第41回 (2006年08月) 「メソリフト物語」

  

41_1.jpg

こんにちは! 異人館通クリニックの柴田です。
今年は梅雨の後半に雨が多く、梅雨明けが延びてしまいましたが、皆様はいかがお過ごしでしょうか? これから夏本番ですね。いつもだと暑い時期は一歩も外に出ずおうち生活にどっぷりつかってしまう私ですが、今年の夏は外出することが増え、忙しくしています。それというのもほとんどが新しい研究のためなのですが・・・。一年近い研究の末、やっとこの4月にメソセラピー(脂肪溶解注射)をメニュー化でき、たくさんの患者様に喜んで頂くことができました。しかし一つ目標を達成すると、また新たな目標に向かって進みたくなるものです。メソセラピーの次はメソリフト・・・今この研究に没頭しているところです。

 

 

41_2.jpg

「メソリフト」という言葉は耳慣れない方も多いと思います。海外でも2-3年前から急に人気が出だした治療法で、顔や首の皮膚に浅く細かく注射をし、お肌のハリや艶を取り戻して若返らせる・・・という方法です。私は去年の秋に脂肪溶解注射の研究のために韓国に行った際に初めて知ったのですが、このクリニック通信でも韓国で受けた「nappage法」として紹介させて頂きました。その頃から韓国では大人気だったらしく、勧められて半信半疑で試したところ、お肌がツルツルになって驚いたのです。帰国後、早速スタッフや友人に試してみると、皆お肌にハリが出て大満足!メニュー化をせかされていたのですが、その頃は脂肪溶解注射の研究が大変だったので、メソリフトの研究はなかなか進みませんでした。しかし脂肪溶解注射をメニュー化する少し前にメソリフトに使う最新機器の情報を得、「次の研究はこれだ!」と思ったのです。

その最新機器とは、「デルマローラー」という器械。ローラーに極細の針が何本もついているものです。元々メソリフトという治療法は、ビタミンやアミノ酸・αリポ酸など年齢と共に肌から失われていく成分と血行を良くする薬剤を皮膚に注入することによって、細胞を活性化して新陳代謝を促進し、お肌を若返らせて老化を防ぐ方法です。お肌にハリが出て小じわが減り、血色が良くなってきめが細かくなり、肌本来の若さを取り戻せるというアンチエイジングにピッタリの方法なのです。最近はFGF(線維芽細胞増殖因子)も話題になっており、線維芽細胞を活性化してコラーゲンやヒアルロン酸を増やすことにより、小じわやたるみのさらなる改善を狙っているようです。

 

 

41_3.jpg

メソリフトは通常、注射器やメソガンという器械で注入を行うのですが、針が1本なので時間がかかり、注入する回数もある程度限られます。しかしデルマローラーを使うと、たくさんの穴をすばやく皮膚にあけることができるので、効率的に薬剤を浸透させることができるという理屈です。これは面白いと思ったので、さっそくその器械を取り寄せることにし、デルマローラーの広告を送ってきた輸入業者Nに電話をしました。 ・・・これがその後のさまざまな苦労を生む事の始まりになるとは知らず・・・

柴田: 「デルマローラーに興味を持っているのですが、詳しい説明書を送って頂けますか?」
業者: 「(一瞬沈黙) ・・・すみません、あのー ・・・説明書はないんです」
柴田: 「はあ?」

家電製品だって説明書がないものなんて見かけないですよね。しかも一応は医療器具です。世の医療機器屋は多しと言えど、説明書のない器械を売るなんてことはありえません。

柴田: 「説明書がないって・・・そしたら使い方を説明して下さいよ」

通常、医療機器メーカーの営業の人というのは自分の売っている器械にはやたら詳しいものです。そのつもりで聞いた私があさはかでした。

業者: 「はあ、それが・・・何分新しい器械なもので詳しくは・・・一応、
    お肌の上をころがして、お薬を塗っていただくんですけど・・・ 」
柴田: 「ころがす強さとか回数は? 
     使う薬剤とか、実際の効果はどうなんですか?
     どれくらいのクリニックで使われてるの?」
業者: 「軽く、1回でいいかと・・・ 。薬剤はいろいろで・・・今までは5件ほどに
    お売りしただけ なので、効果はちょっと解りかねますが、
    聞いてみます・・・ 」
柴田: 「滅菌方法は? 
    オートクレーブ(高温で滅菌する器械)対応なんですか?」
業者: 「ええ、オートクレーブ可能です」

 

 

41_4.jpg

なんとも頼りない担当者だが、これはこの会社の問題ではなく、単に電話に出た担当者の問題なのだろう・・・と思い、その器械を取り寄せました。
「う・・・む。 担当者も頼りないが、この器械もなんか頼りなさそう・・・」 かなり高価な器械の割には、取っ手のプラスティック風の素材などが安っぽい。まぁ、見た目では素材まではわからないので、早速テストで使ってみることに。 当然の事ながら、いつもの要領でオートクレーブで滅菌を行います。しばらくすると、 「せ、先生! 大変です!」 ・・・スタッフが血相を変えて診察室に飛び込んできました。デルマローラーの柄がグニャグニャに曲がってしまったのです。やっぱりなぁ・・・なんか安っぽい柄だもん・・・高温になるオートクレーブには耐えなかったのでしょう。でも滅菌できない医療機器なんて聞いたことがありません。

 

 

41_5.jpg

そういえば、昔、自分のペットを洗って乾かすのに電子レンジにいれて「チン!」したところペットが死んでしまったので、持ち主は電子レンジの会社を訴えたというアメリカの話が紹介されていましたっけ・・・いや、いくらなんでも今回の私の行動は間違ってないはず・・・低レベルな話で悩むよりは、先ほどの会社に聞いてみよう。・・・

と言う訳で話を聞いたのですが、あまりにもお話にならない回答に唖然。とてもやり取りの会話を記載する気になれないので割愛しますが、後でまともな業者を見つけて聞いた所、この商品はオートクレーブ対応にはなっていないとのこと。よって、滅菌して多くの患者様に使うのではなく、一人の患者様がボトルキープのようにクリニックに保管しておき、その人が来院した際にマイ・デルマローラーを使うという趣旨の製品らしい。(それにしちゃ、あまりにも高いやん。高級店のヘネシーじゃあるまいし・・・)
強烈なクレームを入れ、代わりにメソガンを貸してもらうことになったのですが、これがまたショボい。営業マンの説明どおりに試しても注射液がうまく出なかったり、液量が調節できなかったり・・・ 。おまけに電源まで途中で切れてしまいます。またクレームを入れると、営業マンがでたらめな説明をしていたことが解りました。電源を直すと何とか使えるようになりましたが、性能が良くなく手間がかかります。

 

 

41_6.jpg

「何かいい方法はないかなあ・・・ 」困った時のなんとやら・・・で、ブレインK氏(K氏についてご存じない方はクリニック通信第21・22・33回を御覧下さい)に相談し、いきさつを話すとK氏は大笑い。
「いやあ、とんでもない輸入業者ですねえ。わかりました、滅菌方法を調べてみましょう。メソガンも、もっと性能の良いのがありますよ。そちらも調べてみますね。」

さすがK氏、頼りになる~。K氏の助言で柄の曲がらない滅菌方法も見つかったので、とりあえずデルマローラーを試してみることに。まずは自分で短い針のものを試してみました。お肌の上を軽く転がすと、ちくちくするだけでそう痛くありません。顔の右側だけローラーをかけ、皮膚の若返りを図る成分をたっぷり入れた美容液を塗ってパックすると、お肌はツルツルに!パックだけでも結構直後はいいのですが、やはりローラーをかけた方がツルツル度は良く、長持ちします。皮膚に穴を開けて有効成分を浸透させるのであたりまえのことですが・・・ 。皮膚は雑菌や悪いものが体に入らないようにバリアーの役目をしているので、その分有効成分も浸透しにくいのです。いくら有効成分が多く含まれた化粧品を使っても化粧品のみでは効果が出にくく時間がかかるのはそのためです。

 

 

41_7.jpg

今まではピーリングで角質細胞の結合を緩めて有効成分を浸透しやすくしたり、点滴で血管から有効成分を補給することで皮膚への有効成分の浸透を補ってきましたが、この方法は直接皮膚に穴を開けて有効成分を浸透させるので、画期的で一番手っ取り早い方法と言えます。
同時にいろいろな研究会の資料を集め、薬剤の研究も進めました。皮膚を若返らせる有効成分の中で、手に入りにくいのが例のFGF(線維芽細胞増殖因子)です。海外ではFGFを配合した化粧品も売り出されていますが、少量で高価ですし、濃度が低い。
「高濃度のFGFはないかなあ」と探していると、ありました、ありました。もともと傷や潰瘍を早く治すために開発された画期的なお薬が。これを使えば鬼に金棒! 線維芽細胞が活性化されてコラーゲンやヒアルロン酸が増え、若返ること間違いなし!早速これも取り寄せて、次は針の長いデルマローラーを試してみました。1回目よりツルツルになり、体調が悪い時でもお肌は絶好調。
スタッフにも「先生、何かしました?」と聞かれます。「実はね・・・ 」「へー、そんなに効くんですねー!」
その次は美容液にボトックスを混ぜてみました。するとキメとハリが抜群に!
「これは使える!」意気揚々とモニター試験を始めたのですが・・・ 。

 

 

41_8.jpg

痛がりなので短い針で試したM様はツルツルになったのですが、痛くても効果があるほうが良いと長い針で試した数名の方は「何も変化がない」と・・・ 。え?どうして?私とM様はツルツルになったのに、他の方はなぜ変化がないの?しかも長い針を使ったのに・・・ 。何が悪いんだろう?1回目だから?皮膚が厚いから?望みが高いから?またまたいろいろなことを研究しなくてはいけなくなりました。

色々と悩んでいるときに朗報が・・・ 頼りになるK氏の取り計らいで、東京に在住するメソリフトで大成功をしているS先生を紹介して頂く事になったのです。早速、実際のメソリフトの状況を見学したり、先生とのディスカッションのために東京に出張です。(ついでに、夜はK氏とグルメ三昧・・・も期待しつつ・・・こちらが本当のねらいではありません。あしからず) ただ、この東京でも色々とためになること、面白いことなどエピソードが沢山あるのですが、紙面の関係からこの話はまた、次回にとっておきたいと思います。

 

 

41_9.jpg

途中の苦労のお話は今回は省いてしまいますが、色々とあって、何をしても効果がもう一つだった「つわもの」のモニターの方もようやく全員効果が出だしました。4-5回するとくすみが取れてハリが出、シワやたるみが改善し、きめが細かくなってお肌はツルツルに・・・ 。写真を比べると5歳くらい若返った方もおられます。
やっとメソリフトにも光が見えてきました。 今回勉強になったのはどんな情報も鵜呑みにせず、吟味して信用できる情報を選ばないといけないということと、信用できる情報を参考にしつつもやはり自分であれこれ試して研究するのが一番だということ、そしてほんとうに多くの方にお世話になって研究が進んでいることに感謝しなければならないということです。私の周りのブレインの方たちやモニターになって下さる患者様に感謝! そして私もその方たちを含め、皆様のお役に立てるようがんばらなければ、と思いを新たにしたのでした。

例の柄が曲がって使い物にならなくなったデルマローラーの末路はどうなったと思います? かろうじてローラーの部分だけは役に立つので、捨てるのはもったいないということで、今ではキッチンでお肉の下ごしらえに活用しています。塩や下味をお肉に染み込ませるのにちょっと使ってみると意外や意外。すごく味が染み込んで美味しくなるのです。何はともあれ、浸透性がよくなる事は純然たる事実のようで。 まぁ、高い調理器具なんですけれど・・・。