第5回 (2003年08月) 「プラセンタの不思議」

  

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こんにちは!異人館通クリニック院長の柴田です。
夏まっ盛りとなり、毎日暑い日が続きますが、お元気でお過ごしでしょうか?当クリニックも2回目の夏を迎えることができました。暑い中、坂の上のクリニックまで来てくださる皆様に感謝の毎日です。
さて、今回は夏バテ対策にちなんで、プラセンタのお話です。
本題に入る前に、一つ思い出話を…。

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私がまだ勤務医だった頃の話ですが、通院患者さんの中に、「つるちゃん」と呼ばれているかわいいおばあさんがおられました。腰痛治療のため、毎週吹田の病院に注射に来られていたのですが、つるちゃんは吹田と言う地域では珍しく(?)上品で人柄がよく、みんなに好かれていて、もう80歳になると言うのに「ハイカラ」を絵に描いたような方でした。
私が学会のためにボストンに出張するというお話をすると、「ボストンですかぁ。あそこはいいところですなぁ。今頃はボストンのチャールズリバーのチェリーブロッサム(桜)は満開ですやろなぁ。気候もいいし、リフレッシュできますな…。」と言われていたのを思い出します。吹田の看護婦さんなどは、「あの年でボストンでっかぁ。私なんか宮崎の温泉が人生の中で一番の遠出旅行やわぁ… 」と嘆いていました。(^_^;)

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そのつるちゃんですが、「いつも楽にして頂いて、本当にありがとうございます…!」とこちらが気後れするくらい丁寧にお礼を言われ、季節ごとに「いつもお世話になっておりますから…」とシャンパンのドンぺリを持って来て下さるのです。職業柄、お菓子や土産と言った頂きものをする事もあるのですが、大抵の場合は診察室に置いておくと看護婦さんなどが食べてしまいます。さすがにドンペリの時は私が持って帰ってしまうので、看護婦さんから「センセ、あの瓶は薬用酒かなにかですかぁ?」と聞かれた事がありました。「そうそう、薬なの。苦くてまずいよぉ。(^_-)」

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それはさておき…つるちゃんがあまりにずっと毎週来られるので、注射が効いていないのではないかと思って聞くと、(当時はプラセンタは使ってませんでしたから、麻酔薬のみの注射です。)

つるちゃん 「いえいえ、注射は本当によく効くんですよ!」
柴田  「何日くらい楽ですか?」
つるちゃん 「1日くらいですかな…」
柴田 「え…?! 1日しか効かないんですか…?!」
つるちゃん 「いえいえ、1日でも楽にして頂いて、本当に助かってるんですよ…!」

整形外科の外来というのは皆様もご想像がつくかもしれませんが、何か文句の一つでも言わねば気が済まない…と言うご老体のたまり場と言っても過言ではありません。そんな中でつるちゃんは、「吹田のマザーテレサのような人だなぁ」と恐縮したものでした。
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プラセンタのお話に戻りましょう。プラセンタはその場で疲れや痛みがとれるので対症療法のように思われますが、実は体の中から細胞レベルで体質を改善していくので、根治療法と言えるものだと思います。その秘密は、プラセンタに含まれる「細胞増殖因子」にあるのです。
プラセンタは胎盤の抽出エキスで、胎盤は子供を育てるものなので、そのために必要な多くの細胞増殖因子が含まれています。これがプラセンタに含まれている物質の中で最も注目されているもので、「肝細胞増殖因子」「上皮細胞増殖因子」「線維芽細胞増殖因子」などいろいろな細胞の増殖因子があります。これらが傷んだ細胞を修復し、体質を改善していくのです。細胞増殖因子の次に注目されているのは、「インターロイキン」という物質です。インターロイキンとは、サイトカインという蛋白質の一種で、免疫力を高めたり、アレルギーを抑える作用、また炎症を改善して痛みを抑える作用があります。
(プラセンタの学術的な効用については、近日ネットで詳しくご紹介します。)

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簡単に言えば、人間の持っている本来の回復機能を高めてくれるのです。そして細胞を活性化して真皮のコラーゲンを増やしたり、卵巣の機能を活性化して女性ホルモンを増やしたりするので、更年期障害やしわ、ホルモンのバランスの乱れから来るニキビやしみ、月経痛にも効くというわけです。又、免疫力を高めて炎症を抑え、血行を良くするので、肩こり・腰痛・関節痛、アレルギーやアトピー・リウマチ、冷え性・不眠などを改善し、傷を治りやすくしたり、カゼをひきにくくしたりするわけです。まさに現代の万能薬と言っても過言ではないでしょう。
このプラセンタを治療に使い出してから1年以上になりますが、クリニックに来られる方のうち、プラセンタの点滴や注射をされる方の目的は、「美肌・若返り」と「疲労回復」、「痛みの改善」の大きく3つに分かれます。
このうち最も早く効果が現れるのは「疲労回復」のようです。疲れがひどい時程よく効き、その日のうちに元気がでる、遅くても翌日楽になる、という方がほとんどです。
私やスタッフもカゼをひいた時や疲れがたまった時にプラセンタ点滴をよくするのですが、やはりすぐに元気になりますし、「プラセンタ点滴があるからクリニックをやめられない」と言うスタッフもいます。(?_?;)

次に早く効くのが「痛みの改善」です。
当クリニックでは痛みのひどい時には痛いところに直接注射する「ツボ注射」や「神経ブロック」をお勧めしていますが、「注射するのはこわい」と点滴にされる方でも、何回かされると痛みが楽になってくる方がほとんどです。整形外科で関節注射に使うヒアルロン酸や、ペインクリニックで使う麻酔薬と比較したこともありますが、ほとんどの方が、「プラセンタの方が良く効くし、注射の時に痛くない」と言われます。

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実は私も4年前と1年半前に交通事故にあい、重症のムチ打ちで首から腕と腰から足にかけて動けないほど痛くなり、2ヶ月ずつ入院したのですが、プラセンタの点滴やブロックをするようになってから、非常に楽になりました。つい最近もまた事故にあいかけてムチ打ちの症状がぶり返したのですが、プラセンタ点滴とツボ注射で2週間程で回復!以前にも同様のぶり返しがあり、プラセンタに出会う前は回復するのに何ヶ月もかかったので、身をもってプラセンタの効果が解ったというわけです。

「美肌・若返り」というのは他に比べるとすぐに効果がわかりにくいものですが、それでも2~3回で「化粧のりがよくなった!」という方が多く、肩こりや腰痛でプラセンタ点滴を続けているうちにお肌がつるつるになった、という嬉しい副作用もよく聞きます。(実は私もその1人です。)

その他プラセンタはいろいろな病気に効くようです。私の母はすごく太っていて、糖尿病・高脂血症・脂肪肝・狭心症・乳癌・変形性膝関節症・変形性腰椎症と病気の宝庫のような人ですが、プラセンタ点滴をしだしてから、ひどかった血液検査の結果もほとんど正常値になり、驚いています。

このようにプラセンタにはほんとうに不思議な力があると実感している今日この頃ですが、ひとつ心残りな事があります。それは「つるちゃん」にプラセンタを使えなかったこと。
ある秋の日、毎週来られていたつるちゃんが今週は来られないなーと思ったことがありました。外は秋風も冷たく、季節の変わり目なので風邪でも引かれたのかな…と心配していると、それから数日後、自宅のポストに一通の手紙が入っていました。差出人はつるちゃんの御主人でした…。
「先生には妻が色々とお世話になっておりましたが、この度、急性の脳出血で亡くなりました。あまりにも急な事であり、私も少し混乱しておりますが、妻は生前に、柴田先生には本当にお世話になっているとよく話しておりました事を思い出し、取り急ぎ御連絡をさせて頂いている次第です…」

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これまで見たこともないような達筆なお手紙でした。
私はご主人にはお会いした事はありませんが、お手紙を拝見すると気丈で昔気質の方だったのだろうと想像しています。
つるちゃんはご主人に最後を看取られて本当に静かに息を引き取ったのでしょうね。つるちゃんの事ですから最後の最後まで穏やかで、そしてご主人も取り乱す事もなく二人で静かにお別れをされたものと思います。
お手紙を読みながら生前のつるちゃんの笑顔が目に浮かび、思わず涙がこぼれてきました。せっかくの達筆なお手紙の字を涙でにじませてしまい、しばらくは呆然としていました。

それから2年が経とうとしますが、今でもつるちゃんのドンペリとご主人のお手紙は私の食卓に飾られています。
それを見るたびに、もし今でもつるちゃんが元気でいたら、プラセンタで腰痛を治してあげられたのになあ…としみじみ思うのです。
(今年はつるちゃんの三回忌です。 しばし合掌…)