第134回 (2014年5月) 「人生楽ありゃ苦もあるさ・・・」

  

こんにちは! 柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。4月は暖かかったり寒かったりで風邪をひいていた方も多かったようですが、皆様はお元気にお過ごしでしょうか? 4月初めには去年に引き続き国際学会のため長期にお休みをいただき、皆様にはご迷惑をおかけしました。なんとか無事に帰って来ましたので、今回はその旅のご報告を少し。毎年モナコで開催される「世界抗加齢医学会議」には去年初めて参加したのですが、モナコは初めてでフランスも久しぶりだったので去年はいろいろ失敗しました。タクシーにぼったくられたり、ホテルがひどかったり、レストランがまずかったり…。そこで今年はリベンジしてやるぞ! と再度挑戦です。(レストランがまずいのは食い意地の張った私にとっては一番の問題です。「再度挑戦」というのは勿論、学会ではなくレストランの事ですけど…^^;)

さて人の縁というのは面白いもので、去年地球のほぼ裏側であったモナコの学会の時に「世界最高峰のスパ」で出会ったニース在住のTさん(クリニック通信第123回参照)の甥っ子M君がうちのクリニックにバイトに来ています。最初は今回の学会はM君と一緒に行って叔母さんに会う計画を立ててたんですが、M君が4月から大学院に行くので、学校の都合で行けなくなってしまいました。この年になって荷物持ちなしの一人旅はつらいなぁ…。誰か行かないかな? と探しましたが、例によってコロコロS君は洋食がダメなので除外。大学の卓球部の後輩達に「旅費はこっち持ちにするから、誰か荷物持ちで行かない?」と声をかけてみると、「行きたい!!」と手を上げた子が2人いました。一人は母校の5回生Y君。もう一人は京大医学部4回生のN君です。うむ…2人連れて行くのは想定外。しかも後輩達の話を聞くと、どう見てもN君の方がイケてて、「ホスト」の異名を取るほどよく気がついて、英語もバリバリできるらしい。しかしN君の方が学年が下だし、上下関係を重視する体育会系クラブとしては、学年が上で直属の後輩であるY君を差し置いてN君だけを連れて行く訳にもいきません。Y君は「僕めちゃめちゃ行きたいです! 荷物持ちでも肩もみでもなんでもしたいと思いますので、僕みたいなのでもしよろしければお供させて下さいm(_ _)m」と必死だし…。しかし後輩達の中には「Y君は自己中なとこがあるから、1週間も一緒にいたら先生切れるかも」「お金はかかっても絶対N君も一緒に連れて行った方がいいですよ」という声も。仕方ないのでN君をメイン、Y君をサブとして今回は2人とも連れて行く事にしました。二人のお供を従えて旅に出るなんて、なんだか助さん格さんを連れた水戸光圀さんみたいじゃないですか。我ながら太っ腹!…と言いたいところですが、なんせ二人分ですから経費節減の為に、最安値の航空券探しに最安値のホテル探しと、その後が超大変。水戸の御隠居様も格安航空券やBooking.comのようなサイトがない時代には、旅費の工面には意外に苦労してたのかもしれませんね。

去年はこの通信ではおなじみのK氏のお勧めで、モナコとニースの間のエズという村に泊まったのですが、ホテルをけちったばっかりに大失敗。しかもそこから学会に通うと、朝は道は混むしタクシーにはぼったくられるし…。やっぱり学会ついでに行くところではなくて、優雅にリゾートを楽しむための土地なんでしょうね。しかし今回のK氏お勧めのヴィルフランシュ・シュルメールは、去年ランチにだけ行ったのですがそこのレストランがすごく美味しかったし、風光明媚な街だったので、今年はそこから電車でモナコに通う事にしました。そして今年はM君の叔母さんのTさんにもあれこれお世話になりました。ホテルを調べてもらったり、電車の乗り方を教えてもらったり、切符を取ってもらったり。やっぱり現地に知り合いがいると全然違いますねー。(しかしK氏は地元の人より飛行機や観光には詳しいかも。)1日くらいは観光しようと、日本人ガイドのツアーにK氏お勧めのオーベルジュとワイナリー訪問のツアーを見つけて申し込んだのですが、直前になってTさんが知り合いの日本人Eさんが観光案内を始めたのでどうかと紹介してくださいました。なんとそこはネットで調べたツアーの半額以下です。安いのは車が小さいのと経験が浅いためで、経験を求められるならもう少し熟練した人のツアーもありますとTさんには言われたのですが、車で好きなところに連れて行ってくれるんなら別にガイドに熟練してなくてもいいんじゃないかと思って、Eさんにお願いする事にしました。(ただ、それがちょっとした事件になってしまうのですが…。)

さて、今年になってクリニックのスタッフが入れ替わってバタバタしている合間を縫ってそんな準備を進めてたんですが、なんとメインであった京大のN君が直前になって学校のカリキュラムが突然変わり、行けなくなってしまいました。(N君がいなくなるって事は助さんがいなくなっただけでなく、格さんもいなくなってうっかり八兵衛だけがお供になったようで、なんだか急に不安になってきました…。)そんな中、学会休み前でクリニックの予約が超満員になって大忙しの出発直前の週に、コロコロS君が新人達を残してまさかのインフルエンザ休暇。(これまた彼が大体大事な時にこうなる事が多いんだな…。)あまりの忙しさに私も風邪をひいてしまい、熱と咳に悩まされながら不安な出発となってしまいました。
モナコには空港がないのでニースの空港から入るんですが、当初はニースの空港にEさんに迎えに来てもらってワイナリーとオーベルジュに行く予定でした。しかしそこはニースからかなり遠く、9時間以上のツアーになると聞いたので、その時の体調ではとても無理だと思ってニース近くの観光に変更してもらいました。体調が良くなればニースの近くにもワイナリーがあるので行きましょうとEさんには言われていたのですが、翌日M君の叔母さんのTさんに会う予定だったのに、出発前あまりに忙しくて日本からのお土産を持って行くのを忘れたので、ワインでも買って行こうと思ってそのワイナリーに行く事にしました。しかし、いざ向かったものの、20分ほどで着くはずの場所になかなか着きません。「私も行った事がなくて」「あれ?どの道だったかな?」と何度も道を間違えられるので「しまった」と思ったのも後の祭り。ニースはめちゃくちゃ陽射しが強く、暑くてクタクタになりながら山道を1時間以上走ってやっと着いたのに、ワイナリーは閉鎖されていて、もうやってませんでした…。「下調べしてなかったもので…すいませーーーん♪」って…。う~ん、下調べぐらいしておいて欲しいよねぇ…。Tさんが「経験を求められるなら…」と言われていた訳がよく分かりました。やっぱり何事もケチってはいけない…と今年も学習。(去年も学習したはずなのに…:;)

ただ初日はかなりはずれましたが、翌日からは結構順調でした。久しぶりにお会いしたTさんはガイド業をしているEさんより上手な運転でモナコが一望できるチュービ村という綺麗な村に連れて行ってくださって、そこのレストランはめちゃ美味しかったし、話も弾みました。その他、ヴィルフランシュ・シュルメールの近くのボーリュー・シュルメール(シュル・メールというのは「海辺の」という意味なんだそうです)や、その付近のコート・ダジュールでも屈指の高級別荘地というキャップフェラ半島の丘の上にそびえるヴィラ・ロスチルド(20世紀初頭に大財閥に生まれた男爵夫人が世界で一番眺めのいい場所に建てたというイタリア・ルネッサンス様式の邸宅)にも連れて行ってもらって感動!
Tさんが切符を取ってくださったので、ヴィルフランシュからモナコの学会場までもスムーズに通えました。勿論最初は切符位自分で買うのにお手間をかけて申し訳ない…って思っていたのですが、さすが現地の人ですね。ヴィルフランシュの駅はモナコと違ってとても小さな駅で、駅舎が昼休みには閉まってしまい、無人になってしまうんです。自動販売機で切符を買ってみようとしたら全く作動しません。え? 自動販売機も昼休みなの? まさか機械まで優雅にワインを飲みながら2時間かけて昼食している訳じゃないでしょ。それとも単に壊れているだけ? 多分、機械が壊れたり使えなかったりすると昼休みでも文句言われたり呼び出されたりするのが嫌なんで、電源抜いて昼休みに行ったに違いない。あ…なんちゅー奴らだ! と…どこまで行っても日本人の感覚が拭えないのですが、とにかくTさんが手配してくれてて良かった。

ところで、活躍が危ぶまれていた同行のうっかり八兵衛ことY君も、自己中な面は見られず、てきぱきした行動力と英・仏語力で活躍を見せてくれました。Y君は大学で仏語を取っていたんですが、なんとなくそれが使えているように見える…。(私は仏語はさっぱりなんですが、彼は意外に使えているようだ。大学の第二外国語なんて大抵の人が試験前に徹夜で丸暗記してなんとかクリアした後は綺麗さっぱり忘れるものなんだが、最近の子は少し違うのかな?…^^;)電車やバスの乗り継ぎでも結構役に立ったし、学会に行く日は朝早く起きて駅までの道を調べてくれたり、学会会場でも医学生らしく「先生、あそこでこんな面白い講演してましたよ」ってメモを取ってくれたりパンフレットを集めてくれたり、街では朝市をどこでしてるとか、安いチーズやワインがどこで売ってるとかの情報まで集めてくれました。(ま…どうでもいいような事かもしませんが、海外ではこの手の日本人的な気配りってホントに重要なんですよね。彼も「弥七」くらいには昇格させてあげよう…。)

そして今年は食事ではずれがなかったのがまた良かった。今年はK氏お勧めのネットの海外旅行ガイド「トリップアドバイザー」(海外版食べログみたいなもんですな)で上位のレストランばかりを目指して行ったら、当たりばっかりでした。ホテルやレストランの人たちもとても親切だったし、レストランだけじゃなく、ニースの朝市で仕入れたパテやパン・チーズ・オリーブをあてに、近所の酒屋で買ってきたプロバンスのスパークリング・ロゼワインでの部屋飲みもいけてました。今回はなんだか運の「引き」が違います。それが証拠に近所のお菓子屋さんで買ったマカロンまでが今までの人生で食べたものの中で最高に美味しいじゃないですか! これは今年は私の人生も大きく開運するに違いない! 今までの恨みを今年すべて晴らしてヤルんだ! と、マカロンをほうばりながらガッツポーズです。ホント、食べ物の美味しいものに当たると当たらないではこんなに旅行の印象が違うもんなんだなと思います。後日友人にこの事を話したら、「そりゃそうだけど、あんたほど食べ物に思い入れている人ばっかりじゃないと思うけど…」と言われてしまいましたが。皆さんだってそうですよねぇ…。(そうであって欲しい…)

あ…そうそう、肝心の学会はどうやったん? と言われそうですが、(いかにも「ついで」って感じですが)今年は去年より人が多くてびっくりしました。もう本当に世界中から人が集まっている感じです。アンチエイジングは世界で年々期待が高まってきてるのが肌で感じられますね。講演はライブデモが多かったので、顔面の解剖やボトックスの新しい打ち方、各種注射の手技などは勉強になりました。中でも興味を引かれたのは、幹細胞から抽出したタンパクを使った、シミにもシワにもハゲにも効くという新薬。(全体にハゲ治療がすごく増えていました…。)これらの情報を基に、さらに研究を進めたいと思っています。この辺の学会の情報は紙面の関係で、また後日話題にさせていただきますね。

今回はなんとなく水戸黄門の話を出したのですが、私もずっと見ていた訳ではないのですがあのテーマソングだけはなぜか耳に残っています。おなじみの伴奏から助さんのソロで始まるあの歌は皆さんも一度は聞いた事があると思います。「人生楽ありゃ苦もあるさ。涙の後には意地も出る。…後から来たのに追い越され。泣くのが嫌ならさぁ歩け…♪」ってやつです。めちゃくちゃ単純な歌詞がこれまた単純なメロディに乗っているだけなんですが、なんかあの番組にはなくてはならないぴったりハマった名曲だと思います。「人生楽ありゃ苦もあるさ…」って当たり前なんですが、やっぱりホントにそうなのよ。そうなんですよ…って思います。旅って予測のつかない事が沢山あって、想定外のトラブルに見舞われたりするけど、それを何とかクリアしていく時に人間の知恵が出ます。そして、その時に思わぬ人との出会いがあります。思っても見なかった人が活躍して、周りの人を驚かせる事があります。笑いあり、怒りあり、時には涙あり。そして、普段の生活ではない自分を見つける事があります。水戸光圀さんがあのご老体になっても旅を続け、その旅の最中にあった話が毎回ドラマとなっているのは、そんな旅が人生に与える影響を多くの人が感じているからで、それであのような長寿ドラマになったんでしょうね。(ま…あれはフィクションではありますが…^^;) 
 学会後、Y君からお礼のメールが来ました。「先生、1週間の学会旅行お疲れ様でした。そして今回の旅行に連れて行っていただいて本当にありがとうございました。今回の旅で僕は学会での学問的なことだけではなくて、フランスの文化、言葉、料理、家、そしてマッサージやツボのことなど多くの刺激を受けました。今後の人生の糧になるというか、少し人生設計を変えるぐらいまで影響を受けたと思います。本当に勉強になりましたし、楽しかったです。ありがとうございました」今回は彼の意外な活躍に驚きましたし、彼自身もこの旅を通じて一段と成長したと思います。ま…今思えばちょっと頼りなかったけど、Y君も立派に「助さん」なき後の「角さん」の役割を果たしていたと思います。色々とありがとう。そしてこれをいい経験に、素晴らしい人生を歩んでください。これからの人生、楽あれば苦もあるだろうけどね。ファイト!