第152回 (2015年11月)「クリニック潜入調査:バブル淑女達のラビリンス」

  

こんにちは! 柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。秋晴れの爽やかな日が続くようになりましたね。皆様はいかがお過ごしでしょうか? 私はと言えば、先日母の納骨も無事(ではなかったけど)終わりました。無事ではなかった・・・というのは、初盆に続きお坊さんが1時間も遅れて来たのです。初盆は実家でしたが、今回はお墓でお経を上げてもらうので墓場で待ちぼうけ。ご存知の通り墓地なんでカフェを併設している訳でもなく、待っている間コーヒー飲んで溜まったメールの返事を書く・・・というような事もできません。ひたすら外で何もせずに待って時間が漫然と過ぎていく事についイライラが募ります。どうやらお寺の電話や受付をしきっている住職の奥さんがもう80歳近いのでボケてきたらしい。1回時間を変更したんですが前日にも確認の電話をしたのに、お坊さんに本当の時間が伝わってなかったみたい。四十九日の時にも食事の予約が手違いでできてなかったのもこの奥さんの受付だったようで、何回も続いているのでボケてきたに違いない、という話に。私だったらお寺に大クレームですが、連絡を取っていたのは姉と父だったので、ようやく来られたお坊さんにやんわり事情を説明していました。そんな状況でもなんだか和気あいあいと話しているところを見ると、どうもイライラしてたのは私だけらしい。お坊さんを含め彼らのほんわかした緩い時間の過ごし方を見ると「ご先祖様の前でイライラする事もないよ。そんなに急いでも世の中変わる訳じゃないから・・・」って言われてる気がするのが不思議です。どうも死んだ後天国に行って豊かな生活をするのは私ではなく、彼らのような気がしてなりません。「世の中不公平だぁ。神様はホントにちゃんと私の事も見てくれてるよね?」って不安になるのでした・・・。まぁそんな事はともかく。

 

納骨までは父が入院したりもあったのでバタバタしていましたが、やっと落ち着いて来たので、久しぶりに大好評企画「クリニック潜入調査」を決行する事にしました。今回も潜入先は東京のクリニックに。やっぱり東京は日本の首都だけに情報量や最先端を取り入れる速さも違うので、実際に訪問しても勉強になります。そんな訳でボトックスのメーカーの担当者に「どこか面白そうなとこない?」と聞くと、「ぜひ行って欲しいところがあるんですよ・・・ずっとここはどんなところなんだろうと思ってたんです。ホントに秘密のベールに包まれていて実態が分からないんですが、とにかく気になるんですよねぇ。絶対に誰かに行ってもらいたいんですが、普通の人は行けないみたいで、誰も行った人がいないんですよ」・・・と。うむ、それってもしや、行った人で生還した人がいないという事? もしかすると秘密結社のアジトか? いや、地下組織が非合法活動の隠れ蓑に表向きはクリニックを運営しているのかもしれない。今回は非常に危険なミッションになるかも・・・。「例によって君もしくはメンバーが捕えられ、或いは殺されても当局は一切関知しない。尚このテープは自動的に消滅する」のメッセージが頭の中でリフレインして、ミッションインポッシブルのテーマ曲が流れてきます。身体中のアドレナリンが放出されて気分がハイに・・・。「うん!うん! じゃ、そこにしよう!」ってな訳で、現地に乗り込む前に早速インターネットを使って事前調査です。

 

しかしそのクリニックは完全会員制で、ホームページも会員以外はトップページしか閲覧できないようになっています。しかもトップページには超ゴージャスなクリニックの内装以外の情報は何も載っていない・・・。あ・・・怪しい! 本当にクリニックなんだろうか?? 超バブリーな内装の映像が流れた後は「この先は会員様しか閲覧できません」という文字が出て、載っているのは問い合わせ用の電話番号とメールアドレスだけ。よく見ると神戸の有名なYクリニックの1階下に、殴り込みをかけるように進出して来た新しいクリニックの、東京の関連病院らしい。早速メールをするも返事がありません。電話しても全然繋がらない。「本当に実在するのか? やっぱり地下組織の隠れ蓑なんじゃない?」と疑いながら何度も電話すると、やっと繋がって出たのは片言の日本語を話す中国人らしき女性。もしこれがGメン75だったら(あまりにも古くてすいません・・・^^;)彼らの本拠地である香港に飛ぶ事になるのでしょうが、予算の関係でさすがにそれは無理です。この機会を逃すと次はいつコンタクトが取れるか分からないので、なんとか喰らいついてようやく予約は取りました。しかし予約を取った後に詳しい場所を聞こうと電話しても、またもや電話が全然繋がりません。もしかするとあの日はたまたま取引があって、現場に誰かが来ていた時に電話が鳴って取引相手と思って電話を取ったが、何を勘違いしたか治療を受けたいという一般人からだったので、慌てて予約を受けたフリをしたのではないか・・・。何やら危険な香りが・・・。

それはともかく、せっかく潜入調査に行くのに本当にここがダメだったらわざわざ東京まで行く意味がなくなるので、もう一軒はまともなクリニックを予約しておこうと、雑誌の美STに載っていたドクターの中からまともそうなDr.Sクリニックを選びました。ここの院長は大学卒業後、大学や関連病院で形成外科を15年以上して、大学の講師や総合病院の部長もした後留学して美容外科を学び、美容に転身したという正統派。フェイスリフト手術が得意な先生らしい。直前に電話したのに予約が取れてラッキー! でも直前に予約が取れるという事は、真面目な先生のクリニックは派手なクリニックより流行りにくいって事ですかね。(去年の流行語大賞のクリニックは1ヶ月待ちだった・・・。)

 

さて、潜入調査当日。超バブリーな内装のTクリニックには14時の予約だったんですが、13時半になっても電話が繋がりません。仕方ない、トップページに一瞬流れるビルの名前を頼りに出かけるか。本当に辿り着けるのだろうか・・・。タクシーに乗り、ビルの名前を告げる。一応そのビルはあるようだ。14時少し過ぎそうだったのでダメ元でもう一度電話すると、やっと繋がった!「何回も電話してたんですけど・・・」と言うと「すみません、午前中は他のクリニックに行ってたので・・・」。どんな運営してるんだろうねぇ・・・。ビルの前に着くと、一応クリニックの名前は看板に載っています。恐る恐るエレベーターに乗り、その階で降りるといきなりフカフカの絨毯が。ここはホントにクリニックなの?と思うような、ホームページにあるバブリーな内装は嘘ではありませんでした。中国人っぽいスタッフに迎えられましたが、広々とした待合に他の人の姿はありません。私のクリニックもできる限り患者様同士が会わないようにする為に個室を採用していますが、いくら個室でも人の声は多少聞こえますよね。それすらなく、このバブリー空間に全く私一人だけしかいないんです。もし何かあってここで叫び声を出しても誰も助けに来てくれないな・・・。スパイ大作戦だったら、ここでボスの「ミスターX」が登場しそうな雰囲気です。一応、問診票に記入しようと思い目を落とすと記入項目は名前と住所、電話番号だけ。何?これ・・・? そして、日本語片言のスタッフがいきなりカウンセリングを始めます。「どこが一番気になりますか?」と聞かれて「頬のたるみ」と言うと、ミントリフトを盛んに勧められました。スタッフは2人いて、2人とも中国人。どうやら、ここは最近噂には聞く中国の超富裕層相手専門のクリニックらしい。「中国からお金持ちの人がたくさん来るので、私たちがいるんです」と。その後の詳しいカウンセリングは理事長がするとの事。東京に3つ、神戸に1つあるクリニックの理事長らしいけど、ネットには一切情報が出て来ないのは、わざと載せてないんだとか。

 

ついにミスターX!って感じで登場した理事長は、なんと30そこそこの若さで、思ってたイメージとはかなり違います。額のシワのボトックス以外の治療や首の縦ジワの治療法などを聞くと、額は成長因子の注入、首はマイクロボトックス・・・などと答えてくれたけど、成長因子は韓国製で、量を聞くとなんと当院で使っているFGFの1000倍くらいの単位って、本当かなぁ? 大丈夫なの? 首のマイクロボトックスも100単位くらい使うそうで、去年潜入調査に行った有名なJクリニック(私がボトックス効き過ぎて笑えなくなり、口が歪んだクリニック)よりも多いやん。ホントに大丈夫?? 理事長曰く、ここは新患は取らずほぼ紹介なので、紹介なしでいきなり来られたのは驚いたとの事。彼は北京で3年美容外科をしていたらしい。3人で投資したけど、3人の関係が上手くいかず撤退してここを開いたので、その流れでほとんどの患者が中国の富裕層で、手術や糸などコアな治療はここでして、レーザーや簡単な注入は分院で若手にさせているとの事でした。(分院の院長はほとんどが卒後2-3年目の医者である。)分院の医者は美容デザイナーと名乗っていて、注入の薬剤料は安いがデザイン料を取る。どこをどうしたら綺麗になるかというセンスが必要だから、と。言ってる事は分かるけど、卒後2-3年目の医者が担当するというのは、デザイン以前の問題なのでは? まぁ「技術指導医」っていうのがいるらしいけど。理事長は、ボトックスにしても成長因子にしてもその人の効き具合を見ながらしないと分からないので、長く通ってもらうために会員制にしていると言ってました。言ってる事は分かるけど・・・それよりもお金の匂いがすると感じるのは私だけでしょうか。(だってクリニックって言うよりは、映画に出てくる麻薬王のアジトって感じの超豪華な空間なんですよ・・・ホントに。)

 

カウンセリングの後、パンフレットを見せてくれました。パンフレットで初めて明らかになった理事長のプロフィールは、私立大学の附属高校からその大学の医学部に入り、まだ卒後7年目の医者。研修医を2年した後すぐに大手美容外科に入り、そこも3年で退職。バブリーな富裕層相手のクリニックは、お金持ちのお坊ちゃまの道楽って感じですかね・・・。そして会員価格を提示されてまたビックリ!! 会員には5つのランクがあり、一番いいエグゼクティブクラスは入会金400万、年会費80万円! 2番目のプラチナクラスは入会金150万、年会費30万。その二つのクラスはロールスロイスでクリニックへの送迎がある上に、羽田空港にヘリコプターでお迎えもしてくれ、送迎費は要らないとの事。(ロールスロイスはともかく、ヘリコプターなんて停める場所あるの? ビルの屋上に実際ヘリコプター停まってるのなんて見た事ないし。どうなってるのやら・・・。)海外の人はほぼエグゼクティブに入るとの事で、そのクラスになると往診まであるらしい。う・・・ん。ここまでバブリーなクリニックは初めて見ました。日本でも25年位前のバブルの頃は、不動産でにわか成金になった人達のバブリーな秘密クラブがあったって聞いたんですがこんな感じだったのかな?(私はその頃は駆け出しの医者でバブルとは全く無縁の生活でしたので、その手の世界は全く分からないんです・・・神様はここでも不公平?・・・^^;)さすがに怖気づいて一番安いコースはどれかな・・・と見るとブロンズクラスというのがあり、それは入会金なしで年会費25万だけど、20万円分の施術チケットが付いてるとの事。「料金について詳しくは一覧表をご覧ください」とあったので「一覧表を見せてください」と言うと、したい施術を言えば教えてくれるとの事で、首のマイクロボトックスは14万円、額の成長因子注入は10万円位と。いずれも会員価格で、会員にならなくても受けられるが、料金が倍位になるらしい。何か受けて帰ろうかと思ったけど、これじゃやっぱり予算的に厳しいので、残念ながらここは施術は諦めて退散する事に・・・。外に出ると秋晴れの爽やかな空に太陽が眩しく輝いています。「今までいた空間はなんだったの?」と思う不思議な場所でした。(昔ラスベガスに旅行した時、カジノのフロアーを見学して外に出た時の感覚を思い出しました。ああいう空間って人間の判断能力を麻痺させるのかな?)ちなみに私がいたのは1時間半位だったのですが、私以外の人影は全くありませんでした。まさに異次元空間、バブル淑女達のラビリンス・・・でした。世の中にはこんなクリニックもあるんですねぇ。

 

さてそのバブリーなクリニックを後にして、もう一つ予約していた地味そうなDr.Sクリニックに向かいました。閑静な住宅街にある小さなクリニックで、内装も上品です。ここは喰いしばりの治療に、えらだけでなく側頭筋のボトックスもあり、細胞再生注射「FILORGA」というのもあったので興味を持ちました。受付をして、問診票の記入。問診票の記載項目はたくさんあり、病歴や内服中の薬なども詳しく聞かれます。うちの問診票も同じような感じですが、先ほどのクリニックとは正反対ですね。先生はとても優しくてカッコつける様子もなく、質問には丁寧に、学術的に答えてくれます。若く綺麗に見せるには肌を綺麗にする事と、たるみをなくして引き上げる事が大事で、引き上げは手術に勝るものはなく、スレッドリフトは1-2年で戻ってしまうが、手術もスレッドリフトも腕とセンスが必要との事。「大手のS美容外科で、スレッドリフトで高額な費用がかかったのに失敗して集団訴訟が起こって裁判してるから、気をつけた方がいいですよ」と言われました。「手術や糸でなくても、何でもしますよ」と言ってくれたので、喰いしばりと首のボトックス、プラセンタ顔面注射とFILORGAをしてもらう事にしました。FILORGAというのは、アンチエイジングの最高峰と言われるスイスのクリニック・ラ・プレリーで行われている特殊な治療を基に開発されたもので、羊の胎児から抽出した細胞エキスを注射する事で細胞や臓器を活力に満ちた状態に再生させる治療法だそうです。(なんかヨーロッパ中世の黒魔術を彷彿とさせるような話ではあるのですが・・・^^;)ラ・プレリーでは黒い羊をその場で屠殺して胎児の生細胞を治療に使うそうで、瀕死のローマ法王がその治療で元気になった事から、世界中の富裕層が来訪するアンチエイジングクリニックとして有名になったらしい。(やっぱり黒魔術??)そう言えばFILORGAはモナコであった世界抗加齢医学会議でも盛んに宣伝されてました。FILORGAには元気になる注射とシワに効く注射があるらしいのですが、今回はシワに効く方を右手の甲に打ってもらう事にしました。私は8年前に柴田式高濃度PRPを左手だけに打ったので、今でも左手の甲はシワが少なくふっくらしてるんですが、右手の甲はシワシワだったからです。(それを考えると、今では即効性のあるカクテル注射に取って代わられた感のあるPRPも捨てたもんじゃないなぁ。11月のPRPの申請が上手くいくように頑張らなくっちゃ!)もしFILORGAが効いたら取り入れようかな・・・(^^)。

 

ここではレーザーでも初回は先生がされるそうで、ちゃんとしてる感じです。喰いしばりのボトックスと首のボトックスは私がボトックスが効きやすいと言ったので少なめにしてくれたようで、注入量もちゃんと教えてくれました。プラセンタ顔面注射は両頬と額に打ってもらいましたが、額は痛かった! FILORGAを手に打つのは痛そうだったのでびびってたんですが、塗る麻酔をしたら、額のプラセンタよりはましでした。ここは術後の注意もまともで、ほとんどのクリニックでは注射後すぐにメイクしてもいいと言われますが、ここでは1-2時間は塗らしたり何か塗ったりしないようにと言われました。いろいろ聞きすぎたのか、注射の途中で「もしかして先生?」と聞かれてびびり、何とかごまかしたんですが「あんまり研究熱心だからドクターかと思いました」って言われちゃった。潜入調査ってばれたかなぁ? それでも先生がとても親切で、説明も治療も丁寧だったので、御礼を言ってご機嫌でクリニックを後にしました。

 

ところが・・・注射の翌日から左の眉が上がりにくくなって、その翌日には瞼がかぶって来たんです。額のシワが左半分だけなくなり、3日後には全く左の眉が上がらなくなりました。あれ?なんで? 電話で先生に聞いてみると、「額の筋肉に行く神経が側頭筋の前の方を走っているので、側頭筋に打ったボトックスがその神経に影響したくらいしか考えられないんだけど、ボトックスが広がるのは直径1cmくらいなのでそこまで広がるとは考えにくいけど・・・。量もそれほど多くないし、よっぽどボトックスが効きやすいんですねぇ・・・。アセチルコリンを注射するという方法もあるのはあるんですが・・・」と親身になって考えてくれて「マッサージなどで少し様子を見て、さらに酷くなるようだったら連絡ください」と。去年口が歪んだJクリニックの超有名なF先生は全く電話には出て来ず、看護師が「徐々に改善するから様子を見てください」の一点張りだったので、えらい違いです。5日後、さらに酷くなってきたのと、ちょうど神経の走っている辺りに触ると痛い箇所があったので、プラセンタ注射の針がたまたま神経に当たったのかも?と思って再度電話し「額の左の方に触ると痛いところがあるんですけど・・・」と言うと「あ・・・プラセンタの注射の針が額に行く神経に当たったのかもしれませんね・・・。ただ、神経に針が当たったのが原因ならボトックスより早く治るので、あと1週間くらいで良くなって来るんじゃないかな・・・。できたら写真を撮って送ってもらえますか? そしたらもう少しアドバイスできるかもしれないので」と。写真を送るとすぐに返信が来て、アセチルコリンの打ち方や、電気で神経を刺激する方法なども詳しく教えてくれました。なんていい先生なんだ! Jクリニックとはえらい違いやん! やっぱり有名なだけではあかんわ。まさに「医は仁術」。誠意というものが大切です。術後にちょっとトラブルがあっても、対処に誠意があるとそんなに悪い気はしませんよね。Sクリニックは今まで潜入調査に行ったクリニックの中で一番まともだと思いました。美容外科とは思えないくらい・・・(^_^;)。 

今回は対照的な2つのクリニックを経験しました。カッコいいけど、形から入るタイプの戦略が上手いクリニックと、地味だけど中身のあるクリニック。私はやっぱり後者を目指したいなぁ。地味でも実直に研究を重ね、常に前進を続けたいと思います。「尚、このテープは自動的に消滅する。健闘を祈る!」 これからも頑張りますので、皆様も応援してくださいね!