第21回 (2004年12月) 「夕陽と詩人と赤ワイン 」

  

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こんにちは! 異人館通クリニックの柴田です。
急に寒くなったかと思うと、もうクリスマスですね。本当に時の経つのはあっという間です。クリスマス、お正月と、美味しいもの目白押しの季節。
あらら…今回はまたまたグルメのお話に逆戻りしちゃいましょう。

最近「超」が付くほどの面白い人に出会ってしまいました。本当はもっと前から知っていたのに、そんなに面白い人とは知らなかっただけなのですが…。

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その人とは、ある薬品会社の学術担当のKさんです。学術担当というのは、簡単に言えば薬の知識が豊富で詳しい説明ができる人のこと。本当は営業担当の人も薬に詳しくなければならないはずですが、営業の人は他の仕事(ゴルフと接待??)が忙しいのか、学術担当と分けられているのが普通です。そして「薬品会社の学術担当」と言えば、痩せ型で神経質、まじめで面白くない、と相場が決まっているんですね。(学術の方、ゴメンナサイ…でも当たっていますよねぇ、、(^o^))
それとは裏腹に、薬品会社の営業の人(いわゆるプロパーさん)は不真面目で調子がよく、(こちらもゴメンナサイ・・・でもやっぱり当たっている、、(^o^)) 面白い人が多いのです。一般的にお酒と美食のしすぎで、太っている人が多いのもこちらの方です。
私の研修医時代からの付き合いの某薬品会社のプロパー(今はMRと言いますが)Y君などは、昔はキムタクもびっくりの超ハンサムでめちゃスタイルも良かったのですが、いまや営業成績が良すぎて顔は倍にふくれ、体重も1.5倍のおっさんに。でも持ち前の調子良さはますます磨きがかかり、しゃべりは天下一品。やっぱり天は二物を与えず・・・・かぁ。

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…と話がそれてしまいましたが、その学術のKさんはちょっと違います。
普通の学術の人は、まじめで面白くない上、控えめでおとなしく、ぼそぼそしゃべり、饒舌な人はめったにいないものです。しかしそのKさんは饒舌そのもの。1回質問するとその回答が30分は続きます。声も高くてまさに「しゃべりまくる」という感じ。さすがにいろいろなことを良く知っておられて、とても勉強になるのですが、「たまには私にもしゃべらせて」と言いたくなるぐらい、延々としゃべり続けられるのです。だからそこに電話するのはかなり暇な時間でないといけません。そう思って昼休みにかけたりすると、昼休みがなくなってしまい、お昼ご飯が食べられなくなった事も数回。
Kさんは学術的な話をされるのが大好きらしく、私が難しい質問をすればするほど生き生きとする様子。何回か電話しているうちにすっかりお馴染みさんのようになってしまいました。そのうちKさんは、「先生、学会か何かで東京に来られることはございませんか? 東京に来られることがおありでしたら、ぜひお食事でもご一緒させていただきたいのですが…」と誘って下さるようになりました。営業の人ならいざ知らず、普通は学術の人に食事に誘われることはまずないので不思議に思っていましたが、遂にその謎が解ける日がやってきました。

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その薬品会社で米国から逆輸入している商品の取引について営業の方に相談すると「うちのKが直接対応させて頂きます」と…。
「うん???」
どうして学術の人が取引の対応までするのかな?と思いましたが、そのKさんは打ち合わせに神戸まで来て下さる事になりました。電話では何回もお話していましたがお会いするのは今回が初めてです。

「お電話では何度も失礼しました。N製薬のKでございます」

おやまぁ!! 全く想像していたイメージと違うじゃないですかぁ!
如何にも上品なスーツに、オーダーメイドのストライプシャツ、白いカラーとカフスに金ボタン。それにカーネルサンダースがしているようなサスペンダーがとっても個性的。雑誌に出ているようなダンディさんです。
(雑誌といってもメンズノンノとかのファッション系ではなく、「日経ビジネス」とかで「もてる男はいつでも不良少年」みたいな特集に出てくる「中年おやじ」の方です。)

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とても学術担当の方には見えなかったのですが、学術のKさんというのは実はその会社の常務だったのです。その会社は
社員数の少ない会社らしく、常務が学術を兼任されていたという訳です。

お仕事の打ち合わせの後、念願の食事会となり、Kさんがご馳走してくださることに…。そこで私が神戸で一番気に入っているフレンチレストランにでかける事になりました。(残念ながらこのレストランは私のお気に入りナンバーワンで、暇で?静かなところも気に入っているので、お店の名前を出すのは控えさせていただきます。宣伝できなくて、地味なシェフには悪いのですが…。皆さんにもそんなお気に入りのお店があるでしょう?)

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席につくとソムリエが「何かお飲物でも如何でしょうか?」と例によって聞いてきます。「のどが乾いたから最初はビールを一杯もらおうかな」なんていいかけると

K氏 「シャンパーニュのボトルはどのようなものを置かれていますか?」

同席していた事務長は目を白黒。
「え、いきなりシャンパンをボトルですか??」
(それも「シャンパン」とちごて「シャンパーニュ」やで…!と耳打ちする事務長。シャンパーニュのパを鼻にかけたアクセントまで真似しながら…)

そんな驚きをよそにワインリストに真剣に見入るKさん。

K氏 「ごめんなさい。ワインを選ぶ時はしばらく沈黙しますので…」

と言うとワイン選びの目は真剣そのもの。
それまでの饒舌なおしゃべりはぴたりと止まり、しばらく沈黙が…。

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そしてKさんはソムリエを呼び寄せたかと思うと、
K氏 「それではまず、シャンパーニュをボトルで、次の白はシャブリの グラン・クリュでいきましょうか。今日のお料理には何が合いますかね?ウィリアム・フェーブルの2000年なんかどうでしょう?」
ソムリエ 「ええ、白子と太刀魚にはとても相性がようございます。すばらしい選択かと」
K氏 「それでは赤は…ああ、ジャン・リュック・コロンボのコルナスがありますね。この造り手はいい造り手ですよねえ。美味しいのにリーズナブルで・・・」
ソムリエ 「さすがお目がお高い!ジャンは非常によい造り手でございます。ただ、それをご存知の方は非常に少のうございますので、リーズナブルなままなのでしょう」
う~ん、すごい会話…まったくついていけん。

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アミューズに始まり白ワインがあく頃にはKさんは水を得た魚のように饒舌に。
K氏 「最近はカリフォルニアワインの質は本当に向上しましたねぇ。先生はカリフォルニアなどには行かれることはございますか?」
柴田 「以前に学会でちょっと。 Kさんはよく行かれるのですか?」
K氏 「いいえ、今はね。昔は大学院はカリフォルニアだったものですから」
柴田 「どちらの学校ですか?」
K氏 「スタンフォード大学なんですが、ご存じでしょうか?」
(ほうほう…スタンフォード大学なんか知らん人はおらんでしょ!)
柴田 「では日本の大学を卒業されてからアメリカに?」
K氏 「いや、私は日本では大学は出ていないのです。」
柴田 「そうなんですか? ではどちらの?」
K氏 「コーネル大学なんですけれどもね。女房はあんまり人に言うなと言うんですけれど…。」
(「ひょえ!」 と驚く事務長。)
柴田 「じゃ、音楽などはお好きですか?」
K氏 「ええ、バイオリンを少したしなむ程度ですが…」
(ええ、、ぇ!バイオリン・・・・!!)

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事務長 「バイオリンが趣味なんですか?では普段時間があるときにこんな事やっているんですか?(バイオリンを引くまね)」
K氏 「いえいえ。最近は時間がある時は本当に好きな事しかしなくなりましたねぇ」
柴田・事務長 「え、それは何ですか?」
K氏 「夕日を眺めながら詩を読む事なんです。世の中にこれ以上に楽しいことがあるでしょうか?」
(柴田・事務長はお互いの顔を見てしばらくここで固まってしまう)

・・・・・・とここまで書くと絵に書いたような嫌味なオヤジに思われるかもしれないのですが実際は全く逆なんです。嫌味は全く感じられず、本当にお話は面白く知的でユニーク。これほど楽しい会話をした事は生まれて初めてかもしれません。同席した事務長もKさんのお話の楽しさにとりこになってしまったようでした。
(「でもきっと友達少ないでぇ」…とは事務長の弁。そういう彼も「日本マイノリティ協会会長」を自負する変わり者なのですが…。だから意気投合したのでしょう。)

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宴もたけなわ、Kさんお勧めのジャン・リュック・コロンボのコルナスを、Kさんのまねをして大きなワイングラスでぐるぐる回して味わうと至福の香りが…「う~ん、いい香りだ…」Kさんもご満悦。
Kさんのおかげで私達も美味しいワインにありつけたわけですが、今千葉に新築中のKさんの豪邸にはもちろんワインセラーがあり、夕陽をみながらワインが楽しめる予定だそうです。そんなセッティングができる土地を、何年もかかって探したとか…。
どうやらKさんはただ者ではないようです。そう思いながらも、「ぜひ遊びにいらして下さい」と言われ、夕陽をみながら詩を詠んでくれるのかなあ、と楽しみにしている私です。今回は、本当に良い食事とは美味しいだけではなく、楽しい会話があって完成
するんだなぁ…って痛感しました。

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そんな超グルメでワイン好きのKさんですが、その割には太っていなくて、もう50歳手前なのに元気一杯、お肌も髪もつやつや。
30代の某プロパーY君より若々しいくらいです。「どうしてそんなにお若いんですか?」その秘訣を聞くと、実はこっそりプラセンタ点滴を毎週されているのだそう。
それと、「ワインはやっぱり赤ですよねえ」…そういえば、フランス人はあんなにフォアグラやこってりしたフランス料理を毎日食べているのに、欧米では最も動脈硬化が少なく、その不思議は「フレンチ・パラドックス」と呼ばれています。その秘密は、やはり赤ワインに含まれるポリフェノール。美容と健康にはとてもいいようです。皆様も今年のクリスマスの乾杯は赤ワインにされてはいかがでしょうか?クリニックの仲間内でも、Kさんの登場以来、赤ワインがブームになっています。大きなグラスで赤ワインをぶるんぶるんと回し、「う~ん、いい香りだ…」という「Kさんごっこ」も大流行!何か楽しい事があると「シャンパーニュをボトルで・・・」と全く意味不明の発言をしたりするようになりました。全く偉大な影響力をもつK氏です。

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そんな訳で今までワインと言えば白一辺倒だった私に赤ワインのマイブームが到来しました。「ワイン飲んで健康にもなって一石二鳥!」なんて勝手に自分に言い聞かせ、毎日大きなワイングラスでぶるんぶるんと赤ワインを回しては「う~ん、いい香りだ…」なんて一人で悦に入っている有様です。
とは言っても私の方は、にわか赤ワインファンなので本格的なワインを選ぶ事なんてできません。そこで、あるレストランの情報をもとに安くてとっても美味しい赤ワインを取り寄せ、密かに楽しんでいます。(1本2000円しないワインなんですけど、めちゃめちゃ美味しい!! これを飲めば皆さんにも赤ワインブームが到来する事間違いなし!)
ご興味のある方には、クリニックに来られたら、こっそりお教えちゃいますね。

そうだぁ。今月はK氏記念として、12月中はそのワインをクリニックにも常備しておきますので、ご希望の方には一杯ご馳走しちゃいます! 
(我ながら太っ腹!の企画)
秘密の合い言葉は「シャンパーニュをボトルで・・・」です。そうすれば、待合いの時にこの赤ワインがでてきますから。
皆様も、美味しいワイン情報があればぜひ交換してくださいね。