第46回 (2007年01月) 「初心忘れるべからず」

  

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明けましておめでとうございます。異人館通クリニックの柴田です。 旧年中は皆様には大変お世話になりました。おかげさまで今年はクリニック5周年を迎えます。ここまで来ることができたのも皆様のおかげと心より感謝しております。これからも初心を忘れず、常に研究を続けて皆様のお役に立てるよう頑張りますので、宜しくお願い致します。
さて、クリニックも今年でまる5年になろうとしています。そこで年の初めに初心に帰り、がらにもなく真面目に「クリニックの理念」というものをもう一度考えてみました。 そもそも「理念」とは? 理念というのは「こうあるべきだ」という根本の考え、と言っていいでしょう。異人館通クリニックの理念を一言で言えば、「多くの人を幸せにできる医療を提供する」ということです。多くの人を幸せにできる、本当に喜んでもらえる医療を提供したいという純粋な思いでこの5年間を歩んできたつもりです。具体的には、クリニックを始める際に掲げた「5つの目標」が基本的なクリニックの理念と言えるでしょう。

 

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その「5つの目標」とは、
1.  健常者に必要な医療を提供する。
2.  総合的な医療を提供する。
3.  医療はサービス業であると考える。
4.  広がりのある医療にチャレンジする。
5.  適正な治療を適正な価格で提供する。
というものです。クリニックをオープンしてからホームページは何度もリニューアルしましたが、この理念のページは一度も文章を変更した事がありません。迷った時は初心に帰り、自分の行動や考えがこの理念に沿っているかを確かめながら進んできました。
私は開業する前は15年以上勤務医としていろいろな病院で医療に携わってきました。その間に感じた事が現代の日本の医療現場には「5つの目標」の1から4が欠けている、ということでした。日本の普通の病院では、重い病気やけがを治すことに重点が置かれ、体やお肌のちょっとした不調は相手にされません。重い病気やけがを治すことはもちろん大切ですが、生活習慣病など病気になる前に防ぐことが大切で病気になってしまうとなかなか治らないものもありますし、QOL(Quality Of Life)の向上が求められる現代において、「日常生活をより豊かにするための医療」というものがあまりにも少ないと感じたのです。そして診療科目は細分化されて専門化されすぎ、一人の患者様を総合的に診ることができなくなっています。皆様もいくつか症状があって病院へ行くと、あちこちの科を回らされて大変だった・・・という経験がおありではないでしょうか?

 

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また、普通の病院のサービスの悪さと言ったら尋常ではありません。本当に病気やけがの人に対するいたわりの心があるの?と思ってしまうこともしばしばです。最近は少しはましになっている所もあるようですが、まだまだだと思います。建物も部屋も汚くて暗く、冷たいイメージの所が多い。私たちは慣れっこになっていましたが、医療関係でない友人からは、「病院って行くだけで余計病気が悪くなりそうじゃない? あんな所でよく毎日働いてるねえ。だからいつも体調が悪いんじゃないの?」なんてよく言われました。そこで「日常生活に安らぎと豊かさを」提供するための、本当に喜んでいただける医療にチャレンジしようと思って始めたのが異人館通クリニックです。
待合室も落ち着いてくつろいでいただける雰囲気にしようと心を配り、いい音楽をかけたり(現在は落ち着けるクラシックにしています)治療後はお飲み物のサービスをしたり、スタッフもなるべく接客が得意な人を集めようとしました。(この接客と医療の両立というのがまた難しく、スタッフが落ち着いたのはごく最近のことなのですが・・・。)最近はそういうクリニックも増えているようですが、5年前にはあまりなかったのでいろいろな人に驚かれました。

 

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4つ目の目標の「広がりのある医療」というのは少し解りにくいかもしれませんが、病院では普通、通院できない人の治療は行いません。しかしこれだけインターネットの発達した現代において、医療にもそれを使わない手はない、と考えたのです。メールや写真を駆使し、遠方の方や忙しい方が通院しなくても治療ができたらどんなに便利かと思いました。そこで「遠隔地治療」を行い、良い治療を少しでも多くの方に受けていただけるようにと考えたのです。この「遠隔地治療」は実際にしてみるとなかなか大変です。メールや写真でのやり取りは手間もかかりますし、実際に診察するよりは正確さに欠けるのでリスクについても理解していただかねばならず、何回も写真を送っていただいたりする事もあります。しかしこれがスムーズにできるようになれば医療の幅が広がり、より多くの方に喜んでいただけると思うので、やはりがんばりたい分野です。

 

 

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さて、「日常生活に豊かさを」提供するとなると、「元気になる」ことと同時に「綺麗になる」ということが非常に重要な要素となってきます。特に女性は、綺麗になると気分が明るくなり、体調まで良くなることもありますよね。皆様もちょっとお肌の調子が悪いだけで憂鬱な気分になられたことはありませんか? 綺麗になって喜んでいただけたら、こちらとしてもこんな嬉しいことはありません。
しかし開業当時は、美容の世界と言えば「うさんくさい」と思われがちな美容外科がほとんどでした。昔は社会一般に美容外科と言えば人の足元を見て高額な治療費を請求し、しかもミスが多い・・・と思われていましたし、医者の間でも「美容外科医なんてろくなやつはいない」という認識が普通でした。大学の医局の中でもできの悪い後輩が「美容外科行ったら経験なくてもすごい給料高いらしいで。僕も行こうかな・・・」などと言っていたのを覚えています。しかしこれだけ豊かになった現代において、まともな医者(自分で言うのもなんですが、私は医療においては非常に真面目でまともだと思っています。そして世の中にはまともでない医者も多く、医者は選ばなあかん・・・と思っています・・・ここだけの話ですが。)が美容医療をしてもいいのではないか、いや、美容医療こそまともな医者がやるべきだ、と思ったのです。そこで研修や研究を重ね、「美容生活医療」という新しい分野にチャレンジしたわけです。(大学の医局を辞める時は、「なんで美容なんか」「せっかくの手術の腕がもったいない」などいろいろ言われて引き止められましたが、今では新しい世界に挑戦して良かったと思っています。)

 

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皆様すでにご存知かと思いますが、美容医療には保険は利きません。そこで5つ目の「適正な治療を適正な価格で提供する」という目標を立てたわけです。一般化粧品の価格の内訳はほとんどが広告費だと言われているように、美容外科でもバンバン広告を打っている所はやはり治療費に広告費を上乗せしないとやっていけません。また、流行りのレーザーなど高額な医療機器を次々導入する所も同様です。そういう所は派手で知名度も高くなりますが、そういう費用を上乗せした治療費は「適正な価格」ではないような気がするので、広告は最小限にし、話題性はあるが安全性や効果において評価の定まっていない高額な機器の導入は避け、地味につつましく、儲けは少なくても安全で確実に効果がある治療だけを続けてきました。

・・・とここまではホームページにも5年間表明してきた事だし数年前の通信にも書いていることと何ら変わらないものです。しかし、最近は久しぶりに一つの理念を書き加えようかな・・と思っています。それは「効果と安全性を検証していない治療方法は導入しません」というものです。ホームページには一応5つ目の目標の中に書いているのですが、それを独立させる必要があるのではないかと思うようになってきたのです。その理由は、5年間美容医療をやってきて、この業界では効果と安全性を検証してから治療を行っている所が非常に少ないということが解ったからです。

 

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「適正な治療」というのは、「安全で、確実に効果が出る治療」だと私は思っています。美容医療というのは新しい分野なので、新しい治療や新しい薬剤が多く、安全性や効果が検証されていないことも多いのです。しかしそれを検証しようとする医者やクリニックは非常に少ないのが現状です。例えば、脂肪溶解注射。以前のクリニック通信にも書きましたが、薬剤の文献も少なく、作用機序(薬の効き方の理論)を調べるだけでも一苦労だったので、すでに使っている知り合いの医者やいろいろな人に聞いてみたのですが、そんなことも調べずに流行りだから使っているという所が多いのに驚きました。知り合いの美容外科医に質問すると、「詳しいことはよう知りませんわ。先生、そんな難しいことええやないですか」と言われる始末。「効果はどう?」と聞くと、「うーん、すごく効くのは10人に一人くらいかなあ・・・2-3回で効く人もいるけど、フォローしてないからようわかりませんわ」ましてやモニター試験をして統計を取っている所なんてありません。

 

 

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メソリフトにしても同様です。いろいろなクリニックに聞いてみましたが、ほとんどの所が研究も検証もしていないようでした。しかし異人館通クリニックでは、新しい治療を導入する時には必ず安全性を確認してからモニター試験を行い、統計を取って確実に効果があると確認したものだけを取り入れることにしています。そしてメニュー化してからも統計を取り続け、さらにいい治療にするために研究を続けて改良を加えていきます。それはものすごく労力も時間もかかって大変な作業ですが、「適正な治療を提供して、本当に喜んでいただく」ということがうちの理念だからです。

新しい治療ばかりか、美容医療の世界では比較的早くから使われているボトックスでさえ、効き方に個人差があることを考慮せず、誰にでも同じ量を注入しているらしく効きすぎて困った・・・という話はよく聞きます。東京の有名な美容外科医でも「効き方に個人差なんてない」と言い切っていましたが、実際に統計を取ってみるとそんなことはありません。ひどい所では有名なTクリニックで働いている知り合いの美容外科医に、どの部位に 何単位くらい使っているのかと聞くと「いつも看護婦が用意してるのを打つだけやからよう知らんのですわ」・・・。彼らは治療をしても、次は何週間後に診せて下さい、ということは言わないそうです。次の診察で文句を言われるのがいやだから、と言うのです。効果がどうか、なんて彼らは興味がなく、注射も打ったら打ちっぱなし。それでは実際の効果も把握することはできません。うちでは必ず治療の後は、1-2週間後に診察に来ていただくようにお願いしています。そうして効果を確認することが適正な治療を提供し、満足していただくことにつながると思っているからです。

 

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いつもならおせち料理のグルメネタになってしまう1月のクリニック通信ですが、一年の計は元旦にあり・・・と言いますので、たまには真面目にクリニックの理念というものを確認してみました。これからもこの理念は変わることはありません。地味で大変でも常に研究を怠らず、適正な治療を提供して皆様に喜んでいただけるよう努力していくつもりです。
そして今年の抱負は、この理念を広く多くの方に知っていただくことです。いくら良い治療をしていても、多くの方に知っていただいてそれを提供できなければ社会の役には立たないと考えるからです。そのためには広報活動に力をいれていきたいと考えています。地味だけどこんなクリニックもあるということを知っていただき、少しでも多くの方に喜んでいただけるようがんばりたいと思っておりますので、皆様のご支援・ご協力をお願いいたします。そして今年も皆様にとってよいお年になりますように!