第40回 (2006年07月) 「絵のある暮らし」

  

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こんにちは! 異人館通クリニックの柴田です。

今年は5月に雨が多く、入梅してからは比較的さわやかな日があったりしますが、皆様はいかがお過ごしでしょうか? 私は休みの日でも雨だと一歩も外に出ないことが多いのですが、そんな日はおうちでゆったりした時間を過ごせるのでちょっと楽しかったりもします。小さい頃、たまには雨の日に外を見ながらお家で過ごすのがちょっと嬉しかった記憶があるのですが、皆様もそのような記憶はありませんか? 雨の日の静寂に響く雨音を聞きながら、お家でゆったり壁にかかった絵画を鑑賞するのもいいですよね。

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実は先月、プラズマテレビを買ったのを機に部屋の模様替えをし、絵など買ってみました。(と言っても正確にはオリジナルではなくポスターなのですが・・) 今まで自分で絵を買ったのは海外での路上のスケッチくらいなので、絵に詳しい友人に付き合ってもらって、部屋の白い壁とプラズマテレビの周囲にも合うシンプルなものを何点か選びました。絵に合う額縁をオーダーした方がいいと言われ、オーダーすると額縁の方が高かったのには驚きましたが、出来上がってみるとなるほど、絵の素晴しさが引き出されるなあ、と感心。絵のある部屋とない部屋では全く雰囲気が違うなあ…と最近は一人で絵を眺めては悦に入っています。

今回購入したポスターは非常にシンプルなスケッチが数点あります。あまりにもシンプルで、人によっては「小学生の絵とちゃうの?」と言われてしまうかもしれないものもあります。ただ、シンプルなものほど、見ていて自分の想像力をかきたててくれるように思います。
皆様も原作は書籍で映画になったものをご覧になった事があると思います。最近ではダビンチコードが大ヒットしているようですが、私の友人に言わせるとあれは本で読むもので映画では面白さが表現できていない・・と。(私もダビンチコードの書籍はいつか読もうと思って買ったのですが、まだ読めずに本棚に置いているところです・・・(^_^;) 早く読みたい!)

 

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書籍を先に読んだ人が映画を見ると「本の方がよかった」とか「自分の想像していた人と登場人物のイメージが違う」と思う事は多々あると思います。これは本がビジュアルがないために、読み手が勝手に想像して人物とか風景の像を頭の中に作り上げてしまっているところに、他人のイメージを見せられることによって他人のイメージと自分のイメージの差に違和感を覚えるのでしょうね。 「映画より本の方がいい!」と言う人はその人に想像力の源が十分にあり、その源を本が刺激してくれた訳ですね。 これはあえて映像を見せない事によって読み手が本来もっている想像力を刺激し、その人の中から映像が生まれてくる訳なので、映画などで他人から押し付けられる映像より自分好みのものであるはずです。 「あえて見せすぎない・・」と言うのは想像力のある人を相手にする場合は重要な事のように思います。 今回購入したスケッチも、単色で非常にシンプル、全く脚色もないようなものですが、見ていて不思議と自分の中で情景やその場の色・匂い・ざわめきなどを感じてきます。自分にとっていい絵って、自分の想像力を刺激して自分の中に映像を作りだす事を手伝ってくれるようなものかもしれないな・・・って思います。

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とにかく絵のある暮らしって、何かほっとやすらぐものがありますよね。同じ部屋でも絵のある風景とない風景ではだいぶ違うような気がします。クリニックの患者様でも絵を趣味にされている方もおられ、「先生も絵をされたら? 楽しいわよ~」とよく言われていました。展覧会に出品された絵を見せていただいたこともありますが、なかなか素晴しい。私にはそこまでの才能はないとは思いながら、最近その方に絵の先生を紹介していただいて、クリニックの皆でデッサンを習い始めました。

なぜクリニックの皆で・・・かというと、デッサンの勉強は仕事にも役立つと思うからです。私達の仕事は患者様を綺麗にすることなので、患者様にどのような変化をもたらす事でより美しくできるかを解っていなければなりません。大抵の場合は非常に小さな変化が、全体の大きな印象に変化をもたらす事になります。その変化は本当に微妙な差しかない事の方が多いので、患者様のどこをもう少しどうすれば綺麗にできるかということをよく解っていなければいい治療ができませんし、スタッフもそういうことが解っていなければ適切なアドバイスをすることができないと思うのです。

 

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メイクもそうですが、顔立ちを綺麗に見せるのには影のつけ方が非常に重要です。特に日本人の顔は平面的なので、影のつけ方で少し彫を深く見せると綺麗に見えるのです。また逆に、影を少し消すだけで非常に綺麗に見えることもあります。そのようなことの理解にデッサンの勉強が役立つと考えています。 実際やってみると、デッサンの時はモデルを非常によく見るので、他の人の顔もよく見るようになり、見方も変わります。光と影の重要性もさらに理解できてきたような気がします。そうした目を磨いて、美のトータルアドバイザーになれればと思うのです。
それにデッサンってなかなか楽しいですよね。趣味と実益を兼ねられてとってもいいと思っている今日この頃です。

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世間の美容外科クリニックの考え方はまちまちですが、私は少なくとも「綺麗になったね、って誉められた!」と患者様に喜んでいただく事が何よりも好きですし、今後とも少しでも喜んでいただければ、それに勝る幸せははないと思います。その為にはもっと「美しい」って何だろう・・・という根本的なところを勉強する事が重要だと思っています。

それにしても、ゲージュツって普通の人には理解できないもの・・・と言うイメージが常にありますよね。(かく言う私もわからない部類の方ですが・・) 私はよくわからない事はシンプルに考えるようにして、自分なりの解釈で楽しむようにしています。 今回購入したデッサンにはピカソのものが含まれているのですが、これを見ているとなんだか昔テレビでみた「物まねグランプリ」を思い出してしまいます。ピカソの絵を見て「物まねグランプリ」なんか思い出すのも変ですが・・・

 

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「物まねグランプリ」でタレントのコロッケが「ちあきなおみ」の物まねをしていたのを初めてみた時、おかしくておかしくてお腹を抱えて笑ってしまいました。その時に思ったのは「本人より似ている!」。もちろん本人以上に本人に似ている訳がないのですが、コロッケの物まねは本人の特徴を大げさに表現する事で、本人以上に「ちあきなおみ」らしい・・・のです。 これって、絵画で言うところのデフォルメ・・ですよね。 喜びとか悲しみとか人間の感情を事実以上に大きく表現するデフォルメがゲージュツなんじゃないかなぁ・・って勝手に自分で解釈して納得しています。 コロッケとピカソを同列に扱うなんて、おそらくお叱りを受けることを覚悟しつつ・・でもなんだか通じるものがあるような気がするなぁ。そんな妄想を抱きながら絵を見るのも一つの楽しみ方ですよね。

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さて、絵が届いてから初めてわが家を訪れた母。 「なんやいっぱい額あるなあ。誰の絵?」「それはピカソよ」 「ひょえ! 高いんちゃうの?!」(さすがの母でもピカソは知っているらしい。 たださすがにポスター版などの存在は知らないから、本物と思ったのでしょう。) 「いや、安かったよ」(なにわのオバハンの母は、何でも安くないと 「もったいない!」と文句を言うのです)
「なんぼしたん?」「秘密やねん。」 またそんなわけわからんもんにお金つこて、だまされてるかもしれへんやろ!・・・と文句の一つも言うのかと思うと・・しばし見入って 「ふーん。ほんでもなかなかええなあ・・・」
あらら・・意外にも意外。食べ物以外には興味がないと思っていた母ですが・・・。
その後もちょくちょく壁に掛かった絵を見てはなにやらブツブツと独り言を言ったりしているようです。(もしかすると文句を言っているのかもしれませんけど・・・(^_^;) ) でも、どんな人だって何十年も生きていると沢山の思い出が心の中に詰まっているはずです。その当時は辛かった事も、また楽しかった事も時間がたてばセピア色にぼやけて輪郭だけになった思い出が、絵を見ていると不思議に美しく呼び起こされるように思います。やはり絵って人の心にやすらぎを与えるって思いませんか?

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そうやって母の反応に感心していると、次の瞬間に 「この鳥はどこへ飛んでいくんやろなぁ・・・」 「えっ!?」 正直言ってその時の母が何を考えてそのように言ったのかはわかりませんが、
あえてその意味を私が尋ねることはしませんでした。 でも80歳近い母が鳥のデッサンをみて「この鳥はどこへ飛んでいくんやろなぁ」と発言した後は、しばらく考えこんでしまいました。もちろん、母の発言に何か深い意味があったのかどうかは、今でもわかりません。おそらく母の事ですから、そんな事を言ったことすら忘れているかもしれません。しかし我が家にこの絵が来たことによって、母の意外な一面を見ることになった事だけは事実のようです。
絵を飾るって、自分の楽しみももちろんあるのですが、それを見た人の反応を見るのもまた一つの楽しみですね。自分では想像できなかった意外な一面を垣間見る事ができるようです。「絵のある暮らし」って、まさに「えっ!・・・のある暮らし」なのかもしれません。 皆様も素晴らしい絵の情報があれば色々と教えてくださいね。