第29回 (2005年08月) 「変わった趣味」

  

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こんにちは。 異人館通クリニックの柴田です。
本格的な夏がやってきましたね。毎朝セミの声で早く目が覚めてしまいます。暑い日が続いていますが、皆様は体調を崩されたりされていませんか? 私は先月胃の調子が悪くなり、2週間ほどほとんど食べられなくなって3kg痩せてしまいました。食いしん坊の私にとって、食べられないほどおもしろくないことはありません。元々胃はあまり強い方ではなく、食べ過ぎるとすぐに調子が悪くなるのです(これ以上食べるな!と体が警告しているのかもしれません)が、1日何も食べずに胃を休めてやると、大抵2-3日で治っていました。ところが今回はなかなか治らない。運悪く母親がプラセンタ点滴を受けに泊りがけで来ていて、あの年代の人なので「何も食べへんかったら死ぬ!」と無理やり食べさせようとするのも悪かったらしい・・・(^_^;) 。

 

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あんまり治らないし痩せてくるので「胃癌かな?」と心配になり、同級生に頼んで胃カメラをしてもらいました。結果は胃炎でたいしたことはなかったのですが、なんでそんなに治らないかは同級生もわからず、「薬を変えて様子を見たら?」ということになりました。私の分析では、食べられないことでストレスがたまっている上に、母親との口喧嘩でますますストレスがたまったのではと思い、母親をさっさと実家に帰してゆっくりしているとだんだん回復してきました。まあ、胃癌じゃなくて安心したのも良かったのかもしれませが・・・。というわけで胃が回復するとせっかく減った体重も戻ってきて、ちょっとがっかり。やっぱり食べると太るし食べないと痩せる・・・というあたりまえの事ですが誰もが素直には認めたくない事を身をもって証明してしまいました。

「しかし食べられないことで胃炎が治らなくなるほどストレスがたまるなんて、よっぽど食べることが好きなんやなあ」と友人には笑われるのですが・・・。

先日大学の名簿を作るとやらで原稿を書かされて、趣味の欄があったので迷わず「グルメ」と書いてしまったのですが、印刷された校正がまわってきて改めて自分のページを見た時に、さすがにこれはカッコ悪いと思って旅行・音楽鑑賞などを追加してしまいました。

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私もスタッフの面接があるので、結構な数の履歴書を見てきましたが、趣味の欄を見るとその人の人柄がよく分かって面白いですね。よくあるのが、読書と音楽鑑賞です。 これは本当にそうかどうかは別にして空欄だとよくないので、とりあえず記載・・と言う人に多いように思います。変わった趣味では「数学パズル」とか「懸賞応募」などがありました。 「外国人としゃべる事」という人もいましたね。 本人は英会話の勉強の一環なのでしょうけど、文字通り捉えるとなんか変わった趣味に思えてしまいます。 「寝ること」と書いてきた人もいます。本人は大まじめなのでしょうけれど、これは趣味なのかなぁ? 残念ながらその人は採用されていませんでしたが。 前職場の看護士さんの履歴書には「パチンコ・競馬」と書いている人もいました。 もちろん世の中では非常にポピュラーな趣味でしょうけど、履歴書の中では見かけない文字ですね・・(^_^;)
さすがに「グルメ」と書いている人は見なかったように思います。これは履歴書向きな趣味ではないようです。もしいたら、話が弾むのになぁ・・(^○^)。

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クリニックに来ていただいている患者様の中にも多彩な趣味の方々がいらっしゃいます。 この前は絵画を趣味にされている方から展覧会のお誘いを頂き、西宮のギャラリーに行ってきました。
今回の展覧会はなんでも絵画の先生達が共同主催するものだそうで、「自分の作品も混ぜてもらったので、自分の作品はともかく他の皆さんの作品はすばらしいですよ・・」とその方の弁。 実際に行ってみるとなるほどすばらしい作品の数々です。 絵心のない私でも、「ちょっとその辺にあるような絵とは違うなぁ」というような事は感じます。その患者様の絵もなかなかどうして・・十分に他の皆さんと張り合っているじゃないですか。すばらしい趣味を持たれていることは本当に羨ましい限りです。
時々、先輩医師の方々から「家を新築したので遊びにきて下さい」とご招待を頂く事がありますが、お家は立派なのですが、壁に一枚の絵もない時はなんだか寂しくなってしまいますね。 お家は古くても、その方の趣味がよく現れた絵画が飾ってある方がなんだか素敵な人生を歩まれているように思ってしまいます。

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以前に兵庫県立近代美術館にゴッホの作品展があるということで友人と行ったのですが、すでにゴッホ展は終わっていて次の現代美術展になっていました。(だいたい、展示の開催期間も知らないような人間なので、いかにその分野に明るくないか・・というの分かってしまいますが・・・)それでもせっかく来たんだから・・という事でよくわからない現代美術展にそのまま入ることにしました。 一緒に行った友人はともかく、私は現代美術などには全く無縁なので、入るなり目を見張る驚きの数々です。ただ、残念ながらこの驚きは「感動」の驚きではなく「ひょぇ!!」というような本当に「驚いた」驚きです。 (あぁ・・全く意味不明な文章になっている・・)
おおきなキャンバスに「○」がかかれているだけ、、、とか、、、どう考えても幼稚園の生徒のスケッチじゃないかと思うものが飾ってあったり。なんでもないカーペットが天井から吊ってあったり・・・壊れた自転車に空き缶を一杯くっつけたり・・ともう、それは訳のわからん世界です。

 

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一緒に言った友人はそれでも数々の作品に真剣に見入っています。
柴田: 「ねぇ・・そんなにいい作品なの?」
友人: 「・・・・・・・」
柴田: 「へぇ。見る人が見たら違うんだね。 私にはガラクタにしか見え
    ないけど」
なにかに真剣に思いをはせる友人に感心していたところ
友人: 「これだったらうちの子供でもデビューできるよ。きっと。将来は
    現代アート作家として有名になって、M子(彼女の子供の名前)に食べさせてもらえるかもね!」
柴田: 「えぇ、、そんな事考えてたの?」
友人: 「きっと、何の情報にも洗礼されていない生まれたままの子供の感性というのがこの作品群の
    テーマなのよ! きっと!」
柴田: 「ホントかなぁ・・そんな風に思えないけどねぇ。」
友人: 「ま、、そんな事はどっちでもいいけど、うちの子のスケッチとよく似ているからきっと、うちの子は
    芸術の才能があるんだと思うんだ・・」

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・・・とこの会話を聞いただけでも、我々がいかにその場には無縁の人種かという事が暴露されてしまっているのですが、その中でも一つだけ本当に感心したものがありました。
作品そのものは例によって、私には理解不能だったのですが、その作品を作っている状況をビデオで一緒に放映しているコーナーがあったのです。出来上がっていく作品そのものはともかく、その製作者及びスタッフの人達の真剣なまなざしと緊張感は、映像を通じてもビシビシ伝わってくるものがあります。
「あぁ・・本当にこの人達は真剣で、この世界に魂をかけている・・」と感じるものでした。何かを伝えるために真剣に取り組む姿勢・・というのが重要なのかもしれないな、と思い直した事はこの日の収穫だったかもしれません。

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そんなこんなで芸術の話は無理なので、私が最近真剣に取り組んでいる事を少しご紹介します。 
何度も書いていますが、メソセラピーの研究に最近はかなり入れ込んでいます。 脂肪を溶解させる薬剤を脂肪に直接注入することでその部分の脂肪を溶解させて部分痩せさせるものです。 これがなかなかどうして上手くいく人と行かない人があったり、赤くはれあがる人がいたり、安定した効果を得ることができません。 ただ、効く人にはすごく効果があるので、効かないという訳ではなく、どうやって安全に安定した効果を出すかという課題に取り組んでいる訳です。 もちろん、インターネットで文献を検索したり、学会誌の論文を見る、知り合いの医師やMRさんなど使えるコネクションは総動員して研究しています。そのような中で、ある海外の医師の方のお話として一枚のファックスを入手しました。

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そのファックスはあるステロイドの副作用報告でした。日本でもポピュラーなステロイド系の薬剤で、花粉症やアレルギーの治療によく使われているものです。 副作用報告とは、その薬剤を筋肉注射したときに、その部位がしばらくの期間凹んでしまう・・というものでした。確かに、この副作用は結構よく知られた話でして、私の知っている中でも多数の実例があります。 数ヶ月間はその注射した部位が指で押したように凹んでしまうのですが、その後少しづつ、元に戻ってきます。日常生活には全く支障もなく、凹むという以外に副作用はないのですが、とにかく「凹んでいるのが何か気持ち悪い」と患者様が嘆いていたことを思い出しました。腕だと凹みが目立つのでお尻に注射して欲しいと言う要望を聞いたことも思い出しました。

しばらく考えているとなぜこの文献をファックスしてもらえたかの意味がつかめてきました。

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早速、その医師を紹介していただいた方に、こちらの考えている事や質問状を送りさせていただきましたところ、実に丁寧にそして詳細に渡るお返事をお聞きする事ができたのです。 
その国では部分痩せと言えば、Aと言う薬剤を使うのが常識になっているようでした。 しかし問題はなぜ、その薬剤が組織に凹みを作るのかが完全なメカニズムが解明されていないのです。(そういえば、学会でもあくまでも副作用症例として紹介されているだけで、部分痩せの手技として紹介されている訳ではありません。) 日本ではメソセラピーといえば、Cという薬剤を使う事が非常にポピュラーですが、その先生はCでは安定した効果を出せないので使う意味がない、おそらくCを部分痩せに使っているのは日本だけなのではないか・・という意見でした。 
その先生の症例を拝見させて頂いたところ、9割以上の患者様に安定した効果を出されており、しかもそれ以外の副作用を併発することもなく安全な利用を実現されていました。もちろん、ただAを注射すればよいという単純なものではなく、各種の補助薬剤を混合しているのですが、Aが主成分である事は事実です。

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ただし、ステロイド系の薬剤なので大量投与ができない為、顔などの小さな範囲の部分痩せに限定した利用をする事と、数ヶ月間で元に戻るので、再び投与が必要である事を難点としてあげられていました。 しかし、このような問題点はボトックスやヒアルロン酸と全く同じであり、むしろ元に戻るのはある意味「利点」でもあります。
もちろん、これからまだ研究を行う事がいろいろと残っていますが、明るい兆しが見えて来たことで、ちょっと自分の中では興奮状態・・・になってきました。前にも書きましたが、美容の世界で膨らませることは比較的簡単なのですが、凹ませるのは非常に難しいので、その手法の一環として確立できると多くの皆様の悩みを解決できることになるからです。しかも安全で手軽な方法であれば、それは願ってもない事だと思います。

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最近は人と会うと、「ここをこう膨らませて、ここを凹ませて、このシワをとって・・・」と勝手に顔をキャンバスに想像を膨らませてしまうような自分が少し怖いのですが・・・。 これって一つの「趣味」と考えていいのかしら?
きっとピカソも、そんな事を毎日、想像をしていたんじゃないかなぁ。でも彼の場合は、膨らませるにも凹ませるにも限度を知らなかったみたいですけれど・・・(^_^;)

今後の研究成果にご期待ください。