第12回 (2004年3月) 「プラセンタの驚異」

  

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こんにちは!異人館通クリニックの柴田です。日ごとに春めいてまいりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか?先月は、クリニック通信を読んで頂いた方から「美味しくて健康的な食材」の情報をたくさん頂きました!芦屋のT様からは広島で一番美味しいという広島菜漬、神戸のS様からは能登名産のかぶら寿司と佐賀県の温泉湯豆腐、などなど…。さすが皆様、美味しいものをよく御存知です。最後に一覧で御紹介しますので、ぜひ参考になさって下さいね。

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さて私のそばにもう一人、まだまだダイエットしなければならない人がいます。何を隠そう、私の母親です。今までのクリニック通信でも時々話題に出てきましたが、身長145cmしかないのに60kg以上はあった超肥満体。
本人曰く、昔は「ええとこの子」で子供の頃からグルメしてたからだとか。
(「ええとこの子」だったとは思えない、バリバリの「浪花のおばちゃん」ですが…。)私が子供の頃は母のお腹はクッション代わりで、家族からは「北の湖」と呼ばれていました。「肥満は万病の元」を絵に描いたような人で、私が幼稚園の頃から膝が悪く(もちろん原因は太りすぎです)、私が高校の時には膝は変形し、高血圧で眼底出血を2回起こしていました。医者が要るのは目に見えていたのですが、親戚中に医者がいなかったので、私は仕方なく好きな物理(物理が好きなんて変わってる、とよく言われましたが…)を諦めて医学部へ行ったのでした。

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しかし、子の心親知らず…とはこの事。母は節制や運動は大嫌い。おまけに食べ物も、野菜や果物など、体にいいと言われる物はすべて嫌いなのです。おかきやピーナツ、たらこや油ののった魚が大好きで、しかも食べる量の多いこと!
一口の量がまた多く、父親の2倍は一度に口に入れる。つまり、「バクバク食べる」のです。ちなみに、私の父は容姿も性格も好みも180度母とは違い、「よくあれで一緒にいられるなあ」と思うほど。母は豪快で細かいことは気にしないのですが(もう少し気にすればいいのに…と思うくらい)、父は気が小さくておとなしく、まじめでコツコツ型。(二人一緒に病院に来ても、母は大声でしゃべりまくるので有名ですが、父は静かなので誰も父の存在に気付きません。)父は野菜が好きで食べる量も少なく、もちろんスリム。
その上に毎朝体操と40分の散歩は欠かさず、どこも悪い所はないのに健康にすごく気をつけています。母こそ父の十分の一でも見習ってくれたらなあ、と思うのですが、「そんなん、じゃまくさい」と、何もしないのです。私が医者になってからは、「もうちょっと痩せないと、そこら中悪くなって早死にするよ!」と口をすっぱくして言っていたのですが、全然言うことを聞きません。おそらく今まで私の診た患者さんの中で一番医者の言うことを聞かない、「難儀な」患者です。

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そうは言っても、母は口が達者なので元気そうに見え、血圧と血糖値は高かったのですが、しばらくは眼底出血も起こさずに平穏に過ごしていました。病院には通って来ていましたが、差し入れと言っては10人分ぐらいお弁当を作って来たりし、本人も「太ってる方が馬力出るで!」などと言いながら。
ところが、嵐は突然に…。
最近物忘れがひどくなったなあ、と思っていた矢先のある日。
母 「最近、階段上ったら胸の辺痛いねんけど…」
柴田「えっ!いつ頃から?」
母 「だいぶ前にちょっと痛かってんけど、治まったからほっててん。
   最近また痛なって、だんだん痛なる回数増えてるねんけど…」
柴田「えーっつ! !もっと早よ言いーな!」

「階段を上がったら胸が痛い」というのは狭心症の症状です。狭心症は心臓を栄養している血管が動脈硬化や糖尿病によって細くなり、心臓の血行が悪くなる病気で、ひどくなると血管がつまって心筋梗塞になってしまいます。

心筋梗塞は皆様ご存知のとおり命にかかわる病気ですが、「胸が痛くなる回数が増えている」というのは心筋梗塞になりかけているかもしれない、という危険信号なのです。慌てて循環器内科の先輩に頼んで検査してもらったところ、なんと心臓の血管の中でも一番大事な血管が 90%の狭窄!ほとんどつまりかけで、まさに心筋梗塞一歩手前だったのです。あわや、という所でつまりかけた血管を広げてもらい、命拾い。しかしその検査の時に、腹部の大動脈瘤も見つかってしまいました。これは大変!大動脈瘤はかなり大きくなっており、放っておくと破裂するかもしれません。破裂するとほぼ命はないのです。

最初に胸が痛くなった時に気付いて検査していたら、大動脈瘤もここまで大きくなっていなかったかも…と思いましたが、後悔先に立たず。元気そうに見えていても、体の中では少しずつ大きな病気がが進んでいたのです。

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大動脈瘤が破裂しないようにするには手術しかないのですが、お腹の大動脈を人工血管に取り替えるという大手術です。しかも母の場合、年も年ですし、糖尿病もあって心臓も悪く、頭もボケる少し手前(本人に言うと「まだボケてへんで!」と怒りますが)という悪条件。手術すると術中に心臓が止まることもありえますし、助かっても糖尿病のため、術後に感染(細菌が入って化膿すること)して退院できなくなる可能性も大です。

5年前に膝の手術をした時はもっと元気だったのに、術後3日ほどボケかけて膝も感染しかけたので、今回悪くならないはずがありません。手術の危険性が解るだけに、すべきかどうか非常に迷いました。何人もの医者に相談しましたが、ほとんど皆「リスクが高すぎる」と言いましたし、私もそう思いました。しかし本人はやる気満々。
「手術なんか怖ないで!」「切ったらしまいやん!」
この年になると「手術はいやだ」という人は多いのですが、周りが止めてるのに「手術したい」という人も珍しい。(危険性が解ってないとも言えますが…。)

結局、心臓血管外科の後輩が「日本で一、二を争う血管外科医」を紹介してくれると言うので、まずその病院の血管内科を受診しました。そこでまず糖尿病をコントロールしないと、と言われ、5月末に入院。糖尿病は食事を減らすと少し良くなってきたのですが、検査をすると、今度は右頚動脈にも80%の狭窄が。さらに脳血流の低下や小さな脳梗塞が多発していることも解り、リスクは増えてしまいました。手術はもう一度検討しようという事になって一旦退院しましたが、本人は「やっぱり手術する!」と言うのです。「わて、ボケへんで。ボケてたまるかいな!何にもせんと後で破裂して死ぬんやったら、今手術して死んでもかまへんねん。わて、勝負に出たいねん!」あまりの気迫に、父も「しゃあない、手術したらええがな。ボケたらわしが面倒見るわ。どうせ言い出したら聞けへんねんから…」

血管外科の先生に相談すると、「リスクはありますが、破裂してから運び込まれると悲惨なので、破裂する前に手術されることをお勧めします」と言われたので、「破裂すると普通はすぐに意識がなくなるのでは?」「胸部大動脈瘤の場合はそうなんですが、お母様の場合は腹部で、位置も低い(足に近い)ので、破裂しても意識があって苦しまれるかと…」

これはえらいこっちゃ。私は術後ボケて戻らなかったり、感染して悲惨な状況になるよりは、今の元気なままで死ぬ時は「いっかんの終わり」の方が本人も楽だと思っていたのですが、この分ではもし破裂したら「あんた楽やて言うてたのに、うそやん!!」と恨まれそうです。

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そうして手術をすることになった母は、意気揚々。「手術までに、いっぱいプラセンタ打ってもらわな!」と急に張り切り出しました。
そこで、週に3-4回、1回に5アンプルのプラセンタ点滴を始めました。
なにしろ悪い所だらけなので、大量にプラセンタを投与して細胞を若返らせ、血行を良くしてつまりかけた血管を回復させなければなりません。ビタミンCとBもたっぷり入れて…。
「太ってたら手術しにくいよ」と言うと、「そら、痩せなあかんな!」と、母は初めて気合を入れてダイエットを始めました。するとプラセンタの代謝促進作用も手伝ったのでしょう、手術までの3ヶ月の間に、あれだけ減らなかった体重が10kgも減ったのです!(10kg減ってもまだ体重オーバーですが…。)

おまけに血液検査であれだけ悪かった血糖値や肝臓の値、コレステロールも全て正常値に!髪の毛も黒くなり、物忘れもましになって、「プラセンタ打ったら、馬力出るわ!」と、元気も倍増。やっぱり人間、死ぬ気になったら痩せれるものですね。
しかし大切なのは、そこまで切羽つまる前に痩せる事なのですが…。

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そして9月の手術の日。4時間の予定だった手術は8時間かかり、心臓が止まったのかと冷や汗をかきましたが、母は「奇跡の生還」を遂げました。術後しばらくはさすがの母も少し弱っていたので心配しましたが、退院してプラセンタ点滴をしだしてからは見る見るうちに回復!母曰く「ほんま、この点滴よう効くなあ!」
術後の傷の痛みも点滴をしだしてからすーっと引いたそうです。
そうして母は奇跡的に復活したのでした。
母「あんたがボケる、ボケる言うから、『ボケてたまるか!』思ててん。」
「病は気から」と言いますから、母の気合がボケを防いだのかもしれません。もちろん日本で一、二の先生の腕のおかげでもありますが、私は密かに母の奇跡の生還はプラセンタのおかげだと思っています。

今年になってから、実家が遠いので点滴に来るのをサボっていた母ですが、内服のプラセンタのおかげで体調は保っているようです。最近母から手紙が来ました。

「ご無沙汰でんなあ!プラセンタの錠剤のお陰様でまずまずの
 生活ぶりですわ。おおきに!でもまた点滴もしたいので、
 来週プラちゃんのお世話になりまっさ!
 その節は何卒よろしく。風邪などにご注意を。では、またネ。」

皆様もここまで危ない橋を渡らないように、普段から健康には気をつけて下さいね。