第129回 (2013年12月) 「私なりの餞別 」

  

こんにちは。柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。今年は秋があっという間に過ぎ去って、急に冬が来た感じですね。なんだか夏と冬がどんどん長くなって、春と秋がどんどん短くなっていくような気がしますが、皆様風邪などひかれずにお元気でお過ごしでしょうか? 当院では、ちょっと寂しげな秋の日に一つの別れがありました。4年半もの間クリニックで活躍してくれた韓流B君が、徴兵制度のために2年間韓国に帰る事になったのです。日本では戦後の平和憲法制定の後は徴兵制というものがなくなったので、この言葉だけ聞いても何やら物騒な感じがしますよね。最近の韓国の情勢からみんな心配してたんですが、B君は語学ができるので通訳班の試験に合格したようで、幸い最前線には出なくて良さそうな状態になってちょっと安心。2年後にはまたクリニックに帰って来てくれるというので、無事を祈るばかりです。B君との思い出は数限りなくあります。毎月クリニック通信と最新情報をアップしてもらってたので、キャンペーンメニューを一緒に考えた事も多く、4年前の12月のキャンペーンはB君の命名だったね、とか・・・。学会に一緒に行ったり、クリニックの問題を一緒に考えた事もあり、いろいろと懐かしい思い出がいっぱいです。2年後にはきっと鍛えられて、たくましくなって帰って来るのでしょうね。

ただ、話を聞くと軍隊ってやっぱりすごく厳しいようで(そりゃ当たり前か・・・)、通常の訓練ももちろん厳しいんだけど、狭い部屋で催涙弾を投げられて防毒マスクを外すというようなすごい訓練もあるのだとか。2年間で休みは10日ほどしかなく、その他は街にも出られないし、友人にも家族にも会えないそうな。通訳班に行く人は少ないので情報が少ないらしいのですが、週末に少しネットができるくらいらしく、多分本も読めないし勉強もできないし(B君にはこの辺がつらいようでしたが)、もちろんお酒も飲めないそうです。うん。私だったら間違いなくこれが一番つらいな。(毎月何かにかこつけて開いているスタッフとの宴会もできないなんて・・・。)でも私が以前沖縄に行った時は米軍基地の周辺はもう風俗店街なのかと思うくらい飲み屋が沢山あったように思いますし、週末ともなればアメリカの兵隊達がベロンベロンに酔っ払っているところも見たし、酔っ払った上に人身事故を起こしたり婦女暴行とかの事件を起したってニュースもよく聞くんですが、あれはまた別の世界なのかな? いずれにしても、世界のニュースを見ていると平和な国に生まれて良かったとつくづく思います。(そうでなければ美容医療なんていうのも存在しないでしょうしね。)

B君の送別会は5回くらいしました。入隊日がすぐに決まらなかったのと、今いるスタッフだけでなく去年アルバイトに来ていた私の大学の後輩たちもB君が帰る前にぜひ会いたいというので、全員が集まれる日がなかなかなかったのとで、何回もする事になったのです。宴会は毎回大いに盛り上がりました。B君はパンとお肉が大好物で、いつもの宴会では他の肉食女子と奪い合いになるのですが、送別会では少しは譲ってもらえたようです。B君とは大の仲良しで一時○モ達ではないかと噂されていたコロコロS君は、B君が韓国に帰ってしまうと分かった当初はショックで立ち直れない様子でしたが、最近は5月からアルバイトに来出したジャニーズ系のM君に心変わり(?)したのか、だいぶ元気を取り戻した様子。宴会ではS君がM君を必ず隣の席にはべらし、めちゃくっついて仲良く飲んでいるせいか、B君がM君を「ライバル」と呼ぶ場面もあり、みんなの笑いを誘っていました。B君もM君も神戸大の4回生で、M君は新米ながら仕事を覚えるのも早いし、イケメンなのでライバルなのかな? それよりもS君を巡ってのライバルなんでしょうか。しかしB君がM君を「ライバル」と呼ぶと、M君はすかさず「お譲りします・・・!」(これにはコロコロS君は「な、なぬー!!」とショックを受けていた様子でしたが・・・。)うちのクリニックのスタッフのうち女子はみんな男っぽく、一番女子なのがS君だと言われているので、そーゆー争い(?)が起こるのかもしれません・・・(^^)。こりゃ沖縄の米軍基地周辺よりも凄い世界なのかも・・・^^;)。

3人以上人が集まれば社会が生まれる・・・という言葉がありますよね。独りっきりで生きていくのは寂しすぎますが、ドロドロした人間関係っていうのも、なんか私は苦手です。ご存知の通り当院は美容皮膚科なので患者様は圧倒的に女性が多いです。他のクリニックをホームページで見たり潜入調査をしても、スタッフの方も大半が女性です。男性がいるとすれば院長一人という事が多く、当院のように院長が女性で男性スタッフが多いというケースはどうも稀ですね。ま・・・私が一番男っぽいので自然とオトコっぽい女性スタッフが増え、バランスを取るために女性っぽい男性スタッフが入って来たってところでしょうか・・・。その為、今の当院にはいわゆる「女だけの世界」というのがありません。「女だけの世界」って何?と言われれば何と定義していいのか分からないんですが、テレビのバラエティでAKB48のメンバーの一人が司会者から「AKB48の皆さんって全員仲良しなんですか?」と聞かれた時、その子は暫く沈黙した後に「いわゆる女だけの世界ですから」と一言だけ答えていました。10代のうら若き乙女の表情が、その時だけは演歌に出てくるような人生の苦酸を背負った40代の表情になったのがとても印象的でした。何と定義していいのか明確でなくても、世の中に「女だけの世界」が存在するのは明白なんですね。移転前の異人館通クリニックはスタッフが全員女性だった時期があり、昔のスタッフから聞いたのですが、その頃はやはり「女だけの世界」があったそうな。(気づいていないのは私だけだったという、なんとも呑気な状況でしたが・・・。)幸いにして今はそのような煩雑な人間関係に気を煩わせる事もなく、治療と研究に専念できるのはありがたい事です。女性っぽいとはいえやはり男性がいると、女だけの世界とは違うんでしょうかね。

そして当院にはB君をはじめ留学生のアルバイトが多いのも特徴だと思います。留学生の子達は日本語というハンディキャップはあるものの、同じ世代のアルバイトに比べると明らかに優秀な事が多いと思います。それに新しい事に対してチャレンジするという意欲を持っていますし、すごく真面目です。(最もそういう素質がなければ海外に留学しようなんて思わないんでしょうけど。)以前のクリニック通信でも何度も書いたのですが、もし留学生がいなくなれば、もうコンビニエンスストアをはじめとしてファーストフードやファミレスなど、アルバイトを中心に回っている店舗は全く成立しなくなるんじゃないかと思うのです。それくらい、いつの間にか日本も海外からの留学生が多くなったんですね。そんな訳で、いつしか私も積極的に留学生や外国人を採用するようになりました。中でもB君は優秀で、ホームページやシステムの仕事をほとんどしてくれていました。B君の存在がさらに積極的な留学生の採用に繋がったのは間違いありません。

さて、私が留学生を面接する時必ず聞く質問があります。それは「どうして日本に来たいと思ったんですか?」です。日本人であれば「どうして当院で働きたいと思ったんですか?」で終わるのですが、留学生ともなればまず、どうしてアメリカとかヨーロッパでなくて日本なの?って自然と思いますよね。そして今まで会った留学生のうち8割位の人が答えたのが「日本のアニメ(もしくは漫画)が好きだから・・・」でした。最初はたまたまそんな子が最近は多いのかな・・・程度にしか思ってなかったんですが、これだけ続くともう「たまたま」ってことはないですね。試しに海外からの留学生のアルバイトを沢山雇っているお店をしている人に聞いても同じ答えでした。私も確かに学生の時は宇宙戦艦ヤマトなどのアニメは好きでしたが、だからと言ってそれに憧れて海外に行くほどのモチベーションになるものとは思えませんでした。最初の頃は、日本の学生よりもはるかに優秀な留学生達の、日本に来るモチベーションがそれまでに見たアニメであったという事に違和感を覚えていたのですが、彼らと接するうちに段々とその事も理解できるようになってきました。私達が学生の頃に憧れた国は、アメリカがナンバーワンでその次がフランス・・・って感じだったと思うんですが、どちらも憧れた理由って何かと聞かれれば、ちゃんと答える事ができないんですよね。結局それは当時見た映画だったり、コカ・コーラのCMだったり、ロックンロールのような音楽だったり、ジーンズを中心としたカジュアルファッションだったり・・・と、小さい頃に受けた「異文化の洗礼」だったような気がするのです。  

そうして今度は日本が海外の子供達に異文化の洗礼を授けて、その洗礼を受けた子達が日本に憧れて来日するという事が実際に起きているのです。恐るべき「文化の力」です。まさに何十年もかかる壮大なプランなのかもしれませんが、文化を輸出し、それが認められるという事は何十年も経ってその効果が現れるという事なんですね。子供の教育が国の一番大きな事業だと言っていた人がいますが、今になってようやく解った気がします。

「ペンは銃より強し」・・・銃で人を脅して動かそうとすると、確かに一瞬で効果を出します。しかし脅す事によって一時的に人は動くのですが、恐怖のモチベーションは長続きしません。ところが、文化のような人間の精神に深く浸透するモチベーションは長続きします。そして、誰も強制しないのに、その人がその人の意思で動き出します。文化の創造って凄い事業なんですね。韓国の皆さんにもいつの日か、銃ではなくペンの力で平和が訪れる事になるよう祈るばかりです。何十年、何百年かかるかは分かりませんが、文化を育ててお互いにそれを輸出する事で、それが可能になるような気がします。今と昔は違うので、すぐに戦争になって命の危険にさらされるという訳ではないと思うのですが、どうも一緒に過ごしてきた人が軍隊に入隊するという事で送り出すのは複雑な気持ちになります。  

与謝野晶子の有名な詩に「君死にたまふことなかれ」というのがあります。「あゝをとうとよ、君を泣く、君死にたまふことなかれ・・・」から始まる有名な詩で、学生の頃の教科書に登場していたので、ご存知の方も多いと思います。明治時代の軍国主義が横行している時代の詩で、当時は戦争への批判、そして天皇への批判だとして大問題になったと習いました。(これには諸説あるようですが・・・。)ただ、政治批判なのかどうかは別にして、戦場に向かう弟に「死んだらあかん、生きて帰って来て」と言う切実な心情が出ていて、今この時代に読んでも心にしみる格調高い詩だと思います。この詩は1904年に発表されたので、もう100年以上前のものなんですね・・・。彼女も100年の時を経て、こんなに平和な時代が日本に訪れるとは想像もつかなかったのではないでしょうか。中学生の時だったか高校生の時だったかも忘れてしまいましたが、はるか昔に教科書に載っていた詩をこうやって何十年もの時を経て思い出せるというのも、やはり文化の力なんでしょうね。

まぁ・・・私はと言えば「文化」って柄でもないですし、その方面には疎いので、もっぱら仕事の中で何かを伝えようとするしかありません。韓国に帰るB君は眉が薄かったので、最近流行のハゲ注射の研究の一環として、眉にPRPやカクテル注射をモニターになってもらって打ってみました。(私なりのB君への「餞別」です・・・^^;)結果が出るにはかなり時間がかかると思いますが、入隊の2週間前に3回目を打ったので、2年後に会うのが楽しみです。どんな風に生えてくるのでしょうねぇ・・・。郷ひろみのようなゲジゲジ眉になったらどうしよう。(これまた例えが古いか・・・。)入隊前には少し日本を旅行したいと言ってクリニックの仕事を休んでいたB君ですが、最後の注射の日にもホームページの仕事をしてくれて、「やっぱり遊んでるよりここで仕事してる方がいいですね」とも言ってくれました。彼は眉注射後の経過の写真も送ってくれるそうです。でも本当は眉が濃くなってもならなくてもいいんです。ただ、当院のモニターの方には「必ずその後来院して経過を確認させていただく」という約束をしてもらっています。B君にも、この約束を必ず守るようにさえしてもらえれば・・・。2年後、成長して帰って来てくれる事を楽しみにして、B君を送り出したいと思います。是非日本の文化を韓国に帰っても伝えてください。そして、また2年後に戻って来る時は、韓国の文化も持ち帰って来てください。 「君、この約束をたがふことなかれ・・・」くれぐれも元気で、必ず無事帰って来てね!