 CPに関係なくそのジャンルの最高レベルの料理が体験できる店」となっていますが・・・(あ・・・CPとはコストパフォーマンスの事です・・・(^.^))

M:「う~ん、やっぱり関西人にとってCPははずせない気がしない?特に大阪人なんて『安く買った』ことを
  自慢する人種でしょ?根本的に見栄張りの多い東京人と価値観が違うんだなあ。」
N:「そうそう。 CPが良くて美味しいっていうのが値打ちあるねん」
これには全く同感です。しかしそれだと「H空」はちょっと不利な感じ・・・。
N: 「そやけど、『居心地がいい店』っていうのもちょっとは点数に入れへん? 」
柴田:「うん!Bみたいに料理は美味しくてもいけすかんソムリエやったら行く気せえへんもん」
(そういう店があるんですよね~。料理は美味しいのにワインが美味しくなく、その上一緒に行った人全員が「ソムリエがいけすかん!」と言った店が・・・。自分の主張ばかりでお客様に喜んでもらおうという気が全く感じられないのです。そしてそこはそいつが店主なんで救いようがない。)

M:「居心地が良いかどうかっていうのは、店の内装とか雰囲気じゃなくて、店主の心意気や姿勢
   に左右されるよね。まあ人の好みもあるけど、店主が常に向上を目指していて客の方を
   向いていれば自然と居心地は良くなるもんだよね」

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そうなると「H空」は点数アップです。カウンターで交わした大将との会話を思い出すと・・・
柴田:「大将は若いのに、銀座で高い評価を受けてるのってすごいですね。
    何か日頃から心がけてることってありますか?」
大将:「ありがとうございます! そうですね、やっぱ鮨ってのはいい素材ありき
    なんで、毎日市場へ自分で行って、一番良い素材を入れようと思って
    探しますね。それに手をかけすぎず、いい魚と一番合うものを合わせる
    ようにしています。締めたりする時も魚によって合う塩の量なども変わる
    ので、いちいち変えてますね。昔の江戸前仕事にこだわらず、一番美味
    しいものを出せるように、新しい事もどんどんしていこうと心がけてます」

M:「最近は市場へ自分で行かない鮨屋の店主も多いけど、美味しい店は絶対大将が自分で市場に
   行っていい魚を仕入れてくるよね。Nやもそうでしょ? やっぱり手間暇を惜しまず仕事に
   賭ける情熱が大事なんだよね」

そういう話で盛り上がっていると、「A」のお母さんが「そうそう、ニッシー昨日も来たよ!」
ニッシーというのは、「A」の常連のおじさんで、お母さんと娘さんにいつもいじられている人です。(詳しくは通信第37回「平成お好み談義」をご覧ください。)
お母さん:「ニッシー来たらまた笑ろたって! ほんでまた新聞(クリニック通信のこと)に
      載せたってな!」

この店もH空とは全然違うけど、味はピカ一の上に居心地がいい。下町の店だけど、お母さんと娘さんの人柄でしょうか。だからニッシーもぼろくそ言われても毎日来るんでしょうね。そしてニッシーを可愛がる(?)ことで他の客をも楽しませてくれる、というのがAのすごいところです。私に関西版ミシェランガイドを編集させてくれるのだったら、Aには間違いなく星3つ! 進呈しましょう。ついでに本のタイトルも「毎度!ミシェラン」に改訂したいなぁ。そんな事を考えてたら本当に関西版ミシェランガイドが年内にもでるというニュースが・・・。タダでさえ「和食音痴のミシェラン調査員」と揶揄されているようですが、B級グルメの宝庫である関西の味と雰囲気をスノッブな「おふらんす」の調査員が理解できるのでしょうか? なんだか京都のヌーベル・ジャポネーズみたいなのが評価高くなるんじゃないかなぁ。(今度こそ、関西版ミシェラン検証本「どない?ミシェラン」を企画するぞ!)

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話は脱線しましたが・・・結局いいお店というのは、店主が常にいいものを提供してお客様に喜んでもらおうという努力を怠らないお店・・・ということになるのではないでしょうか。?これは私達の世界にも通じると思います。PRP 一つ取っても、毎回濃度を測ってデータを取り、データを整理してそこから法則を見出し、より良い方法を開発していく・・・というのは気が遠くなるほど手間暇がかかりますが、それを惜しまず情熱を賭けて取り組み、皆様に喜んでいただくための努力を惜しまないことが、信頼していただける結果を出せる事につながると思うのです。うちもH空やAのように、店主の心意気と姿勢、そして人柄で皆様の支持を得られるように、また先に出てきた「Sだ」のように、向上しなくなって評価が下がる事のないように、心して頑張り、皆さんから星3つ!を進呈してもらえるクリニックを目指します。