第51回 (2007年06月) 「人を動かすものは?」

  

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こんにちは、異人館通クリニックの柴田です。
青葉の季節となり、すがすがしい日が続きますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか?
先日、またまたK氏に次ぐ強烈なキャラの人物に出会ってしまいました。事務長の知り合いで(事務長の知り合いは結構強烈なキャラの人が多いのですが・・・類は友を呼ぶのかなぁ・・)「和田山のおっさん」と呼ばれている、今までも噂はいろいろと聞いていたN氏です。その人は、自称上品な事務長が「おっさん」と呼ぶすごいキャラなのですが、タイやラオスの未踏のジャングル奥地からプエラリアミリフィカというイモ(正確には葛科の植物)を持ち帰って日本で初めて栽培に成功したという人で、そのイモにかける情熱は半端ではないようです。

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事務長は元々2年ほど前に知人の紹介でそのイモから作った健康食品のホームページ作成を依頼され、それからそのN氏との付き合いが始まったらしいのですが、よく「また和田山にいかなあかんねん・・・」とこぼしていました。(車で2時間、電車だと3時間くらいかかる)おまけにN氏は無類の酒好きで、打ち合わせの時も昼間からビールを飲んでいるらしく、和田山に行くと絶対飲まされるので、打ち合わせが終わってもすぐには帰られないらしい。おまけに田舎の人とはいえ、めちゃ口が悪いそうなんです。和田山町でプエラリアミリフィカと言えば、一時は「スパスパ人間学」などのテレビで取材され一躍ブームになった夢美人と言う商品の事かぁ・・・と気づく人もいるかもしれません。そう・・・その時のテレビにでていた「おっさん」がN氏なのです。ただ、単なる「とんでもないおっさん」だったら出会う事もなかったのでしょうけれど、実際に話を聞くとこれは「ひょっとして凄いことじゃないの!」・・・と興味をそそる話だったのです。
そもそもの話はタイに残っている古文書から始まります。タイ・ミャンマー国境周辺に住む少数民族に「モン族」が存在します。過去のモン族は遊牧民で定住先がなかった為いわゆる西洋文明とは切り離された生活をしていました。しかし彼らとて病気と無縁であった訳ではなく、民間医療はかなり発達しており、代々受け継がれる医者(西洋医学の観点では民間医)がいました。その継承される医者の中で使われている秘伝の万能薬があり、古くから不老長寿・若返り・美容強壮やさまざまな病気に対して使われていたというのです。それは正露丸のような丸薬で、成分や薬効は長い間謎に包まれていました。(テレビドラマの水戸黄門の中でご隠居が印籠の中に仕込んでいる万能薬があるの知ってます? うっかり八べえが調子に乗ってお団子を食べ過ぎてお腹をこわした時にその丸薬を飲めばたちどころに治ってしまう・・というシーンがありますが、まさにその世界です・・・例によって古い話で恐縮ですが・・)
 

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近年の研究でその万能薬はプエラリアミリフィカと言う葛科の植物の根っこにある芋を乾燥させた粉を蜂蜜で練りこんだものであると判明しています。そこからプエラリアという植物の薬効について研究が始まりました。(葛と言えば日本でも風邪を引いた時に飲む葛根湯が有名な葛植物の一種です。)そのプエラリアは成分分析をすると大豆に多く含まれている体によい成分のイソフラボンが同じ重さの乾燥粉末で比較すると大豆の数百倍も含まれているようです。近年イソフラボンはサプリメントが街中でも見られるようになったので、ご存知の方も多いと思います。もっと最近の研究では、プエラリアミリフィカにしか含まれていない「ミロエステロール」という成分に女性ホルモンの分泌を促す効果が大豆イソフラボンの1000倍から10000倍もあるということが解っています。その研究から元々希少植物であったプエラリアミリフィカの争奪がタイ国内で発生し、乱獲を恐れたタイ政府は最近、希少植物の保護という観点からこの植物を輸出禁止にしてしまいました。
ところが・・そのプエラリアをN氏が10年以上前にタイとミャンマーの国境付近の奥地から採ってきて、正規に手続きをして輸入し、日本で初めて栽培に成功したのです。その芋を乾燥させ粉末にし、一切の添加物を加えていない純粋な健康食品「夢美人」は更年期障害や若返り・美肌・豊胸に非常に効果があるとのことでテレビや雑誌でも取り上げられ、一世を風靡しました。その後はプエラリアミリフィカ含有と称した安いサプリメントが大量に巷に出回って夢美人ブームは落ち着くことになるのですが、それで話が終わった訳ではありません。

 

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一旦、他のサプリメントに移行したお客様がやっぱり夢美人でないと効かないとか、他のサプリメントを飲むと頭痛や吐き気がするとかで夢美人に戻られるのを不思議に思ってN氏が巷のサプリメントを調査してみました。原材料のプエラリアミリフィカは現在保護植物ですので、粉末などの加工品をタイなどの国から輸入するしかありません。そして成分分析やDNA調査を行ったところ、「これらのサプリメントの原料に使われているのは純粋なプエラリアミリフィカではないのではないか・・・」と言う事でした。(そもそも巷のサプリメントにはミロエステロールが検出されないそうなのです。)そこからまたN氏が2年以上かけてタイやラオスなどの諸国を数十回もかけて実態調査に出かけています。プエラリアの生態調査の際に記録ビデオを作製したいと要請があり、事務長が現地に同行した際のビデオを見せてもらったのですが、ジャングルの道なき道をミツバチの集団に追いかけられ、現地の軍隊の人をボディガードに雇ってジープで進んでいくという、まるで映画のようなシーンでした。

 

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柴田:  「なんで軍隊の人がいるの?」
事務長:「そりゃ・・こんな山奥で追いはぎにあったら一発でアウト。
     生きて帰れんでしょ。それに国境付近って黄金の三角地帯
     (麻薬の原料であるケシの畑がある地域)にも近いし、現地の
     マフィアと出会ったらそれで終りやねぇ・・」
柴田:  「へぇ・・そんなに危ないの?」
事務長:「まだ、この辺は比較的安全みたいよ・・・本当にマフィアとか
     一部の軍が管理している地域は実際に入っていけないから
     ・・・」
柴田:  「あ! 今ビデオに写っている電話、24でジャックバウアーが
     使っているやつでしょ?」
事務長:「あ・・これね。イリジウム携帯電話。地球上に100個だか忘れたけど衛星とばして、
     直接電話するから北極でも南極でもどこでも電話が可能なのね。
      実際にどんなジャングルの奥でも通話できない事は無かったなぁ・・」
柴田:  「へぇ・・凄いね。」
事務長:「ただ、24ではテロリストがアジトの室内で使っていたでしょ。あれば絶対に嘘だねぇ。
      建物の中なんかに入れば殆ど使えなかった。普通の携帯電話と違って外にいれば
      世界のどこでも使える・・・って事だからテロリストには不向きだろうなぁ・・・   
      衛星使った通信って家庭のBS放送みたいなもんだからねぇ・・
      部屋の中まで電波は入ってこないよ。」
柴田:  「結構面白い体験しているねぇ」
事務長:「よく言うよ。無事で帰ったからいいようなもんだけど、二度と行きたくないなぁ。
      同行した日本人の一人は旅行中に食中毒にかかって入院して緊急帰国したし、
      とにかく日本が一番! でもN氏のすごいところは日本からハイテクな計測器
      みたいなの一杯もってきているけど、最終的にはどんな植物も自分の舌で感じる事
      を一番としているらしく、なんでも口に入れてかみ締めてから決めるみたいねぇ・・・
      僕にはようわからんけど。」
(おぼっちゃん育ちの事務長には大変な体験だったようです・・(^○^) )

 

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まぁ・・なにはともあれ、そんな調査でわかってきたことは、タイでは本当のプエラリアミリフィカは絶滅状態で、亜種の「キャンデロイ」というよく似た他のイモが間違えてプエラリアミリフィカとして出荷されていた・・・と言う事でした。(キャンデロイとプエラリアは外見は専門家でないとなかなか区別がつかないらしい。 その他に似たような葛植物は山のようにあるそうで、きちんと管理されてなければ、農家の人にガルクルワ(現地の人はプエラリアをそう呼んでいるそうです)を買い取りたいというと、あらゆる葛を持ち込んでくるので、どれが本当のプエラリアなのかよくわからないらしいのです。巷に出回っているプエラリアはこれらの雑種が混ざったままの状態で出荷されているのではないか・・・と言う事で、これはまだ調査中で最終結論には至ってないが、ほぼ確実という話でした。)

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・・・で本当のプエラリアはどうなっているのか・・と言うと世界的なバイオエナジー(簡単に言うとガソリンの代わりにエタノールを使う動きがありますが、あれです。)の流れからそれに適した植物を植えるために、プエラリアが生息していた山はどんどん伐採され、プランテーション経営のあおりを受けてもしかすると絶滅している可能性があるそうなのです。そもそも希少植物だったのに、探せど探せど出てこない・・・。そうなると世界中でプエラリアミリフィカは日本の和田山にしかないかもしれない・・・・もし本当ならこれは大変! ということで大学の植物学の教授たちの間で大騒ぎになり、神戸大学の教授連もその調査に乗り出しています。調査はかなり進んでおり、神戸大学で来年プエラリアの国際シンポジウムを開催するそうで、その発表のために研究に拍車がかかっているようです。そんな中で今までプエラリアミリフィカの効果に対する医学的な薬効検証はタイでしかなされていなかったので、日本でも検証して欲しいと異人館通クリニックに依頼があったという訳です。

 

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そんなこんなででその噂に高い「和田山のおっさん:N氏」に会うことになったのですが、当日は大学の教授たちも打ち合わせに参加するということで神戸大学の正門で待ち合わせ。そしてきちんとしたダークスーツの教授らしい人と一緒に現れたのは、白いスーツに赤ら顔の、「ヤ」のつく自由業と間違えそうなおっさんでした。(すいません。でも本当だったんで・・・。)大学の職員食堂で打ち合わせ・・・飲み物の注文は皆がコーヒーなのにおっさんはビールです(打ち合わせはお昼の1時スタートでしたが)。植物学の名誉教授S氏が、イモの成分に関する話や、モニター試験の際に倫理委員会の承諾が必要か・・・などと難しい話をしている間におっさんが割り込みます。
「先生! わしは世界に向けてこのイモを発表して欲しいんや!」
またおっさんが話し出すと話が長い・・・・(~_~;)・・・・本当に長くて静止するのがやっとです。ここからはN氏ではなく「おっさん」と呼ばせてもらいましょう・・。

 

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一人目の教授が時間がなくなって帰られた後、二人目の名誉教授T氏が登場。そのT先生とおっさんは結構仲がいいらしく、「ホンマにあんたは話が長いんやから!」とかぼろくそ言い合っています。しかし教授連に言わせると、タイでプエラリアミリフィカが絶滅していて日本の和田山にしかないとなると、植物学的にはすごい事なのだそうです。そして女性ホルモンの分泌を促す効果が大豆イソフラボンの1000倍から10000倍もあるという「ミロエステロール」という成分はプエラリアミリフィカにしか含まれておらず、プエラリアミリフィカと間違えて売られている亜種の「キャンデロイ」や他のイモには含まれていないので、夢美人と他のサプリメントでは効果が違うのだろうということでした。また、プエラリアミリフィカと間違えて売られている他のイモには毒性のあるものもあり、そのため頭痛などの副作用が出るのではないかと言われていました。確かに、本物のプエラリアミリフィカが和田山にしかなくて、現在プエラリアミリフィカとして出回っているものが他のイモを原料とした粗悪品となれば、その価値はすごいですよね。

もう一人、もっと薬理学の詳しい教授K氏がおられるらしいのですが、その日は来られなくなったということで後日会うことになりました。事務長にいわせると「今まで生きていてあんなに頭の切れる人が世の中にいるとは思わなかった。(K教授の事)まぁ、僕より凄い!と思ったのは初めてだねぇ・・・」と言っているくらいなので、事務長の自己評価はあてにできないが、K先生には次回会うのが楽しみです。
それにしても、この和田山の「おっさん」と教授陣とはあまりにも違う世界の人のようなのですが、事務長を含めて、なんで皆そんなおっさんに付き合っているのか? と思いきや・・・やっぱり「おっさんはイモを語りだすと熱い!」のです。

 

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おっさん:「わしはな、10年前に何回もタイの奥地に行ってこのイモを
      探し出してな、日本に持って帰って苦心の末に栽培に成功した
      んや。このイモのことなら何でも聞いてくれ!今後はな、この
      イモの有効成分をもっと増やすんや!」
柴田:   「えっ、そんなことできるんですか?」
おっさん:「できるできる! このイモのことならまかしとけ!」
柴田:   「効果や安全性の検証はされているんですか?
      資料はあるの?」
おっさん:「資料はそろっとるよ! わしはタイでこのイモの効果や安全性を検証した資料はすべて揃えて、
      全部タイ語から英語に直したんや! なんせこのイモの効果はすごいんやから! タイでは75歳
      の女性に生理が復活したし、モン族は不老長寿の薬としてこのイモを古来からずっと使うとった
      んやから。先生!わしは先生に、世界に向けてこのすばらしいイモの効果を発表してほしい 
      んや!頼むわ、先生!!」
話せば話すほど、口は悪いがおっさんのイモに対する情熱がひしひしと伝わってきます。そうか・・それで皆こんなおっさんに付き合うてるんやな・・・とわかってきました。そういえば事務長も、おっさんとタイに行った時は道なき道を奥地までどんどん進んで行ってイモを探す情熱とバイタリティーには脱帽した、と言っていました。二人目の名誉教授も、「この人はこう見えてもタイに行ったらあちこちに子分がいっぱいおるんですわ。なんでかわかれへんけど・・・」と言っていたのです。決してタイ語がペラペラな訳でもなく、通訳をつけても通訳が困るくらいの例のおっさん語でまくしたてているらしいのですが、タイの子分と言われる人たちは、おっさんの頼みは何でもきいてくれるそうです。やはり皆、おっさんの類稀なる情熱に動かされるのではないでしょうか。

 

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そういえば先日学会で、「エステティック・自然療法・医療の融合」と題した講演があり、私と同じような事を考えている人がいる、と思ってその講演を聞きに行ったのですが、その講演をされた先生のクリニックでは、ドクター・ナース・エステティシャン・サプリメントアドバイザー・アロマテラピストがそれぞれの専門性を生かしながら良い所を融合している・・・というのに共感し、スタッフの育て方などを質問してしまいました。答えは、まず最初からそういう意識の高い、コンセプトに共感する人を採用することと、得意な分野を勉強させて専門性を持たせること、と言われてなるほど、と思ったのですが、後で良く考えてみると、そのクリニックはそれで成功したという実績を何一つその講演では述べられていなかったことに気が付きました。 なのにどうして成功しているかのように思い込んでしまったのだろう? と考えてみると、やはりその先生の信念が情熱を持って熱く語られていたからだったのです。やっぱり人を動かすのはお金でも名誉でもなく、信念と情熱に勝るものはない・・・と改めて思い、おっさんにもその事を再認識させられたというわけです。(信念と情熱は詐欺師にも強いものがあるので、その違いの見極めは重要ですが・・・)
5周年を機に、異人館通クリニックでもコンセプトを新たにし、目標を立て直しました。信念を持って、目標に向かって進めばいつか目標は達成できる、いや絶対に達成するんだ! という情熱を忘れず、頑張りたいと思っています。 これからもよろしくお願い致します。

 

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最後に・・・和田山のおっさんについて・・・。
今はインターネットで検索すれば何でもでてくるからN氏の事を検索すると1年ほど前に脱税疑惑で起訴されたという新聞記事がありました。 その話になった時・・・。
おっさん:「あれはなぁ、 脱税とちゃうで。東南アジアの国でボディガード
      雇ったり、社会主義の国で立ち入り禁止の区域に入ったり、
      マフィアが管理しているような土地の植物調査したりするのに、
      どんだけお金かかると思ってますねん。そりゃ袖の下だって相当使うがな。そんなん領収書
      もらわれへんやろ。それを経費に計上したら、国税の奴らは領収書のない経費は認めへん
      ・・・って言い張るんや!」
まぁ、それも語りだすと長いので、その辺でなんとか静止したのですが。
何をするにも情熱をもつのは凄いことだけど、程ほども必要かも。 それにしても、1個3万円近くする芋の粉が3万個以上国内で出荷されていると言う事だから凄いですよねぇ。 国税局も黙って見ていた訳ではなかったようです。 逆に考えると「そんなにいい商品なの?」
って一層興味をもってしまったのは、おっさんの情熱のせいでしょうか?