第116回  (2012年11月)  「ワインは現地で飲むのが一番? 」

  

こんにちは。柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。最近はすっかり秋めいてきて夜風も涼しく、時折鈴虫の音色も聞こえてくるようになりましたね。皆様はいかがお過ごしでしょうか? 街中を見渡してもファッションに敏感な一部の人はダウンとかファーのついた衣装を着て颯爽と歩いている人もいますね。(なんぼなんでもまだ暑いでしょうに・・・^^;)そうかと思えばTシャツに短パン&サンダルという夏真っ盛りの人もまだまだいますし、季節の変わり目は逆に街ゆく人々を眺めているだけでも楽しいものです。 さて、先月のクリニック通信にも書いたのですが、9月には欧州皮膚科学会がイタリアのベニス・リド島で行われたので参加してきました。そのため一週間もクリニックをお休みしてしまい、皆様にはご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。今回の学会出席は急遽決めたこともあって準備がなかなか追いつかず、本当に出発の前日まで診療の方もいっぱいだったので、実は予備勉強が直前までできない状態のまま出席する事になってしまいました。

 


なんか学会のネタが続いて恐縮なんですが、単にイタリアに遊びに行って来たと思われてもなんですし(しっかり楽しんできたのは事実だが・・・(^^))、ご存知ない方のためにちょっと解説しておきますと、学会に出席する人には大きく分けて3つのグループがあります。一つは研究専門の研究者グループ。そしてもう一つは診療ばかりしている臨床医師のグループ。そして、大学病院のようにその中間で臨床もするし、研究もするというグループです。私はどのグループかと言うと臨床医師のグループに入りますが、その中でも少しばかり大学よりの、臨床研究(モニター試験など)も行っている小グループの中にいるという位置付けになると思います。そして臨床医師の場合は、学会でのもっぱらの興味は臨床で役に立つ情報になります。例えば、ボトックスを患者さんのこの部位に打つと効果がなかなか出なかったのに、この部位でこの薬剤と一緒に打つと非常に高い効果が得られた・・・というような発表ですね。このような非常に価値の高い情報に一つでも出会う事ができれば、もうその学会に出席した価値ありという事で、交通費から宿泊費、そして参加費用を含めて一気に元を取ってしまいます。(・・・すいません。下世話なお話で・・・)

 

 

ところが逆に研究を専門にしている人達の発表はいわゆる基礎研究と呼ばれる分野の事が多くなります。一言で言うと試験管の中で何が起きたか、もしくは動物実験でこのような事が観察された・・・って話です。確かにそれは凄い発見だという事もありますが、それが応用されて新薬になるのは早くて3年後とか、恐らく5年以内には目処が立つかもしれないというような研究だって沢山ある訳です。そうなると私達のような臨床医師は、学術的興味は持てても「またその時ね」って感じで受け流してしまう事が多くなります。そして、今回の欧州皮膚科学会はと言うと・・・。残念ながら殆どの発表が基礎分野だったのです。それが分かったのが飛行機やホテルの手配を済ませた学会直前。学会のホームページにプログラムや抄録集が掲載されるのが遅かったというのもあるんですが・・・。この学会に誘ってくれたI先生に「あれれ? 先生は臨床もあるって言ってたのでは・・・?」って問い詰めたら「あ・・・そうですね。今回は非常に少ないですね。前はもっとあったように思ったんだけど・・・。あれ? でも柴田先生はプログラムをチェックして来なかったんですか?」(・・・うう・・・出発直前までバタバタして見られなかった・・・)

確かに言われてみれば自分で勝手に臨床もあると想像していただけなんだが・・・。勿論、臨床発表も若干はありましたけど。しかしポスターによる研究発表は非常に多かったです。総計770題ものポスター発表があり、とても見切れません。成長因子に関連する発表だけでも34題、毛髪・皮膚・幹細胞関連で42題、光老化関連で33題。世界中でこんなにたくさんの研究がされてるんだという事だけでも刺激にはなります。紫外線によるシミ・シワ・たるみの発生など光老化を防ぐ物質の研究も盛んで、ビタミンEや大豆エキス・ヒートショックプロテイン(細胞が熱等のストレス条件下にさらされた際に発現して細胞を保護するタンパク質)などの研究発表が面白く、当院の研究にも応用できるのではと思いました。企業のブースもすごく少なかったんですが、なんとかイタリア製のシミを改善する注射や、フランス製の注射前後に使える化粧品などの情報を手に入れたので、これらはまた当院でも導入していきたいと考えています。

 
 

 

ところで今回はせっかくイタリアに行ったので、ちょっとそのお話を。今回はおよそ10年ぶりのイタリアです。私の同級生にはもうイタリアに魅せられて、かれこれ40回以上行ったという強者もいます。(その人から聞いた現地のディープな情報は今回の旅行に大いに役立ったのですが・・・。)前回私が行ったのはミラノだったのですが、確かに大いに魅了されたのを覚えています。ヨーロッパは得てしてそうなのですが、どうして街並みとか田園風景とかレストランとか・・・あんなに私達を魅了するのでしょうね。特に女性はハマっちゃう人多いですよね。アジアの国と違って、ゆったりしていて長い歴史が至る所で感じられて、人々は大らかで親切だし、人生を楽しむ事にかけては遥かに私達の先輩のような気がします。そして何より食べ物が充実していて、レストランなんか2時間くらいかけて楽しむなんて当たり前・・・なんですよねぇ。(もっぱらここに私が魅惑されるポイントがあるのだが・・・。)私もまだ古き日本人が持つヨーロッパコンプレックスが心の底にあって、「あぁ・・・なんでここはこんなにお洒落なんだろう!!」って思います。抜けるような青空が広がり、カフェで一杯のエスプレッソを片手に行き交う人々を見ているだけで楽しいし(こっちの人は本当にバラエティ豊かですね。それぞれの人が思い思いに恋人との時間やファッションを楽しんでいるって感じです)、こんなゆったりとした時間を贅沢に過ごしている自分までもが映画のワンシーンに登場しているような錯覚に陥ります。一体これって何なんでしょう?






そして素敵な人たちとの出会いもありました。ベニスの小さなレストランで韓国から来た皮膚科医の若い先生たちやカナダから来たおじさんたちと相席になって英語で話が弾んだり、学会のギャラパーティー(祝賀パーティー)でスウェーデンから来た研究者の人たちと知り合いになれたり・・・。リド島では地元の人に聞いて行ったレストランが生の魚介がめちゃ美味しかったんですが、ウェイターのおっちゃんがまためちゃ親切で、プロセッコ(イタリアのスパークリングワイン)をグラスで頼んだのにカラフェでサービスしてくれたんです!(美味しいものとサービスに弱い私はこの店がすごく気に入ってしまいました。)そしてリド島のホテルのフロントやレストランの親切なお姉さんやおばさん、ホテルで偶然一緒になった学会関係の偉い先生たち。中でも帰りに「ホテルから空港まで水上タクシーを予約したから一緒に乗って行かない?」と誘ってくれたハンガリーの綺麗な女医さんと、一緒に水上タクシーに乗り合わせたスイスの皮膚科の先生はすごく親切で、女医さんは水上タクシー代をおごってくれたし、スイスの先生はホテルからずっと荷物を運ぶのを手伝ってくれたんですが、なんとその人はスイスの有名な大学の教授で、2年前の欧州皮膚科学会の会長をした人だったんですね。めちゃダンディーで優しくて、ヨーロッパって大学教授でもこんな素敵な人がいるんだなあ・・・もう映画そのもの!(それに引き換え日本の大学教授達ときたら・・・もう何なの?この違いは?? あんまり大学の先生を敵に回したくはないので詳しくは述べませんが、素敵な人なんてめちゃ少ないし、中には同じホモサピエンスとは思えない人も・・・あ、言っちゃった・・・^^;)



それから、せっかくベニスに行くんだったら車で2時間位のところにベローナって素敵な街があるので、是非そこに行った方がいいと友人に強く勧められました。そこで、学会が半日で面白そうな演題がない日があったので、その日だけは学会をサボってベローナに観光旅行です。皆様の中にもご存知の方はおられると思いますが、ベローナと言えばあのロミオとジュリエットの舞台となったバルコニーのお家がある街です。ちょっと贅沢して運転手付きのレンタカーを借りて、朝から出かけました。綺麗な田舎の道を2時間弱走ったところにその小さくてお伽話にでてくるような街はありました。まずのお目当てはベローナの街で最古と言われているレストラン「Antica Bottega del Vino」。なんでも創業500年の老舗だそうです。500年前って事は、2012-500=1512年・・・。日本では室町時代、その頃にはもうこんなに素敵なレストランがあったんですねぇ。  




レストランの地下はワインのカーブになっていて数千本のワインが眠っています。なんでもローマ時代の遺跡をそのままカーブにしたとかで、ローマ時代の城壁の跡をうまく利用して天然のクーラーになっていて中はとってもひんやり・・・。勿論、レストランのお料理はボーノボーノ! ワインがこれまたボーノボーノ!!(唯一知っているイタリア語を連発で、典型的なお登りさんになっている・・・^^;)グラスワインだけでも50種類から選べるなんて尋常じゃないですよ。その中でソムリエさん一押しの赤「アマローネ」を注文したところ、もう忽ち虜に・・・。これぞワインですよ。しかもそのお店で一番高いグラスワインだったにもかかわらず約1000円程度。日本のレストランも見習え!! と喜びと怒りと半々でとっても楽しいひとときを過ごしました。そこでお土産にそのワインを買って帰って来たのは言うまでもありません。その後はファンタジーに出て来るような街中を散策し、歴史と文化に触れ、本当に有意義な一日を過ごすことができました。いや・・・充実充実。 




まぁ・・・そんなこんなで、ここでは書ききれないほど色々な事があって、名残惜しいイタリアを後にして帰路についたのでした。そして、ようやく我が家に到着。もう疲れてクタクタ・・・。ベットにバタン。そこで独り言。 「ああ・・・やっぱり日本が一番・・・」
 あれあれ・・・。やっぱり寄る年波には勝てないのでしょうか。子供の頃に数少ない家族旅行とかに行くと必ず母親が言ってたなぁ。「ああ・・・家が一番」って。私もその年になったのか、はたまた同じDNAを引き継いでいるからなのか。
いや・・・やっぱり純粋に日本は日本の良さがあって、客観的に世界一って思える事が多いんですよ。皆さんも海外旅行から帰ってそう思った事ありませんか?もっと言えば客観的事実に基づかなくてもいいんです。日本に帰ると落ち着くんです。何なんでしょうね。この感覚は・・・。
そりゃ、街並みはお世辞にも美しいとは言えないし、至る所が人で混み合っているし、人生楽しむ事を知らないまま働き続ける人も多いし、ワインは高いしダンディな大学教授もいないし・・・。でもやっぱり生まれ育った環境って、成人してからのその人に与える影響は大きいんですよね。いえ・・・そうではなく幼少期に与える影響が大きくて、その影響下の中で構成された体はその後は何歳になってもその影響から逃れられない・・・って事の方が正しいのでしょう。  

 

 

これってその土地が持つ空気なのか、湿度なのか、そこに生えている植物なのか、微生物なのか・・・はたまたそこに住んでいる人間そのものの影響なのか。ベローナで飲んであれだけ感動したワインも、日本に持って帰って来ると「確かに美味しい・・・でもあの時の感動とちょっと違う・・・」んですよね。間違いなくソムリエさんがあのワインカーブから出して来たのを見たので、物は同じはずなのに。逆に日本の樽酒のような冷酒を日本で飲むととっても美味しいのに、同じお酒を外国で飲むとそうでもないように思います。

今回、国際学会で仕入れて来た知識や論理は国境を超えて役に立つ原理原則なんでしょうけど、実際に臨床の場に役立てるには、そのままでは駄目だなって思うんです。人種や体質、育った風土、そして個人の精神状態までも考慮に入れないとベストな治療なんてできないと思う訳です。フランス人にフランスでは良く効く薬でも、日本にそのまま持って来て日本人に投与しても同じ効果が出る訳じゃないっていうのが不思議です。
まだまだ、研究の余地ありか・・・。先は長いようですが、今回仕入れた知識や情報を基に研究を進め、皆様のお役に立てるものを作っていきたいと思いますので、今後とも宜しくお願い致します。