第193回「コンセプトはカウンター鮨屋さん」

こんにちは! 柴田美容皮膚科クリニック改め柴田エイジングケア・美容クリニックの柴田です。10年余り皆様にご支持いただきました柴田美容皮膚科クリニックは3月22日に閉院し、4月10日に新しくコンセプトを変えた柴田エイジングケア・美容クリニックを開院する事になりました。皆様には永らくお世話になり、誠にありがとうございました。美容と健康面から真のエイジングケアを追求する新クリニックでお目にかかれる事を楽しみにしております。さて、いろいろハプニング続きでバタバタした移転準備もやっと軌道に乗ってなんとか移転のめどが立ってきたので、先日友人Mの誕生日会を兼ねて久しぶりに美味しいお鮨を食べに行こうという事になりました。目指すは三宮から北野に移転し、ミシュランの星も取った「J助」です。

 

 

J助は10年程前から三宮で若い大将が頑張っていて、その頃はクリニックから近かったので時々行っていました。当時はそれほど高くなくお鮨は美味しかったんですが、今と雰囲気も違ってカジュアルな感じで、更に大将の知り合い筋なのか、すこしヤンキーっぽい(これだとちょっと怒られるかな…やんちゃっぽい?)お客さんが多かったように記憶しています。確か大将は淡路の出身で、淡路からこだわりの素材を取り寄せていましたし、若い頃から才能に溢れていて、食に関しては辛口評論家の友人Mにも高評価のお店でした。7年ほど前に北野に移転してからは足が遠のいてしまいましたが、その間にどんどん評判が上がって食べログの点数もどんどん上がり、ミシュランの星まで取ってしまいました。「一度行かないとね」と友人たちと話しつつ、おまかせ1本の高級店になってしまって気軽に行ける店ではなくなったのと、こちらも何かとバタバタしていた事もあり、やっと訪れたのが3年前。その時は、もちろんあてもお鮨も美味しかったんですが、かなり高級感溢れるたいそうな店になっていたのと、コース開始から終了まで3時間以上かかったのに閉口してしまったんです。大将の握りは「芸術的な握り」と巷では絶賛されていますが、その時は一つの鮨を握るのに約3分。そのうち1分は握りを眺める…という作業に費やされていたので、美味しいのは美味しいんだけど、一回の食事に3時間以上もかかるのはちょっと忙しい私達には合わないな…という事になり、また足が遠のいてしまいました。

 

 

それから3年。久しぶりに美味しいものを食べに行こうとなった時、行きたい店が思いつきません。その時友人Mが「う…ん。久しぶりにJ助に行きたいな。他は思いつかない…」と。「あれ? 時間かかるからいやなんちゃうん?」「そやねんけど、早めに出してって言ってみたら? 僕はよう言わんから、言ってもらえる?」…うむ。そういう注文を付けるのは私の役なんやな。直前に電話したんですが意外とすんなり予約が取れました。(もしかしたら、たまたまキャンセルが都合良く出たのかもしれないけど)「8時半からやったらいけますよ」ここは昔から大将が電話に出ます。店員に接客はさせられへん、というこだわりがあるようです。あまり時間がかからない方がいいと伝えると「2時間半はかかりますけど…」と。まぁ3時間超えよりはいいか。

そして久しぶりに北野のお店へ。長いエントランスを抜けてお店に入ると、「左手でお待ちください」との事。なんと、2部制になったようです。1部の客が帰るまで小部屋と廊下で待たされます。大体、お店が流行ってマスコミに取り上げられて、予約が取れないお店になるとこのパターンですよね…。勿論お店にはお店の都合があるから、少しでも多くの人に楽しんでもらう為には入れ替え制にするのは仕方ないんですけどね。

 

 

部屋はいっぱいだったので廊下に立ってると大将が「柴田さん、どうぞ」と自ら呼んでくれました。「久しぶりですねぇ」と、今日の大将はえらい饒舌です。(どっちかというと、こちらの大将はわが道を行く…という典型的なタイプの人でお客に愛想をするような感じではないので、饒舌に接客するようになったのはやっぱり大人になったのかな…(^_^)? 巷の評判では、美味い鮨を出す事が命だとしてぶっきらぼうな接客でも肯定的な批評家と、サービス業なんだから接客も含めてそのお店の良さであると言う批評家に分かれてしまいますね。その意味で、お店の雰囲気とか接客を重視する批評家には今ひとつ評判は良くないようです…。)

「店始めて12年、北野に来て7年やからね。早いねぇ」そんな話をしながら、まずはあてが何種類も出てきます。

 

 

「努力する天才」と呼ばれるように彼は常に研究しているようで、いい素材にさらに工夫を凝らした美味しいあてが数種類。「うん。美味しい」辛口評論家のMも満足げです。ところが大将はポツリと一言。

「僕もうこんなんやめよと思とんですわ。多分年内にはやめると思いますわ」

「え? なんで?」こんなに評判も良くなりミシュランの星までもらって予約の取れないお店になったのに…なんでこのスタイルやめちゃうの? 驚いて聞くと大将は「今みんなこんなんでしょ。あて何種類も出して、それから鮨。そうせなあかんのかなと思てやってきたけど、これって単なる流行りでしょ? いやになってきてね。だって鮨屋でしょ。もっと気軽に鮨だけぱっと食べれる店の方がええんちゃいますか? 鮨屋ですよ。鮨に専念せなあかんのちゃうかな。流行りで仕事してたらあかんて思うねん」…なるほど。流行すたりに踊らされる事なく、自分のやりたい仕事の信念を貫きたいって事ですね…。

 

 

あてが一通り終わると大将が精魂込めた握りに移ります。今回は急かしたせいか鮨を眺める場面は省かれ、比較的早く握ってくれました。大将は長い白木のカウンターの中央で握ってるんですが、握りは一人に1つずつ大将自ら運んでいます。一つ握っては端の人から運び、また戻って握っては次の人に提供する。私たちの左隣の人は3人組らしく、(恐らくJ助の評判を聞いて初めて来店された方々のようです。お行儀もいいし礼儀正しい人達で、普通に考えると凄くいいお客様に見えますが…)最初に握りを出された人がみんなに握りが出てくるまで待っていました。まぁ、これって日本人の普通の文化ですよね。皆さんの前に揃ってから一緒に食べ始めるっていうのは。ところが、大将がそのお客さんに

「出したら他の人の待たんとすぐ食べてよ。何のために僕がいちいち一人ずつ出してるか分かれへんからね…」

うむ…。こちらがちょっと大丈夫かな?と思うくらいズバッと言ってしまいます。彼のこだわりは「握り鮨はネタの状態を最高にキープするためにはシャリの温度も極めて重要で、一番美味しい状態で出しているのだから、他の人のが来るのを待っていると人肌のシャリが冷めてしまい、せっかくのベストコンディションが失われてしまうので、出されたらすぐに食べて欲しい」という意味なのです。勿論、それは素晴らしいこだわりなんですが、なかなか客にそんな事ズバスバ言う鮨屋はいませんよねぇ。どうもその後3人組の皆さんが緊張されている様子がこちらまで伝わってきます。

 

 

その後は流石にそのお客さん達に直接言わないのですが、私達に「僕は一つ握ってはこのシャリの窯の蓋を閉じて、一つだけの鮨を持っていって出して、また窯の蓋を開けて握って持っていく…ってやってるんやけど、あんな風に待たれたらなんのためにやってるかわからへんやんねぇ?」と愛想よく笑顔で同意を求めてきます。勿論同意はするけど、それより大将の声、全部そのお客さん達に聞こえてるよ…!! なんだかこちらも気が気ではありません。(彼は全然悪気ないようで、楽しく握っているんですけどね。)その話は私達の右隣のお客さんにも聞こえたのか、カウンターに座っている全員が「出されたらすぐに食べる」ルールをきちんと遵守するようになったようです。

「ははは…(^_^)…昔から大将はこんな感じだったね。変わってなくて良かったよ」と友人Mはこの状況にたいそう満足している様子。最高の状態で食べて欲しい、客に迎合したらあかん、て事に共鳴しているようです。(Mは日頃から口癖のように「お客に迎合したら絶対あかん。お客は店を選ぶ権利があるんだから、嫌だったら行かなかったらいいだけ。お店が愛想振りまいて誰でもいいので来て欲しいて言うようなところにろくなところはない」って言ってるので、大将の方針に合うみたいです。)

 

 

「ほんま久しぶりやねぇ」と大将が言うので、「(友人Mに)誕生日にどこ行きたい?て聞いたら、『J助』って言うから」と少しお世辞も込めて言うと、大将は「あ、そう? そら当然やね。他のとこ行く気せえへんやろねぇ」とあっけらからん。この切り返しに「ははは」と大笑いで「いいねぇ…わが道を行くって感じで。鮨屋はこうじゃなきゃね」とMもまたまた大満足。私も「確かにそうや! やっぱりプロはこうやないとあかんわ。客に迎合したらあかん。流行で仕事したらあかん。自分の信念を持って、自分が一番いいと思うものを提供するべきやね!」と感心しました。まぁ残念ながら全員がそれで満足する訳ないから、満足されない方は仕方がないので他のところに行っていただく。「これはいい」と思うお客様には妥協する事なく最高のものを提供する。これは見習わないと、と思いました。

勿論、賛否両論あるのは当然です。これがすべての人にとっていいと言う訳ではありませんが、所詮8席程度のこじんまりしたお店をやるんだったら、絶対にそうあるべきじゃないかな…って思います。(だって、気に入らなければ他にもお客は自由に他の選択ができる訳だし。)

 

 

かく言う私も今までは、不本意と思いながらも患者さんに合わせてしまう事がありました。「ここが気になる」と言われたら(本当は違うところを治した方が綺麗になるのにな…)と思っても、つい希望を聞いてしまったり。本当は「先生のセンスで一番キレイにして欲しい」と言われているのに患者様にメニューを選んでもらったり…。しかしそれではいけない、と思いました。本当に自分が良いと思う方法を勧めきれなければ、プロとは言えないと。勿論、お鮨屋さんとクリニックは違いますが、ある意味今度のクリニックはこの「カウンター鮨屋」をベースのコンセプトと考えています。なので新クリニックでは、「おまかせ治療」が中心になります。(勿論、ご予算は明確にお聞きしてその範囲でのおまかせです。後でお会計の時にびっくりする…というような一部の高級鮨屋のコンセプトまで真似するつもりはありませんのでご安心を…(^_^;)一人一人その方に一番合った治療をお勧めして、満足していただけなければプロとは言えないと思うのです。そのためには今まで以上に研究を重ねる所存ですので、皆様も是非一度新しいクリニックにお越しいただき、おまかせ治療を体験していただきたいと思います。これからも柴田美容皮膚科クリニック改め柴田エイジングケア・美容クリニックを宜しくお願い致します。