第113回  (2012年08月)  「ゆく河の流れは絶えずして 」

  

こんにちは。柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。最近はとっても暑くなってきましたね。私も毎朝蝉の声で目が覚めるようになりました。梅雨もすっかり明けて本格的な夏の到来ですが、夏のレジャーには日焼け止めをお忘れなく。当クリニックの患者様でも肌年齢が実年齢より随分と老けこんでしまった方の大半は、日焼け対策を怠った事と喫煙が影響しているように思います。いつまでも若い肌を維持する為にも是非、SPF40以上、PAやPPD値が高い日焼け止めクリームを使ってくださいね。(皆様ご存知の通り、SPFはUVB(紫外線B波)、PAはUVA(紫外線A波)の防御力の指標ですが、EU圏ではUVAの防御力の指標にPPDという値を使います。 PA+++はPPD8以上ですが、 EU圏ではPPD18~38のものもあります。UVBはシミの、UVAはシワ・たるみの原因になると言われていますから、シワ・たるみを防ぐには、PPDの高い日焼け止めの方がいいという訳ですよね。)

 


ところで、若さを維持したいという願いは何もお肌に関してだけではなく、心身ともに「若さ」を維持したいと願う人は年々多くなって来ていますね。私も先日、抗加齢医学会に参加してきました。アンチエイジングは今や時代の潮流に乗っているようで、驚くほど参加人数の多い大きな学会です。「健康長寿」から「見た目のアンチエイジング」まで多くの講演があり、いろいろなサプリメントが話題になっていました。「グルコサミン長期摂取は全死亡率を低下させる」「ウコンの主成分クルクミンは動脈硬化や疲労・色素沈着を防ぐ」「コーヒーポリフェノールはシミを改善する」「紅藻エキスはエラスチン線維形成を促進し、たるみを改善する」など最新の研究結果が発表されていましたが、あんまり沢山あり過ぎて何がなんだか分からなくなりそうです。いろいろな情報を得る事ができましたが、美容に関係する演題の会場はいっぱいで、入りきれないほどの人気でした。これも本当に時代の流れですね。少なくとも20年位前にはアンチエイジングなんて言葉すら聞いたことなかったですし、この10年位で抗加齢医療も大きく流れが変わったように思います。

 

 

今回は普段はあまり聴かない運動器における抗加齢研究に関する講演の中に、整形外科時代の後輩が発表しているのを見つけたので運動器関連の講演をいくつか聴いてしまいましたが、それが結構面白かったのでちょっと紹介しますね。脊椎(背骨)の変形や可動性とQOL(=Quality Of Life:生きている間の生活の質が重要という考え方。 質を重視しない延命治療に対する疑問もここの観点から議論されていますね)の関係の統計をとると、変形よりも可動性の方が重要で、脊椎が変形しても可動性や背筋力が保たれているとQOLが保たれ、寿命も延びるそうな。つまり背骨の動き、特に背屈(背中をそらす動き)と背筋力が歩行障害や転倒の予防には重要だそうで、背筋を鍛える運動と背中をそらす運動が勧められていました。また、歩行速度と寿命の関係を研究した発表もあり、75歳で歩行速度が早い人はその後の10年で87%生存していたが、歩行速度の遅い人の生存率は30%以下だったそうで、筋力が寿命にかなり関係があるという事でした。確かに年をとると背中が丸くなることが多く、それでよけい老けて見えますよね。背筋を伸ばしてさっさと歩くだけで若々しく見えるものです。私もその講演を聴いてから、背筋と背屈運動を始めました。いつまでも若々しくいるためには、美容と健康の両方が必要ですものね。今後そういう研究も少し取り入れてみようかなと思っています。ただ、私の知り合いに言わせると、人間の寿命の大半はDNAに組み込まれているものが影響しているそうで、そもそも長生きをするDNAを持った人は年をとっても筋肉がしなやかな状態を維持できる訳で、早歩きをした結果寿命が延びた訳ではなく、長生きできる人はそもそも歩くのも早いし、脊椎の可動性も大きいのよ…って言ってました。う~ん。確かにこれも一理あるな。

 
 

 

ただ、一つの事実として人間のDNAがこの100年位でそれ程大きな変化をしたとは思えないのですが、先進国の平均寿命はこの100年で少なくとも30%以上は延びている事を考えると、環境(食料事情や労働環境、医療状態など…)が寿命に与える影響はDNA以上にあるという事は認めざるを得ないと思うんです。お肌の問題も確かに肌年齢が衰え易い人とそうでない人がいるんですが、人生の中でどれだけ紫外線を浴びたかとか何年喫煙をしていたかという事は、持って生まれた体質を超える大きな影響を与えているように思います。そう言えば紫外線の問題だって昔はこんなに言われてなかったけど、最近はオゾンホールの影響で地表に届く紫外線は年々強くなっているそうで、オーストラリアなんかでは政府が直接日光浴を規制する動きがあるようです。DNAの変化は非常に遅々としているんですが、人間を取り巻く環境の変化は非常に大きいって事なんですよね。抗加齢医学会がこんなに注目されるようになったのは、日本人の平均寿命が延びて老後の生活がどんどん長くなり、長生きが当たり前となった今はいかに元気で若々しく老後を過ごすか…という事に興味が変わっていったからだと思います。






話は大きく変わってしまいますが、先月は開業10周年を無事迎えることができました。ここまで支えてくださった皆様には本当に感謝に堪えません。10周年記念企画はたくさんの方にご利用いただき、お祝いをくださった患者様や7年ぶりに訪ねてくださった患者様もおられ、「ずっとクリニック通信読んでました」と言っていただいて涙チョチョ切れでした。ああ、10年やってきて、毎月クリニック通信書いてきて良かった…と喜びをかみしめました。感無量、とはこの事です…。私のようなものが自分のクリニックを10年も継続できた事そのものが自分でも驚きなのですが、この10年間を振り返ってみても一時として同じ状態がなく、変化の連続でした。開業当初は異人館通クリニックという名前でしたが、4年前に柴田美容皮膚科クリニックと名前を変えて現在の場所に移転しました。思えば10年前、異人館通クリニックを開設した当初は神戸にも美容のクリニックなんて数えるほどしかありませんでした。世の中には愛想の悪い普通の総合病院か、胡散臭い美容外科しかなかったんですよね。そんな中でまともな美容医療が受けられ、普通の病院よりちょっとはサービスのいいクリニックを作ろうとしたんですが、数年のうちにサービス重視のラグジュアリーな美容クリニックは山のように増えてしまいました。それと共に肝心の「治療効果と安全性の追求」という概念は薄れてきたように思ったので、より安全で確実な効果を出せる治療法を研究開発する研究所兼クリニックを新規オープンした訳です。



時代の変化と共に治療内容もずいぶん変わりました。異人館通クリニックオープン当初はケミカルピーリング全盛期でしたが、美肌治療はCDトレチノイン療法に変わり、シワ・クマ・たるみ治療はより即効性のある注射治療に取って代わりましたし、メソリフト・メソカクテルからエセリスカクテル・PRP、最近ではさらにダウンタイムの少ない新エセリスカクテル・アイリペアカクテル・リフトアップカクテル…と、注射治療もどんどん変遷しています。 この7月から、2年前までアルバイトをしてくれていた中国の留学生Nさんが復帰してくれたのですが、Nさんの復帰によって、わずか2年の間でも新しくなった事がいっぱいあるという事が再認識でき、時代の流れを感じてしまいました。根強い人気のプラセンタ点滴など基本は変わらないものもありますが、それでも点滴の種類は少しずつ変わり、他の治療も常に進歩・変遷を遂げてきました。これらはすべて患者様のご要望を聞き、時代の要求に応えるべく研究開発してきたものです。クリニックの場所も忙しい方にも便利なところに移り、スタッフにもより専門性を求めるようになり、不況の際にはコストパフォーマンスを追求してきました。微力ながら、時代の変化と共に常に変わる努力をしてきたからこそ、ここまで来ることができたのではないかとも思います。クリニックも時代と共に変化しないと存続できなかっただろうな…と思うのです。




異人館通クリニック開業当初はスタッフも接客重視で採用していましたが、それでは専門的なアドバイスを求める患者様のご要望に応えられなくなり、研究好きな私との方向性も異なってしまったので、移転と共に研究所併設のクリニックとし、スタッフも研究員とする事にしました。そうなるとアルバイトでも楽で簡単な仕事ではなくなり、バイタリティーが必要となるので日本の若者はなかなか続かず、留学生を採用する事になりました。開業当初は留学生がアルバイトに来るなんて想像もしなかったのですが、今では留学生の力なしではやっていけないようになっています。(それに引き換え日本の若者の低落というかだらしなさと言ったらもう…目を覆いたくなる状態ですよねぇ。まともな若者は本当にわずかだという気がします。ニートとかパラサイトとか、もうあんなの一掃しなきゃダメですよ。親も親で強制的に生活費を徴収して当然ですし、生活費を入れない子供なんかさっさと追い出して自立させなきゃねぇ…って思うんですが。あ…こんな事を自分が言う年になったのかと思うとちょっと情けないので、これも時代の変化のせいにしておきましょう…^^;)




とにもかくにも…時代の変化はかくも激しいということですね。10年一昔という言葉がありましたが、この10年一昔という言葉そのものが古くなってきたようにも思います。最近は1年単位で色々な事が変化しているように思うんです。ただ、こんなに激しい変化の中を自分なりに過ごしてきて思う事があります。それは人間は相当大きな変化にもそれを吸収して自分の生活に取り入れ、より豊かで実りのある人生にしていく能力が生まれつき備わっているんだな…という事です。世の中は変化が激しく、一時として同じではないけれど、その中で一つだけ変わらないものは人間が持って生まれたDNAじゃないかと思うんです。環境の変化の割にDNAの変化が遅すぎるのではないかと危惧していたのですが、よくよく考えるとそれは心配ないようですね。人間は大きな変化を吸収するという柔軟性のDNAを持った唯一の生物なんじゃないかと思うのです。(ゴキブリのように何十万年も前から変化に耐えて生き残っている先輩がいる中で唯一という言い方は語弊がありますが、少なくとも社会の変化に対応する柔軟性は人間しか持ち合わせていないのではないでしょうか…。 )

 

 

「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず…」とは、絶えず変化する様子は世の中の無常を表しているという、古文の代表作である方丈記の一節ですが、世の中がいくら変化し、無常と思っていても人間のDNAだけは実は何も変わっていないんですよね。その変わらないDNAこそが、無常に対応し、その変化への対応を楽しむチャレンジ精神の原動力なんだと思います。世の中が変化してもその変化を吸収し、より良いものにするというチャレンジ精神を持つ能力が人間のDNAに備わっているという事実を思えば、無常を感じる事もないのでしょうね。その能力を信じれば、日本の親御さんもさっさとご子息を家から追い出して独り立ちさせる事も厭わないように思うのですが…。
(ま…これも時代の変化ですかね…^^;)

  10年の節目に、これからも世の中の変化を敏感に感じ取り、その変化への対応にチャレンジする研究を続け、常に時代に要求されるものを開発していきたいと決意を新たにしたのでした。