第131回 (2014年2月)「クレオパトラの商談」

  

こんにちは。柴田美容皮膚科クリニックの柴田です。とっても寒い日が続きますね。皆様は風邪などひかれていませんか? 私も今年に入って何回か風邪をひきかけてはいるのですが、お陰様で本格的な症状が出る前に回復しています。昔小さい頃には寒い日に薄着をしていると「そんな格好してたら風邪ひくよ!」って注意された経験ありますよね。そして今でも多くの人が寒くなると風邪をひくと言いますが、寒さ云々の前に風邪がウイルス性感染疾患である限り、ウイルスがいないと感染しません。これは当たり前ですよね。南極に行くと風邪のウイルスがいないので、極寒でも風邪をひくことはないそうです(南極に行くまでの飛行機や船で感染すれば話は別ですが・・・)。じゃ・・・寒いと風邪をひくというのは嘘なのかと言うとそうでもなく、普通の生活でウイルスが全然いない部屋はなく、必ず一定の割合でウイルスが空気中に浮遊しているので、ウィルスを外に出そうとする喉の繊毛細胞の動きが冬の乾燥で鈍くなると感染しやすくなるのです。(なので冬場は加湿器などで湿度を高めると感染しにくくなります。)

・・・とは言えやっぱりウイルスって基本的には人から人に感染するものなので、冬場は敢えて人混みの中に行かないというのが一番の予防策です。初詣とかルミナリエとか冬は意外と人が集まるイベントが多いので、あまり積極的に行かない方が本当はいいでしょうね。私が子供の頃は学校に暖房なんてなかったので、唯一の暖を取る方法と言えば「おしくらまんじゅう」だったんですが、考えてみればあれは最悪ですねぇ・・・。あの中に一人でも風邪をひいた子がいれば確実に感染の輪が広がりますよね。そうです。風邪をひきたくなければ部屋を暖かくして加湿器をかけて、一歩も外に出ずに部屋に籠ってニートのような生活をしましょう!・・・って理屈ではそうなんですが、そんな生活無理だし、何しろ面白くないし何のために生きてるのか分からなくなってしまいますね。(私もダイエット指導をしていると時々患者さんから「先生。私の人生の唯一の楽しみは食べる事なんです。この楽しみを奪われると何のために生きているのか分からないんです!!」って切実に訴えられる事が何度かありました。もう訴える目が殺気立っている時があります。勿論そんな時は一旦ダイエットは中断してもらいますが・・・^^;)う~ん。健康を取るか楽しみを取るか。ある程度楽しみがないとストレスがたまって不健康にもなるし、どこかでバランスを取らねば・・・。そうなるとウイルスの危険を承知の上で人がいる場所に行く事になりますので、残る手段は一つしかありません。それは「免疫力を高める」事です。皆様もご存知の通り、人間は外部から侵入して来る細菌やウイルスから体を守る為の「免疫機構」があります。この「免疫機構」っていうのは、水戸黄門の葵の御紋もしくはウルトラマンのスペシウム光線、いや、ヤマトの波動砲か・・・のような最強の最終兵器です。もうこれがダメだったら死ぬしかありません。マクロファージやナチュラルキラー細胞という細胞が外部から侵入してきたエイリアンに総攻撃をかけるだけでなく、一旦獲得した免疫はそのパターンを覚えていて、ヘルパーT細胞って総司令官みたいな奴が、キラーT細胞とかB細胞とかいう細胞に過去のパターンを指示して、効率良くエイリアンをやっつけます。交通事故など人間の身体機能が物理的に破壊される以外の理由で人間が死ぬ事があるとすれば、大半はこの免疫機能の低下の為です。

そんな訳なので殆どの問題は「免疫力を高める」事ができれば解決するのです。とってもシンプル。しかしこのシンプルな事のための方法を人間は数百年以上研究してきているのですが、「絶対的にコレ!」っていうものは見つかってないようです。そんな訳で色々な分野の人が色々な方法で免疫力を高める提唱をしています。「体を温めるのが一番いい」とか「免疫力を高める食べ物はこれがいい」とか「ストレスを貯めない」「適度な運動」・・・などなど。パワーストーンとか魔除けの人形なども含めると一体世の中にどれくらい免疫力を高める方法があるのか分かりません。また、厄介な事にこれらの方法は「ある人にはとっても効いたけどある人には全く効かない」って事も多いのです。私が思うに「栄養のバランスがとれた食事をする」「適度な運動をする」「適度な睡眠をとる」「ストレスを貯めない」ってところまでは万人に効く方法ですが、それ以外の事になると効く人と効かない人の差が激しいので「やってみてその人に合った方法を見つける」しかないんじゃないかな・・・って思います。パワーストーンだって本当にその人に効けばそれで良い訳ですし・・・(^^)。ただ私も一応医者になって30年位になるので、患者様に色々な薬やサプリ等も処方してきました。その中で「絶対ではないが非常に多くの人にかなりの効果をもたらす」というものであれば挙げることができます。

それはプラセンタです。(世の中にプラセンタと称するものは多数ありますが、私が言っているのは人間の胎盤から抽出されたヒトプラセンタです。)こう言っておきながら私が言うのも変なのですが、このプラセンタがどうして免疫力を高めてくれるのかの学術的な説明はきちんとできないのです。いえ・・・正確に言うと、プラセンタが免疫力をなぜ高めるかの研究はされておりそのメカニズムの説明も出ていますが、そのような免疫力を高めるメカニズムを持った薬剤やビタミン類は沢山ある中で、なぜプラセンタが突出してその効果が高いのかが分からないのです。説明だけ聞けば他のサプリだってそれなりに効果ありそうなんですが、やはりプラセンタはその中でも効果がダントツです。しかも、現在使っているプラセンタはそもそも肝機能改善薬として厚生労働省から認可されたもので、「美肌効果」とか「免疫力改善」などの効能で認可されたものではないのです。その意味では数ある民間療法の一つであって、公的機関のお墨付きのものではありません。なぜか良く分からないけどプラセンタを投与すると症状が改善するみたいだ・・・という口コミによって広がったと言ってもいいのではないかと思うのです。そして、私自身も自分によくプラセンタを投与しますし、患者様にも勧めます。私が風邪を悪化させずに回復できているのもプラセンタお蔭ですし、実際にプラセンタで風邪がよくなったとかひきにくくなったという患者様もたくさんおられます。過去の経験から言ってもプラセンタ以上に免疫力の改善効果があった薬剤やサプリメントは見たことがないんですよね。おまけに美肌効果まで高いし・・・。

皆様もご存知の通り当院ではプラセンタは主に点滴で投与するのですが、クリニックに通えない人にはヒトプラセンタの内服薬も処方しています。これはラエンネックP.O.という商品ですが、日本では一般販売薬として認められていないので、欲しい人は医療機関で処方してもらうか個人輸入するしかありません。当院でも遠隔地で来院できない方や希望の方には処方しています。ところが先般、このラエンネックP.O.が突然品不足になり入手できないという事態が発生しました。原因はメーカーが工場を増設するために一旦生産ラインを止めた事のようです。当院でも連絡を受けた時には少し在庫はあったのですが、どこに行ってもないというので全国から郵送希望の方が集まり、あっという間になくなってしまいました。その後も全国各地から「ラエンネックP.O.は残っていませんか?」という問い合わせが毎日のようにあるので、メーカーの常務さん(クリニック通信では皆様お馴染みのK氏です)とは仲良しだし、以前注射のプラセンタが品薄になった時は優先的に在庫を回してもらった事があったので今回も頼んでみると、「分かりました。ちょっとあたってみます」と言われました。ほっとしたのもつかの間、数日後連絡があり・・・「すいません!! 僕も少しは何とかなるだろうと思っていたのですが、世界的に在庫不足でどうにもならなくて・・・」 ありゃ。これは困った。でもない袖は振れないという事で、仕方なくこの期間中はブタプラセンタのポーサインを入れる事にしました。

K氏:「本当にすいませんねえ。ベトナムやミャンマーで販売許可が下りたもので、生産が追いつかなくなっちゃって。工場を増設するのに、動かしながらっていうのができないもんですから」詳しく聞いてみると、なんとこんなに人気なのに、ラエンネックP.O.を作る工場は日本と韓国に    一つずつしかないんだとか。もう一つ工場を作ろうとしていたところにベトナムやミャンマーで認可が下りたので、間に合わなくなって工場を取りあえず増設する事になったそうです。柴田:「でも、どうしてこんなに急に?」K氏:「実は海外の許認可っていうのは、下りるだろうと言われていても実際に下りるかどうか分からない事が多いんですよ。当てにしてると待たされたりダメになったりって事が結構あるんで、予測で増産っていうのができなくて・・・。貧乏な会社なもんですから、実際に許可証を見てからにしようって言ってたら、急に下りちゃったんですよね」フム・・・そういう訳があったんですね・・・。まぁK氏の言う貧乏な会社ってのは謙遜でしょうけれど、製薬業界の中ではお世辞にも大手とは言えません。プラセンタは人の胎盤から抽出されますので、契約している産婦人科病院からお産の後の胎盤をもらって来て(仕入れて来て?)それを原材料にして作っているので量産するにも限界があるし、製造工程が複雑で製造管理にも手間がかかるので、大手製薬メーカーの薬品のように儲かる商品でない事は私にも分かります。そんな訳で大量生産できない薬剤であるにも関わらず世界的に根強い人気があるので、ちょっと製造が中断すると瞬く間に品不足になります。そうなると全国の人がどうやって調べたのか知りませんが、当院に「そちらであれば在庫があるのではと聞いたもので・・・」と問い合わせされる・・・そのようなものは、後にも先にもプラセンタしかありません。

ところで話は変わりますが、先に登場したメーカーのK氏は自宅のワインセラーに3000本のストックを持ち、一緒に食事に行くとプロのソムリエ達が舌を巻いてしまうほどのワイン通です。そのK氏から、「今回ラエンネックP.O.の件ではご迷惑をお掛けしたので、今度お食事でもご馳走させてください」というありがたいお話がありました。今年のお正月におせち料理をつつきながら親友Mにこの話をすると、

M: 「あのねぇ・・・それは一応社交辞令だと思うよ」柴田:「そんな事ないよ。K氏だってそれを口実に自分だって 美味しいもの食べに行きたいんだよ」M: 「そうかな。ま・・・それはそれでいいけど。 ところで今日は特別なワインを開ける日じゃなかった?」

そうだ! 2014年になったら開けようと我慢していた、とっておきの白ワインがあるのです。それはカリフォルニアワインの白の中ではとびきり美味しくて香りも味もしっかりとしたタイプなので、熟成させるとさぞ美味しくなるに違いないと思って、2000年のビンテージを開封したくなる誘惑を抑えてこの日のために大事に保管していたものです。さぁ・・・いよいよ2014年のお正月。14年の時を経て美味しく成長したワインの味はいかに!って大げさな前振りでいざ抜栓です。しっかり香りを楽しみたいので大型の赤ワイン用のグラスに注ぐと、それはもう蜂蜜のような黄金色。う・・・美しい! いやが上にも気持ちは高まります。そして、大きなグラスをぶるん、ぶるんと回してまずは香りから楽しみます。

「・・・・・・・・・・・・・・・」   何か二人の間に長い沈黙が。M: 「あれ・・・なんかあんまり香りしないね・・・」柴田:「あ.・・・そ、そう? ちょっと風邪気味で鼻が良くないのかもね」    気を取り直して今度はテイスティング・・・。   「・・・・・・・・・・・・・・・」   またもや長い沈黙。    なんと古酒のような、シェリー酒みたいな味で、全く別物になってしまってたんです。柴田:「がびーーーん! ・・・ちぇー! これ、結構高かったのになー・・・」(しゅん・・・。)M: 「やっぱり白はあんまりおくとダメなんだよ。赤と違ってヘタレるの早いんだと思うよ。    10年超で熟成して美味しくなる白ってあるのかな? それこそK氏に聞いたら?  もしかしたら秘蔵の1本を分けてくれかもよ」柴田:「そうだ! こんな時こそK氏に電話して聞いてみよう!」   (K氏の名誉の為に言っておきますが、普段は製薬会社の 常務かつ学術担当の方ですので、学術の知識も天下一品です。 ワインはあくまでも趣味のはずなんですが・・・(^^))柴田:「今日2000年のH&Vを開けたんですけど、期待してたのに 古酒みたいでいまいちだったんですよー。 古くなっても美味しい白ってあるんですか?」K氏:「うーん、やっぱり白はね・・・。おき過ぎると別物になっちゃいますからねー。 5-6年が飲み頃なん じゃないかな。10年もつ白は少ないですよね。 白を熟成して投資するならシャンパーニュですね。 シャンパーニュなら25年とか30年でいいものになるのもありますよ」柴田:「そう言えば前に連れてっていただいたレストランで飲んだ美味しい シャンパンは2002年ものでしたよね。どうしてシャンパンだと古くなっても へたらないんですか?」K氏:「それは炭酸が入っているからでしょうね。ただ私もそのような 貴重なシャンパーニュはほんの 数本しか持っていませんが・・・」

そうなんだ。やっぱり白で10年超えて熟成が進むものはないのか。柴田:「やっぱり白ではそんなに長期間熟成して美味しくなるのはないんだって」M :「やっぱりねぇ。でもシャンパンでそんな長期間熟成して   美味しいのって超レア品だろうね。 なかなか見たことないもん」柴田:「でしょ。でしょ。K氏も数本しか持っていないって言ってたもん。    それでさぁ。例のラエンネックのお詫びに、そのシャンパン1本で    どうですか?って言ってみようと思うんだけど、どうかな?」M :「あんたねぇ・・・どこまで厚かましいねん。   もう食べ物の事になると関西のおばちゃん丸出しやなぁ」柴田:「う・・・。そっか。やっぱりそれはあかんか・・・」

って事でラエンネックの件のお詫びは、どこかで又お食事でも・・・という貸しになりました。そのK氏は製薬会社の常務と言いましたが、なんと社長はK氏のお母様なんですね。そしてそのお母様は御年80歳位なのですが、もう若くて元気でちょっと普通ではないんです。毎年ボジョレーヌーボーの季節にはK氏の会社が「ボジョレーヌーボーとすっぽん鍋パーティ」という、コンセプトが全く不明なパーティ(K氏曰く、飲む為の口実だとか・・・)を開いて取引先をご招待くださるのですが、その時にお母様にお会いすると、どう見ても60歳位にしか見えません。あれもきっとプラセンタの効果なんでしょうねぇ。クレオパトラも、その若さと美貌を保つためにあらゆる権力と政治力を使ったと言われていますが、彼女が現代に生きていたら、ビンテージシャンパンを持ってK氏の会社の商品を買い占め交渉しているところでしょうね。本当は私の方がおごってもらうのではなくK氏にご馳走して優先的に在庫を分けてもらうようにお願いしなきゃいけなかったのかもしれません。若さと美しさの為にはそれ位の代償は必要なのかも。数千年の時を経ても、人間の考える事はあまり変わってないんでしょうね・・・(^^)。